有限会社シード


 繊維製品の海外シフトが進む中、昇華転写技術によるフルオーダーのスポーツウエアやゲームウエアなどのオリジナル商品の製造販売を行い、最近では競馬の勝負服など特徴的な注文を得るなどして受注を伸長させている。また紙や木材、ステンレス等へのプリント技術を確立し、インテリア部門など新たな市場開拓に向け商品開発を行う有限会社シードの中嶋社長にお話を伺った。

代表取締役
中嶋 誠


■ 昇華転写技術とは
有限会社シード  昇華転写は、デザインされた絵柄を特殊インクで特殊なペーパーシートにプリントアウトし、それと生地等の転写物を合わせて熱と圧力で絵柄を生地に転写する技術である。この技術の特長は、繊維や組織の中まで染色するので色落ちや色あせせず、深みのある染色が可能となるなど、一般のアイロンによるプリント印刷では得られない高品質のプリントが可能なことにある。技術は以前からあるものだが、発色や生地の伸縮、設備費など様々な課題があり、国内ではあまり行われていないのが現状である。

■ 自社独自の技術確立まで
有限会社シード  このプリント技術で最も苦労したのは、素材と色とのマッチングが非常に難しいことと、素材により伸縮性の違いがあり、プリント段階で不良が発生することであった。何度も試行錯誤を繰り返しながらようやくノウハウを確立した。この研究に当たっては、県の経営改革総合支援事業(フェニックスプラン)の採択を受け、研究助成を受けることができたのが大きかった。自己資金だけではここまで技術を高めることが出来なかったかもしれない。
有限会社シード また、最新のコンピュータ機器を導入し、デザイン面でも顧客の様々な要求に対応できる体制を確立することができた。

■ 地域連携による独自のクイックレスポンス体制
 当社の生産体制は、デザインと昇華転写を自社で行い、営業や縫製は北秋田市内にある縫製企業の「(株)ジーエムジャパン」が行う。また、昇華転写の一部の加工を旧合川町の知的障害者授産施設「厚生園」で行うなど、1社だけでは人員や場所、コスト面で困難なところを地域の連携でカバーし、通常では受注から2〜3ヶ月かかるものを、2週間から1ヶ月で納品できる体制を確立している。技術ノウハウもあるが、「地域との連携も当社の特長である。製造やデザインのノウハウを持つ工場が近くにあることで、デザインや色など微妙な調整が容易に出来る。それが顧客の要求する高品質の商品を短納期で提供できる体制となっている。」と中嶋社長は言う。
  (株)ジーエム ジャパン 社屋

(株)ジーエム ジャパン内 縫製作業   

  厚生園の作業


■ 新たな商品展開について
有限会社シード  現在は、年々カラフルになるゲームウエアの受注が好調で、納品した商品への反応も良く顧客も増えてきている。また、これまでの研究開発の結果、障子紙や壁紙、木材などへの転写技術もすでに完成している。中嶋社長は「当社の強みはプリント技術に加え、1着(個)から対応できる多品種少量生産体制と短納期に対応できるシステムにある。この強みを活かし、様々な顧客の要望に対応できるよう体制強化を図っていきたい。また、インテリア部門など新分野の開拓に向けて、高付加価値の新たな商品開発やマーケティングも積極的に展開していきたい。」と新たな目標に向けた意気込みを語ってくれた。
 国内の繊維業界は、中国などアジア各国への生産シフトが進み、転廃業も増加している。賃金格差が大きく量産品への対応では生き残ることができないのが現実である。このような状況に高付加価値製品の開発や独自の多品種小ロット生産スタイルで積極的に攻めの姿勢でチャレンジする当社の新たな展開に期待したい。


CORPORATION DATA
有限会社シード
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代表取締役 中嶋 誠
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