生コンの流通は、現在、建設業者の注文を受けて生コン業者から納入され、もしその生コンが余った場合は生コン業者が引き取り、砂・砕石・砂利など再利用可能な材料を取り除き、水・セメントなどはスラッジともに産業廃棄物として処分されている。しかも、この産業廃棄物の処分にかかる経費に生コン業者は悲鳴をあげている。ところがもし、産業廃棄物として処分されるコンクリートから砂や砂利だけでなく、うまくセメントも回収することができれば、骨材の再利用あるいはセメントの再生使用が可能となり、業界各社の経費節減につながる。何よりもこの地球からゴミを減らすことができる。
このような思いを抱いていた秋田高専環境都市工学科の桜田良治助教授と大森建設株式会社環境営業部の石井昭浩課長は、秋田高専産学協力会という会合で出会い、同じ思いを語り合い、県の補助金を活用しながら廃棄生コンの再生利用技術について共同研究することなり、見事に「石灰処理方式」によるセメント粉末回収技術を開発した。
当初、桜田助教授は、凍結乾燥法や急速炉乾燥法によるセメント回収を目指したが、いずれも乾燥時間が数時間から1日程度かかり、また凍結乾燥機などの特殊な乾燥機械を必要とした。そこで乾燥機を一切使わないで、かつ短時間で粉末回収できる石灰処理法に着目したとのことである。同じ条件での石灰処理による乾燥時間は、およそ15分程度と驚くべき早さである。また、当初の粗い生石灰では、水和反応時の膨張によりひび割れを起こすため、十分な強度が出ないという問題も発生したが、粒子をさらに細かくすることで解決できたとのことである。
今のところ、この研究の成果は「使用済セメント配合材料」、いわゆる商品化に向けた「素材」が完成したに過ぎない。しかしながら、今後は大森建設が主体となって、ユーザーがこの素材をどのように使うのかなどについて綿密な市場調査を行い、この素材に新たな材料を加味したり、不要な材料を除いた製品を「地盤改良材」等の商品として販売していく「次なるステージ」へ邁進しようとしている。
「何よりも生コン業界が喜んでくれるだろう。ゴミが減ったほかに、有価材に生まれ変わるのだから。」と話す石井課長の目は、商品開発の青写真と生コン業界全体を見つめていた。
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