年間5,000万tものごみが排出されている今日、ごみ処理対策は大きな社会問題となっている。そんな中、秋田市にある株式会社北勢工業は、家庭や事業所などから排出される生ごみの再資源化事業に取り組んでいる。
もともと同社は給排水・冷暖房設備の設計・施工、下水道施設等の維持・管理などを中心に業務展開し実績を上げてきたが、近年の公共事業の削減などから新たな分野への進出を模索していた。そのとき出会ったのが生ごみを堆肥化させる『KANシステム』だった。
このシステムは、内城菌と呼ばれる複数の好気性・耐熱性の微生物を利用した生ごみ処理・肥料製造機で、水産加工廃棄物や食品加工廃棄物などの食品残さに内城菌を投入し、この菌が持つ耐熱性を生かし高温で発酵・乾燥させ生ごみを堆肥化させる。製品は、高温乾燥処理されているため水分率が15%以下と低く粗粉状となっているため、長期保存が可能であるとともに悪臭を発生することもない。さらに製品に含まれている内城菌が、土中の有益なバクテリア等に作用し、農産物の生育促進や品質向上に大きな効果を発揮する。中でも最大の特徴は、“自然から生まれたものを自然に帰す”という循環が確立されていること。 「本業以外は全くの素人。失敗もしたが農業県秋田の将来を考えたとき、大きなビジネスチャンスであると同時に、食の安全・農業の持続的発展・環境負荷を考えると、有機資源リサイクルによる資源循環を構築することが重要。」そのためには、「ひとりひとりの意識改革から」という太田代表。ごみ問題に無関心な消費者が多い中、太田社長の想いはまず社員の意識を変化させ、今ではバイオ事業部を設置し同システムの販売とともに、内城菌利用の研究を行うまでに至った。平成15年には、平鹿郡山内村に同システムを納入し有機性資源の循環利用に貢献している。
「地域から出た生ごみを地域で再資源化し、地域全体で利用する、生ごみの地産地消を目指したい」という同社は“技は商いなり”(社是)を胸に、大量生産・大量消費・大量廃棄型の社会から将来の循環型社会形成に向け日々まい進している。
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