株式会社稲庭うどん小川


 湯沢市稲庭町は秋田県が全国に誇るブランド「稲庭うどん」の産地である。その産地で稲庭うどんの伝統と品質を守りつつ「麺がゆ」や「半生うどん」などの新商品開発やオリジナルレシピの提供、また海外への販売にも取り組むなど、伝統の味をより多くの人に味わってもらおうとチャレンジする(株)稲庭うどん小川の代表取締役小川信夫氏にお話を伺った。


本物へのこだわりと新商品開発で、伝統の味稲庭うどんに果敢に挑む 代表取締役 小川 信夫 小川博和専務と小川選子常務

代表取締役
小川 信夫

小川社長のチャレンジ精神を継承する 小川博和専務と小川選子常務


■ 伝統の味へのこだわり
当社の創業は1982年で、稲庭うどんのメーカーとしては後発である。より高品質な商品作りを常に念頭におき、地元名産品への挑戦が始まった。試行錯誤の末、ようやく納得できる商品に辿り着き、その時の喜びと苦労した思いが味へのこだわりの原点である。
 小川社長は、「小麦一粒は40種類以上の性質を持つ違う小麦粉になり、どの種類をどうブレンドするかがうどんの出来を左右する。当社では小麦粉のブレンド割合を決め直接製粉業者に委託している。同じように塩、水、製法、全てが一体となってはじめて美味しい稲庭うどんになる。本物を作るためには、そのひとつひとつにこだわり、決して妥協しないことが重要だ。」という。

■ 特定JAS取得は消費者への安全・安心提供の第一歩
株式会社稲庭うどん小川 特定JASは、日本農林規格のうち、特別な生産・製造方法について原料や製造方法を消費者や需要者に適正に判断できるように統一的な基準を定めたもので、作り方のJASとも呼ばれている。「手延べ干しめん」は平成16年に特定JASが導入され、当社が全国取得第1号となった。
 小川社長は、規格ができることを知り、取得すれば原材料や手作業、生地の熟成といった乾麺のこだわりの製造工程や手法、ISO的管理基準を持つ工場として、消費者に品質や衛生管理の徹底したメーカーであることを示すことができると着々と準備を進めていた。近年、BSEや食品の不正表示など食の安全に対する不信が叫ばれる中、作る側が何を使用しどのように作っているかなど、消費者に顔の見える安全と安心を提供できる食品メーカーとして大きな一歩を踏み出したのである。
株式会社稲庭うどん小川 また、規格導入がもたらした効果として、従業員のものを作ることへの自覚と責任感がこれまでにも増して強くなり、製造現場の活性化につながったことも大きな収穫だという。まもなく新たに量販店への販売も始まるといい、特定JAS取得が当社に良い緊張感と活力を与えている。

■ 顧客重視の視点で新商品開発
 当社の取引は商社が中心で、ものづくりに対する考え方で当社に良い刺激を与えてくれた。商社マンは消費者ニーズや市場動向に敏感で、貴重な情報は顧客重視の視点を強め、社長自らのチャレンジ精神と相まって新商品開発への気持ちが醸成されていった。そして現代の消費者が求める手軽さを追求しようと次のような新たな商品開発が始まった。

株式会社稲庭うどん小川 株式会社稲庭うどん小川
株式会社稲庭うどん小川 株式会社稲庭うどん小川
■ 「麺がゆ」と「半生うどん」
 「麺がゆ」は、稲庭うどんを細かく砕いたものをお粥のように食べる、地元では卯の花麺と呼ばれ古くから親しまれているものをフリーズドライ製法の即席麺タイプとして開発したもので、約3年前に商品化、改良を重ねて現在のカップタイプができあがった。
 お湯を入れるだけで、お粥のような感覚で稲庭うどんののど越しを楽しめる新たな商品として需要が徐々に広がっている。低カロリーで化学調味料不使用という点に着目され、来年1月からはダイエット関連の会社との取引が始まるなど新たな展望も見えてきた。
株式会社稲庭うどん小川 「半生うどん」は、乾麺からゆでるわずらわしさを軽減し、手軽に稲庭うどんを楽しんでもらおうと開発したものである。半生うどんは、一般的には乾燥時に水分を残す作り方で、この方法では保存期間が短くなってしまうという。当社の半生の特徴は一度完全に乾燥させてから長時間加湿して生に戻す(完全戻し麺)製法で、稲庭うどん独特ののど越しとコシの強さを残し、しかも徹底した衛生管理で添加物なしで3ヶ月保存が可能な製品を作り上げた。

■ 情報発信も意欲的に
 当社は稲庭うどんの製造から食べ方までを分かり易く紹介するため、ホームページによる情報発信にも力を入れているが、先ごろ読売新聞が主催する読売「“東北ならでは”ホームページ大賞2005」の読者賞を受賞した。この賞は、同新聞社が東北6県から発信される企業・団体のホームページからお気に入りを得票してもらい、その結果を基に賞を決めるもので、当社はもっとも得票数の多かったページに贈られる「読者賞」を受賞した。
 また、これまでもアメリカやアジアに輸出はしているが、当社のうどん製法をDVDで製作、海外で紹介したところ現地のレストランから引き合いが増加しているという。今後は海外との取引も積極的に進めて行きたいという。

■ 伝統の味を守るために
株式会社稲庭うどん小川 伝統産業を後世に伝えるためには、会社として成長・発展が重要である。成長により地域の若い世代の従業員も雇用できるし、それが伝統の技の継承につながり、地域にも活力が生まれる。そのためには新商品開発や新たな需要開拓が当然必要だと考えている。
 当社は平成7年から毎年地元から採用を継続している。若い人材、やる気のある人材を登用することが、職場の活性化や技術力、意欲向上にもつながると若手を工場長に抜擢するなど、将来を見据えて人事にも積極的に取り組んでおり、ここから新しいアイデアや商品が出てくることに期待しているという。

■ 常に探求心を持ちチャレンジ
 取材には、後継者である専務の小川博和氏と常務の小川選子さんも同席していただいたが経営陣が常に研究心を持ち前向きな姿勢で経営に臨んでいることを感じ取ることができた。
 現在も新たな商品開発を進めており、小川社長は、1年以内に新商品を出したいと意欲満々である。手軽さを求める消費者ニーズを考えた新商品は、今までとは違う新たな需要の掘り起こしになると力を込めて語ってくれた。社長のあくなき探究心とアイデア、家族の和、意欲旺盛な従業員に恵まれた同社の明日に期待したい。

CORPORATION DATA
株式会社稲庭うどん小川
代表取締役 小川 信夫
〒012-0107
湯沢市稲庭町字大森沢144
TEL:0183-43-2803
FAX:0183-43-2857
http://www.ogawaudon.com/
株式会社稲庭うどん小川