省エネルギー指導の事例紹介

経済活動によるエネルギー消費と環境問題は、新エネルギーが開発されない限り表裏一体の関係にあります。
地球環境保全、特に温暖化防止については、地球温暖化ガス削減目標6%の義務づけ等を背景に、「エネルギー使用合理化に関する法律(略称・省エネ法)」が一部改正され、本年4月1日より施行されました。
この特集では、この「省エネ法」に基づき当中小企業情報センターの実施している「エネルギー使用合理化設備導入促進事業」 により、専門員の指導を受け省エネ効果をあげた企業の事例を紹介します。

■事例1 株式会社 アップル
■事例2 三共光学工業(株)秋田事業所
■事例3 アキタ・セキエレクトロニクス(株)


 当社はあらゆる種類のカラー印刷(主としてポスター・パンフレットなど)と製本を行なっている。その業態は、コンピュータを利用した画像処理や編集、これに対応した最新鋭の印刷機器類による印刷で、製品品質の高度化と省力化を図っている。従業員33名、年間売上3.4億円。

■省エネルギー指導を受けた経緯
 このようにコンピュータを多用する業態であることから、電力の安定供給と安全対策は当社にとって絶対条件である。またそれは同時に、損失電力の低減が直接収益にはねかえる性格が強いことをも意味する。
 しかし、当情報センターの省エネ指導員が訪問して検討すると、好条件に見える同社の電力需給条件がおおいに再検討の余地があると判明。専門員の指導を受けることになったものである。

■専門員の指導内容
 これを受け、平成9年3月7日に中小企業事業団より専門員の若林敏郎氏が派遣された。 専門員は工場の業務形態、作業工程、電力契約状況、電力消費の傾向などを具体的に、出来るだけ計量的に調べ、問題点を説明した後、次の点にポイントを絞り、指導計画を練った。
1. 電力契約方式の変更
2. 電気料金の仕組み教育
3. その他全般的省エネ方法

■具体的指導内容
1. 電力契約方式の変更
 現在は業務用電力契約で、契約電力90KW、力率100%固定であり、高圧電力A契約とすべきである。これについては、電力会社に対し当情報センターを通じ協議を行ない高圧電力A契約とした。
 現状は、実負荷が小さいため業務用電力契約の範囲内に収まっているが、他の条件が加わると極端に電力効率が低下することが予想される。

2.電気料金の仕組み教育
 現状で何も問題が発生していないことイコール省エネが進んでいることではない。電力契約の仕組みを知ることは、電力料の低減方法・省エネ方法を学ぶことでもある。

3. その他全般的省エネ方法
 同社従業員は他社に比べて省エネ意識は 高い方だが、こまめな消灯や必要照度確保、夜間・休日の電力消費の管理、空調の適性温度管理の徹底、センサーやタイマーの利用、スイッチ位置調整、照明器具への工夫など細かい点まで指導をフォローアップ指導の中井嘉一郎専門員の派遣を通し実施した。

■指導の効果
 業務用電力契約から高圧電力A契約に変更したことで、力率割引解消を考慮しても年間111万円の節減効果が得られた。更に全体の26%を占める照明電力消費が対策により20%程度削減することが可能となった。
 また、デマンド契約となったことから、デマンドメーター〔※注参照〕の設置を含め「極力使用電力増加を抑える努力を継続することが大切である。」と中井専門員は強調する。

注:デマンドメーターとは、目標電力に対し予測監視制御機能をもたせた電力監視制御装置

株式会社アップル
社 長:石木田一彦
本 社:鹿角市八幡平字高見田50
出資金:5,880万円
従業員:33名


 カメラ・OA機器・医療機器・通信機器・半導体製造装置など、日本のハイテク機器の“目”となる超精密レンズを製造する三共光学工業(株)秋田事業所(本社東京都)は、昭和42年に県の誘致企業として仙北郡仙南村に進出。現在では仙北工場(仙北町)、太田工場(太田町)を有し、従業員はグループ全体で226名、年間出荷額約40億円を誇っている。

■省エネルギー指導を受けた経緯
 同社は、昭和48年に建設された仙北工場が老朽化したため、この工場内のレンズ製造設備を新設した太田工場に全面移転することにした。
 工場移転と言っても単純に設備を移設すればいいというものでもない。同社の製品は超々精密を要求される製品ばかり。そのため、工場内の温度は常に21℃から23℃に保つ必要がある。「レンズは生き物。温度によって品質も左右される」(竹田常務)と言う。
 太田工場は旧光学素材メーカーの工場を買収したもので、工場の面積は3,702平方メート境としては良くなるが、電力などのエネルギー消費量も相当跳ね上がることになる。
 仙北工場では最大電力需要は399KWだったが、単純に2.3倍になったらたまらない。
 そこで、なんとか500KW以内に抑え、熱管理も含め省エネ化を図りたいということから秋田県中小企業情報センターの指導員を通じ、中小企業事業団のエネルギー使用合理化専門員制度を活用することにしたものである。

■専門員の指導内容
 平成11年2月19日に中小企業事業団より専門員の秋庭賢氏が派遣された。専門員は工場を入念に調べ、以下の点にポイントを置いて指導計画を練った。
1. 冷暖房方式について
2. 照明について
3. 受変電設備について
4. 転用できる機器と不要機器の区分けと撤去
 また、仙北工場の稼動停止稼動停止期間を最小限にするため、平成10年8月のお盆まで約1週間で移転を完了するという計画を立てた。

■具体的指導内容
1.冷暖房方式について
 夏の冷房は夜間電力で氷をつくり、その蓄熱エネルギーで工場の冷房を行なう“氷蓄熱熱空調機”の導入。
 冬の暖房は重油ボイラーによる温水床暖房を採用。

2.照明について
 専門員が工場内の照度を調べた結果、明る過ぎることが判明したので、蛍光灯は1本おきとして、合計130本を取り外した。

3.受変電設備について
 工場は最大需要電力が契約電力を超えると、超過料金を請求されることに加え、その月を含め向こう1年間その最高需要電力での契約(デマンド契約)になる。そのための損失は大きく、消費電力の平準化に努めなければならない。この対策として、デマンドメーター、低圧コンデンサーの設置、及び各ラインに電力メーターを取付け、電力の消費状況に認識をもってもらう方策をとった。

4.転用できる機器と不要機器の区分けと撤去
 不要な設備は極力持たず、また古い配線を完全に撤去することで電力消費要因を排除した。

■指導の効果
 これらの専門員による指導の結果、太田工場では、冷房用氷蓄熱空調機を8セット導入。その費用は3,500万円で、同程度のエアコンに比べ約700万円高いが、安い夜間電力の利用により3年で回収できる見込み。また、暖房についてもボイラーを新規に購入したが、灯油より安価な重油であり、長いスパンでは十分メリットがある。
 今年1月26日に秋庭専門員はフォローアップのため太田工場を訪問し、省エネ効果の測定を行なった。その結果、氷蓄熱空調機の採用により、電気料金は年間約50万円の低減、ボイラー燃料の灯油から重油への転換で燃料費は年間約14万円の節約となった。
 照明の削減についても、作業的な影響は出ておらず、省エネに対する認識喚起にも役立っている。
 太田工場全体の電力消費についても、「太田工場には新たにレンズコート装置、自動洗浄装置を導入したので、電力使用料も増えるのではないかと心配したが、500キロワット以下なので、指導による省エネ効果が出ている。」(竹田常務)と喜んでいる。

三共光学工業株式会社
社 長:萩原 達俊
本 社:東京都荒川区東尾久5−20−30
資本金:1,500万円
従業員:226名(グループ全体)


 プリクラ・コンパクトラボ(写真フィルム自動現像焼付け機)・CCDカメラ・OA機器・医療機器・計測機器などマイクロプロセッサー応用技術を生かした各種システム装置や省力化機械のプリント基板組立・完成品を製造するセキエレクトロニクス(株)(本社東京都)の現地法人、アキタ・セキエレクトロニクス(株)(仙北郡角館町)は昭和58年8月に設立された。
 現在、資本金は1,000万円、従業員は170名、年間出荷額10億円に達している。

■省エネルギー指導を受けた経緯
 同社は、事業拡大に伴い本社工場が手狭になったため、平成9年7月角館町内に第二工場(西工場)を建設し、主要生産設備をそちらに移設することにした。それを期に情報センター省エネ指導員の勧めにより、本社工場(岩瀬工場)の電力消費に係わる省エネ化を図ることにしたものであった。

■専門員の指導内容
 平成9年12月19日に中小企業事業団より専門員の若林敏郎氏が派遣された。
 専門員は工場の状況、製品構成、製造工程、電力契約状況、電力消費の傾向などを入念に調べ、次の点にポイントを絞り、指導計画を練った。
1. 力率の改善
2. デマンドメーターの導入
3. 本社工場の電力契約更新
4.作業場の集約と不要な照明・冷暖房の停止

■具体的指導内容
1.力率の改善
 当初、力率〔※注参照〕改善のためコンデンサーを増設する予定であったが、主要設備を第二工場に移設したことで、本社工場の負荷が減少したため、電気料金計算上の力率が10年の各月とも100%になり、コンデンサー増設の必要性が無くなった。

注:力率とは、送電(交流)されてくる電力うち何%が有効電力として働いているかを示す数字で、百分率で表す。力率100%に近い方が望ましい。

2.デマンドメーターの導入
 当社の場合、夏場の3ヵ月間の冷房が電力需要を突出させている。しかもわずか30分間契約電力を超えたことで、それ以降1年間の基本料金が高くなる。更にこの時期の電力料金単価が高く設定されており、消費電力管理の必要性は高い。
 そのためにデマンドメーター〔※前出注〕の設置を検討したが、本社工場の設備内容が大幅に減少、今後設備増強に伴い更に大きく変わる可能性が高いことから、ある程度確定した段階で最適な機種の選定を行なうこととした。

3. 本社工場の電力契約更新
 本社工場設備の移設に伴い消費電力が下がったことから、10年2月にそれまでの314KW契約を181KW契約に更新した。

4.作業場の集約と不要な照明・冷暖房の停止
 空き作業場は存在しないが、工場全般を平均に明るくするのでなく、適切な場所を適切な明るさになるよう、照度計で細かく検査した。また不要な照明の消灯を励行したのはいうまでもない。
 また空調についても、適性配置による工場内温度のバラツキ排除、内・外気温の関係と運転のルール化を指導した。

■指導の効果
 平成11年1月に省エネ指導のフォローアップのため秋庭専門員が中小企業事業団より派遣された。その結果、定量的につかめるものでは本社工場の契約電力更新により電気の基本料金が年間82万円の節約になった。
 設備的には大きな変動はないものの、電気エネルギー管理係数を用いた総合的な電力消費の管理手法を習得し、社員にも日常的に自分達でできる簡単な気遣いが省エネ活動につながるという意識を持たせる結果となったことは大きい。今後も省エネ用設備の導入も視野に入れ、継続的に努力してゆく考えである。(羽崎工場長)

セキエレクトロニクス株式会社
社 長:赤 宏昭
本 社:東京都八王子市子安町4-27-6
資本金:15,527万円
従業員:247 名(グループ)

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