郊外型大型店などの進出や先行き不透明な不況により、商店街を取り巻く環境は一段と厳しい局面を迎えている。また、空き店舗の増加をはじめとする商業機能の活力低下などにより、商店街の空洞化が深刻化している。
そこで今回の特集では、このような厳しい環境下にあって、「平成11年度中小商業活性化事業助成金」を活用し、地域住民の生活に密着したイベントを開催しながら、生き残り策を模索している県内各地の商店街の取り組みを紹介する。
みんなで踊るべ、ドンパンパン!
中仙町は大曲市と角館町に挟まれた立地条件と交通体系の整備により地元購買率が最寄品、買回品とも極めて低く消費者の流出傾向が著しい現況にある。加えて、今年11月上旬にジャスコ中仙店がオープンする予定で、各商店に与えるダメージは大きく、売上減少のみならず廃業等も迫られ、一層厳しさが増すものと予想される。
このような状況のもと、中仙町の夏の恒例行事「ドンパン祭り」を1日で終わるのはもったいないという町民の強い要望や意見を反映し、中仙町商工会(仙北郡中仙町長野字柳田18 TEL0187-56-2021)主催により、ドンパン祭り本番の前日、8月15日(日)に初めて前夜祭を実施した。中心部・長野地区の商店街の路上が踊りの舞台。「東長野ささら」で幕開けし、劇団わらび座の太鼓演奏や津軽三味線演奏等が披露された。また「ドンドンパンパン、ドンパンパン」というおなじみのメロディに乗って、各町内婦人会の他、一般の観客も踊りに加わり練り歩くと、祭りはいよいよ最高潮を迎えた。

またこのドンパン祭り前夜祭に合わせ、八乙女商店会では8月5日(木)から8月15日(日)にかけて「お買い物スタンプラリー」を実施した。1店舗100円以上、6店舗以上のお買物で1回抽選ができるもので、目玉は赤玉賞の10,000円。この抽選会も前夜祭の会場で行われ、趣向を凝らした夏の夜祭りを消費者は大いに満喫していた。
参加した消費者からは「スタンプラリーは子供たちが大変喜んでおり、時々実施して欲しい」「角館や大曲まで買い物に行かなくても地元商店にもなかなか良い商品があり見直した」といった声が聞かれ、商店会員からも「売上は予想よりあった。イベント実施に自信ができた」という反応が多く、評判は上々。
企画した商工会事務局長の伊藤さんは「結果的には充実した成果を上げることができた。来年以降も大型店との差別化戦略として、また商店会の法人化へのステップとして前夜祭やスタンプラリーを継続していきたい」と力強く語っている。

「全国ハイヤサミット」開催
大正寺商店会は雄和町で唯一の商業集積地域だが、秋田市及び御所野地区の大型ショッピングセンターと隣接しているため、購買流出も加速している状況にある。そのため、地元商店街に地元住民の関心を呼び戻し、地元商店街の存在価値をなにかしらの形で再認識してもらうことが地元商店再建の第一歩である。

同商店会では、今年で第15回を数える大正寺おけさまつりに併せて、全国ハイヤサミットin秋田を8月21日(土)、22日(日)の2日間にわたり開催した。ハイヤサミットは、雄和町の大正寺おけさを復活、継承している大正寺おけさまつり実行委員会が提案したのを契機に平成8年に始まった。新潟県赤泊村で第1回大会が開かれ、今回が5回目の大会。ハイヤ節系の民謡は、江戸時代に北前船や行商人によって全国に伝わったとされ、「おけさ」「ハイヤ」「アイヤ」などの名称で全国約40カ所に伝わる。

8月21日午後2時30分より始まった「全国ハイヤ民謡お国自慢」では、南は長崎県平戸市から、北は青森県鰺ヶ沢町まで計10市町村から11団体(計260人)が参加して唄と踊りを披露した。午後5時からは、新波商店街において「大正寺おけさ総踊り」が行われ、参加団体、地区住民ら総勢700人が踊りに加わり、サミットを盛り上げた。午後6時30分からはJA新あきた大正寺支店駐車場を会場に「雄物川流域文化の祭典」が開催され、南外村の「釜坂おけさ」が初披露されたほか、秋田市の土崎港ばやし、羽後町の西馬内盆踊り、湯沢市の七夕絵灯ろうなど流域13の市町村からも参加した。当日最後に行われた花火大会では、参加した各県の特産品などをイメージした創造花火が打ち上げられ、大きな拍手とともに、遠来のお客様の感動を誘った。

また夏のビックセールと称して、8月15日(日)大抽選会が開催され、8月7日(土)から13日(金)まで商店会で1,000円お買い上げのお客様に補助券1枚を進呈し、補助券5枚にて1回抽選を行うというもの。この抽選会の目玉は、大正寺おけさまつりを一番良い場所から観覧できる桟敷席券18枚。おみやげやドリンクもついており、当選した人から大変好評を得た。
「本事業を遂行することにより、会員相互間のコミユニケーションが図られ連帯感も生まれ、自ら行動を起こそうとしなかった商店街に活性化の動きが見られたことは大きな成果。近隣市町村からの流入も出始めている」と話す。商店会は、活性化を目指すためのソフト事業の重要性を再認識し、加えて会員の結束も高揚したといえる。
環境問題対策がコンセプト
男鹿市の基幹産業は観光であり、、平成10年度の観光客数は前年度比105%と増加した。一方小売商業をみると、販売額は前年比若干の増加をみてはいるが、売場面積では逆に32%の減少になっている。また、国道沿いに郊外型大型店の出店があいつぎ、地元船川地区の商店街への求心力が急速に落ちている。

男鹿市船川港商業振興組合(男鹿市船川港船川字泉台66-3 TEL0185-24-4141)ではこのような状況下、商店街全体として環境問題対策を一つのコンセプトとしてとらえ、「おがエコロジーキャンペーン事業」を実施している。国定公園という観光資源とエコロジーの対比を商店街の活性化に結び付けることは、環境問題がクローズアップされてきた昨今においてタイムリーな展開である。

この事業の一環として作成を進めていた「エコバック」の試作品が完成、8月1日(日)に行われた「男鹿SUNSUNまつり」の会場で千枚を無料配布した。今年で14回目を迎えたSUNSUNまつりは、男鹿市の夏を彩る地元住民参加型の祭りとして、広く市民に浸透している。エコバックの作成は、スーパーなどで配られる買い物用ポリ袋の使用を減らすことで、ごみの減量化を図り、環境保護に結び付けようという狙い。完成した試作品は、繰り返し使用できるようにと綿でできており、大きさも縦約40センチ、横約35センチと大きめ。片面には、入道崎でなまはげがパラグライダーを楽しむロゴマークを描き、男鹿らしさを表現している。当日はエコバックの試作品と一緒に、同市内の商店を対象にポイントカードを実施している「夢プラスカード」の千円分のポイント引換券を配布した。加盟店にエコバックと引換券を持参し買い物をすれば、ポイント10点がプレゼントされる。消費者モニター(10人)の意見や要望などを取り入れ改良を加えて、10月中にもさらに7千枚を作製する予定。同組合を組織する船川港元浜町、栄町両商店街の各店舗で、顧客に配布することにしている。また、ロゴマーク入れワッペンを作成し、商店者の連帯感を一層強力にしていく考え。

今後は、11月下旬に「おがスペシャル品フェア」を実施する。これは、既存商品の見直しによる逸品の発掘や新しく開発されたすぐれた商品を商店街一丸となって売り込むことにより、商店街及び個店レベルの向上を図るもの。商工会では「このフェアが継続して消費者の支援のもと新しい商品やサービスがつくられ発展すれば商店街の活性化の原動力となり得る」としている。
共同店舗で消費者のオアシスを提供
六郷町商業協同組合(仙北郡六郷町六郷字安楽寺298-1 TEL0187-84-0204)は低迷が続く同町の小売商業活性化のために、共同店舗を建設するため平成9年度に中小商業活性化事業を活用し、国の高度化事業に精通しているコンサルタントや設計士の指導を受けながら、小売商業店舗等共同化事業実施計画書を作成した。「秋田県では共同店舗の成功事例が少なく、規模・商圏等の違いもあり、自分たちの理想とする成功事例研修先の選定に苦慮した」というが、その後も継続的に打ち合わせを重ねるにつれ、共同店舗に対する一心同体の連帯意識の向上が図られ、メンバーにも活性化に貢献できる自信がみなぎってきた。

11月のオープンに向け建設が進められている安楽寺地区は、国道13号線(横手〜大曲)の大曲の手前、県道六郷・角館線に位置し、集客効率は非常に良い地域。出店する組合員数は6名(他テナント1名)で、地元のスーパーを核テナントに、食料品、薬、衣料品、酒、ビデオ、菓子、クリーニング、生花を販売する。消費者の町外流出を止め、“ワンストップ・ショップ”による安心とゆとりある買い物、消費者のオアシスを提供していく方針。SCの名称も「アックス(無から有を生ずる開拓精神を持って進んでいく)」と決定し、現在ロゴマークの作成を検討中。
今月下旬からは、チラシ、宣伝カー、TVスポット等を活用したオープン告知キャンペーンを実施する。また、オープンに際しては大曲太鼓、キャラクターショー等集客率を高めるための印象的でインパクトのあるイベントを実施する予定だ。経営理念は、「郊外地域生活の利便を満たす機能に徹しながらワンランク上の商材、新しい生活情報を提供するSC」。湯川理事長は「接客と食材に徹底的にこだわり、他店との差別化を図って行きたい」と語っている。
「エンジョイカード」が9月25日にスタート
比内町ジョイスタンプ協同組合(北秋田郡比内町扇田字町尻9-9 TEL0186-55-0406)は、平成7年10月、協同組合扇田大通り会のスタンプ事業部より独立以来、52店の組合員によりスタンプ発行事業を行ってきたが、弘前市や大館市への消費者流出率が増加し、取り巻く環境は一段と厳しくなってきている。
そこで昨年8月より、カード事業化に向け、調査研究を行ってきた。今年度は、9月25日(土)の「エンジョイカード」オープンに向けて、2回の会員獲得セールを実施している。第1回目は7月31日(土)に行われた「比内夕市」の会場内で実施した。比内夕市は今回で21回目を数える地域住民にとっては欠くことのできない年中行事として定着しているお祭りで、会場内に設置されたステージ上では、ハワイアンバンド演奏やエアロビクス、秋田下代野漫才などが次々と繰り広げられた。また輪投げ、あたり菓子、金魚すくいといった子供遊技コーナーの他、空き缶積み大会やラムネ早飲み大会も行われ、子供たちの歓声が鳴り響いた。

当日は親子を中心に約2,000人の人出で賑わい、新規に300人の会員申し込みがあった。また第2回目は、8月27日(金)に開催した「エンジョイ夕市」に併せて行った。女流漫談家のショーや子供民謡ショーが行われ、婦人層を中心に、こちらも約2,000人の人出で賑わい、500人から会員申し込みがあった。両日とも、会員申し込みをされた方には、会場内で使用できる「200円お買い物券」を差し上げた他、10,000円お買い上げ相当分(100ポイント)をサービスしたのが、好評だったようだ。

9月24日(金)に予定されているオープニングの前夜祭では、「ものまね・漫才ショー」を開催し、新規会員の方々を無料で招待することにしている。現在、事業所等をまわって会員獲得に努めているが、「オープンまでには5,000人の会員を確保したい」という。「今後も消費者にPR・サービス・イベント等を恒常的に行い、商業者の活性化に対する意識改革を図り、ハード面を考慮に入れた事業展開を図っていきたい」と事務局では話している。「エンジョイカード」はいよいよ9月25日(土)に走り出す。
広域カード化事業にチャレンジ
横手市は、近年大型店の進出が盛んで、大型店店舗面積は、ついに横手市商業(小売店)全体の73%を上回るに至った。

全国的にみて、大型店店舗面積占有率は60%が分岐点と見られているが、横手市の場合はそれを大きく上回っている。小規模小売店にとっては危機的事態であり、生き残りをかけて市内の小売店が協力、結束を計る対策として、横手かまくらスタンプ会(横手市四日町4-23TEL0182-32-0514)が原動力となり、広域カード化事業の取り組みを行うに至った。
同スタンプ会は平成5年より、スタンプ発行事業を実施してきたが、発行高の伸び悩み、スタンプ発行の不徹底、イベントの魅力が薄れ、マンネリ化している状況にあった。このような背景のもと、平成10年5月から「横手カード化推進事業委員会」をつくり、ポイントカード化と導入方法の研究を開始。平成11年2月にード導入調査・報告書がまとまった。
カードは横手市独自の方法であり、全国でも初めてといわれるオンライン・ロイコ型・リライト方式を採用。ロイコ型とは、ロイコ塗料によるカラー印刷カードで、カード上の数字や情報が、繰り返し書き換えできる新開発のカード。

「ランニングコストの軽減と、500回リライトによりカードを捨てること無く使用できるので、環境にも優しく、消費者からも支持されるものと確信している。また今後は消費者管理の徹底が図られる」という。
スタンプ会加盟店は現在63店舗だが、7月末に新聞折り込みチラシと、市内各商店街あてに文書を発送し加盟店を募集、新たに30店より申し込みがあった。「オープンまでには120店舗の加盟が目標」と七尾理事は話す。また、今後はカード化事業のPRを兼ねて横手市全所帯に対し、DMを発送し、会員を募る予定。10月末にはスタンプ台紙とポイントカード交換会、ポイント化記念大抽選会など消費者とふれあいを持ったオープニングイベントを開催し、「かまくらカード」の定着化を図る。本事業により、カード化事業が、地元消費者の支持を得、また商店主が意識を改革、挑戦することにより横手市全域の小売商店の活性化に役立つものと期待している。

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