中小小売商業を取り巻く環境が、消費者の意識や生活スタイルの変化、価格競争の激化等により大きく変化するなか、商店街では空き店舗の増加、店舗の老朽化、後継者問題、駐車場等の環境整備不足など様々な問題が顕在化しています。
 今回の特集では、こうした厳しい環境下にあって、地域に根ざした消費者ニーズへのきめ細かな対応や商店街の社会的機能の強化等を通じて、困難な状況を克服している県内の商店街を紹介します。


民間主導で空き店舗対策
鹿角市花輪大町商店街

 花輪大町商店街振興組合(鹿角市花輪字中花輪120-2 TEL0186-22-0055)では商店主が共同出資会社を設立し、7月に商店街の空き店舗に新店を開業した。民間が独自で空き店舗対策事業に取り組むのは極めて珍しく、新聞やテレビの全国版で紹介されるなど注目を集めている。
 大町商店街は昭和59年から近代化事業に取り組み、平成4年に完成した。また5年度には優良組合として中小企業庁長官賞を受賞している。
 しかし一昨年3月ニチイ(現マイカル)が撤退し商店街のど真ん中が、空き店舗となって以来、同商店街は平日の来客数が5千人から3千人に、休日も3千人から2千5百人に減り、その他にも空き店舗が目立つようになった。さらに来年3月には花輪の郊外に鹿角市で初の本格的大型店となる「いとく花輪ショッピングセンター」(売場面積約7千平方メートル)がオープンする予定もある。
 同振組の石木田裕一郎理事長をはじめ、15人の商店主が6月に設立した共同店舗の運営会社、鹿角地域開発株式会社(石川雅英社長)は資本金4千万円。同社は旧ニチイの土地を商店街から、建物を前所有者のマイカルから買い取った。空き店舗の1階にファーストフード店「グッディーズ」を出店したほか、弁当、惣菜、スナック寿司の3部門を運営している。2階ではカラオケボックス「ビッグハミング」を営業。ファーストフード店は「オーバン」(本部・東京都板橋区、山村俊彦社長)とのフランチャイズ契約で、全国83店目、県内ではジャスコ大館店などに続き6店舗目だが、これまでは大型店に入るケースが多く、個店は初めてのケース。従業員はパートを含め13名だが総支配人にホテルマン、料理長に寿司店経営者を採用するなどサービスや味にこだわっている。客層は、年齢、性別とも幅広く、特にファーストフード店はこれまで花輪に少なかったこともあり、高校生や家族連れで連日にぎわっている。またカラオケも職場や若者グループ、家族連れで活況を呈し、午後8時以降は待ち時間が出るほどだ。

 同社の石川社長は「この事業は大型店攻勢を前にした対抗策の一つ。店をオープンするまでの準備期間が短かったため、サービス面で不安があったが、売り上げは予想以上。オープン以来商店街の人の流れも確実に変わってきている。これからも徹底した社員教育で、サービス向上を図っていきたい。」と意欲満々だ。
 今後も花輪の中心部になかった営業形態で、若者を中心に人気を集めそうだ。

食と遊びと手づくりの街
鹿角市花輪新町商店街

 花輪新町商店街では平成元年に振興組合(鹿角市花輪字下花輪168-2 TEL0186-23-3053)を設立し、商店街近代化事業に取り組んできた。平成2年からは街路拡幅事業が始まり、8年度にアーケード建設、カラー舗装工事などを行い完成した。花輪地区の商店街では南北に連なる新町、大町、谷地田町の3区域で近代化事業が計画され、大町は平成4年度に完成、谷地田町も工事が進行中。
 事業のコンセプトを「食と遊びと手作りの街」として、飲食店が多く手作りが楽しめて遊べる街づくりをした。当初はアーケードよりも消費者センターの必要性を重んじたが、内部の維持管理、冬場の除雪等を踏まえ、視察研修を繰り返した結果、アーケードの建設を最終目標として、平成6年にアーケードの基本設計を完成させた。

 アーケードには全国でも初めてのソーラーシステムによる星座が12ヵ所配置され、輝く夜の星座が楽しめる。歩道は、「ケンケンパ」などの古い遊びができるよう工夫を凝らし、十和田八幡平やストーンサークルをカラーでイラストした。街区のネーミングを新聞広告、ポスター、インターネットを利用して募集したところ、全国各地から500通近い応募があり、「キララしんまち」に決定した。
 同振組の丸岡副理事長は「物販ではどうしても大型店にかなわない。新町は手作りの専門店が多いので、外から仕事が見えるように店作りにも工夫して技能を売るなど、ここでしかできないものを消費者に訴えていきたい。将来的には、町に来ればそば屋ではそば打ち、印章店ではハンコ堀り、化粧品店・洋服店ではお化粧と服装のコーディネートなどの体験や学習ができるようにしたい。」と話す。さらに同振組では昨年からインターネット上に組合のホームページを載せている。新町のコンセプト「食と遊びと手作りの街」をアピールしていこうと店舗の外観・店内の写真、店主からのコメント、営業時間、定休日などを紹介している。
 8月30日には「町踊りっこ」に合わせて、夏祭り「キララナイト」を開催し、様々なイベントや出店でにぎわいをみせた。

県内初の「空き店舗対策モデル事業」
大館市大町商店街

 大館市大町商店街は、当市商業の中心として、昭和44年9月にアーケード、昭和51年8月には共同駐車場を開設するなど商店街近代化事業に積極的に取り組み、地元消費者の利便性確保に大きく貢献してきた。しかし、郊外型大型店、ロードサイド店の集客力に対抗できず、廃業に追い込まれる小売店が相次いでおり、空き店舗が確実に増加している。地元としても、空き店舗を活用した貸会議室、ライブハウスを開設し広く市民へ開放するなど、街のにぎわい創出に取り組んでいるが、大きな回復力に至っていない現状にある。

 また全国的に見ても、中心市街地の空き店舗問題は、商業面のみならず都市構造の面からも空洞化現象を引き起こし、重大な問題となっている。
 このような状況を踏まえ、大館商工会議所(大館市御成町2-8-14 TEL0186-43-3111)は今年度、商店街における空き店舗をチャレンジショップ、ボランティアの店等に活用する商店街空き店舗対策モデル事業を実施し、空洞化にどう歯止めをかけることができるのかを様々な角度から実験的に検証し、再生のきっかけを探る計画だ。この事業は、国の空き店舗解消策事業の一環で、秋田県での事業適用は同商工会議所が初めて。予算は国と県、市の補助金などを含めて1千万円。
 「チャレンジショップ」は消費者対象別に4店舗を開設するが、一般公募で出店を募る。営業期間は10月から2月までの4カ月間で、商工会議所が家賃・光熱費を全額補助する。パネルで1区画16.5平方メートルから33平方メートルに区切る予定で、店舗内には市の特産品展示・販売やイベント紹介コーナーも設ける。
 また事業の一環でボランティア活動の拠点となる「ボランティアの店」も、商店街の別の空き店舗2カ所に設置する。秋田桂城短期大学(人間福祉科)と連携し運営する。地域の福祉施設の利用者が制作した手芸作品や製品を展示即売するほか、短大生がボランティアとして待機し、様々な活動を行う。同会議所の近江商業課長は「チャレンジショップに出店した人が1人でも多く、ここでやっていこうと思ってくれることを期待している。」と話す。
 全天候型多目的施設「樹海ドーム」がオープンし、来年には大館能代空港が開港するなど、県北地域に大きな経済波及効果をもたらす各種のビックプロジェクトが着々と具体化し、同地域の中心都市である大館市の商業が再生できる大きなチャンスが到来している。このチャンスにどう取り組むかが、将来を大きく左右するものと思われる。

もっくんカード
年内目標の1万人突破

二ツ井町商業協同組合

 二ツ井町商業協同組合(山本郡二ツ井町字比井野33 TEL0185-73-2953)では、7月1日からポイントカード「もっくんカード」を導入した。ポイントカードは、従来のきみまちスタンプに代わって導入された。周辺市町への大型店ラッシュ、町内の商業環境の変化に伴い、古くから町商業を担ってきた駅通りと本町通り商店街など既存小売業が中心となり結束、平成8年9月に活性化対策に取り組む同組合を発足。カード導入に向けて、商店街の若手を中心にポイントカード委員会を組織し、検討を重ねてきた。カードは、加盟店で買い上げ百円ごとに1ポイントの提供を受け、7百ポイントで満点となるシステム。満点カードを千円の買い物券として使用できるほか、同組合が主催するイベントや企画でも利用できる。また商店街にある地元金融機関3行にて千円の預金ができる。

 カードが導入されてから2ヵ月が経過したが、加盟店は73店から79店に増えたほか、カード所有者も年内の目標としていた1万人を早々と突破、さらに増える勢いだ。売上高もスタンプ時代に比べて2倍となるなど、カード効果も出始めている。人気の背景には事前のPRに加え、オープン記念イベントとしてハワイ3泊5日の旅へ百人を招待(優待含む)するなどこれまでにない大胆なイベントが年間を通して組まれたうえ、子供からお年寄りまで楽しめる趣向を凝らした催しを開催し、幅広い層の消費者に受け入れられたことが挙げられている。今後もフランス料理の夕べ、北海道グルメツアー、東京ディズニーランド優待など企画は盛り沢山用意されている。
 同組合の菅原委員長は「さらに充実したイベントを組むには、カード所有者を増やして商業環境をさらに好転させる必要がある。そのためには、カードサービスの充実や個店レベルの接客マナーの見直しを図るとともに、未加盟店に対して加入を促進していきたい。」と話している。

快適空間 バリアフリーの街に
秋田市通町商店街

 佐竹藩の町割り(町づくり)により発展した秋田市通町は、ブルジョア(高級商人)の町として商業が栄え、約6百メートルの通りにはのれんの古きを誇る老舗がたくさん残っている。しかし、近年の都市化の進展にともない商業区域が拡大し、加えて郊外型大型店の進出により、商業活動の地盤沈下が著しくなった。そこで町に昔以上のにぎわいを取り戻そうと昭和60年に通町商店街振興組合(秋田市保戸野通町5-31 TEL0188-63-4946)を結成し街路区画整理事業に着手(平成2年)、それに合わせて独自に「まちづくり憲章(通町商店街まちづくり協定)」を定め、伝統的な雰囲気の継承に配慮した活力と潤いにあふれた商店街づくりを目指した。
 事業は順調に推移し、建物のデザインの統一、色づかいを調和させた町並み、お年寄りや障害を持つ人にも配慮された歩道、人にやさしい街、バリアフリーの街に生まれ変わった。特に歩道には、各商店の軒下1.5メートルを、公共空地として通行に利用させるセットバック方式を取り入れたほか、ヒートポンプ方式による融雪装置も導入した。さらに今年は、案内板などストリート・ファニチャーの整備に取り組む予定で、片側5.5メートルの歩道は車道との段差も解消し、安全で快適に買い物が楽しめる空間に仕上がる。来年3月には通町橋の建て替え工事も終了し、事業は完了する予定だ。
 同振組の片谷専務理事は「平成2年から着手された事業も来年には終了し、新しい街並みが完成する。工事中はなかなかイベントを開催することができなかったが、今後はソフト面にも力を入れていきたい。来年は全街区オープンを記念して、盛大にイベントを開催するほか、ストリートマップを作成する予定。いずれにしても県内ではおそらく一番広いであろう歩道空間をどのように活用していくかが今後のカギとなる。」と話している。

ナイトバザールで若者の街手形づくり
秋田市手形中央地区商店会

 地域密着型として住民の大きな反響を呼んだイベントの一つが秋田市手形の「ナイトバザール」だ。さる7月12日の夜、手形陸橋から広面方面へ向かう4百メートル区間の歩道は予想をはるかに上回る1万5千人もの人波で埋まった。手形中央地区商店会(長山秀司会長)では、毎年8月12日に手形夏祭りを盛大に開催し、特設会場に人を集め歌謡ショーや夜店の出店等でにぎわいをみせていたが、1カ所を会場にしての催しでは商店街全体への波及効果が得られなかった。そこで、商店会としても各々のお店で売上増になるようなイベント展開を考え、埼玉県秩父市みやのかわ商店街などの実践を視察。商店会創立30周年に当たる今年、中小商業活性化事業助成金を活用し、商店街全体と住民を巻き込んでの「ナイトバザール」を実施した。当日は、商店会のほぼ全店が協力して店頭及び店内にて特売セールを展開。屋台や露店が50以上並んだほか、フリーマーケットやスタンプラリーなど多彩なイベントや各種ゲームも繰り広げられた。また手形は、地元に秋田大学や、すぐ近くに秋田経法大も抱えるという県内きっての「若者の街」ということもあって、学生もバンド演奏やパフォーマンスで大活躍した。集客力の高い大型店が無い手形地区だが、予想を越える盛況ぶりに商店会会員たちも自信を深めたようだ。10月4日には2回目の「ナイトバザール」を開催する計画だ。
 近年は、ライフスタイルの変化により、夜型のニーズに対応した街づくりが望まれており、同商店会では、「若者の街・手形づくり」をコンセプトに、夜型イベントを定着させ、近隣型商店街ならではの地域住民とのふれあいを通じた商店街づくりを進めていきたいとしている。

7月から毎週「日曜市」を開催中
秋田市共通商品券協同組合

 「ほっぺちゃんカード」の愛称で親しまれる秋田市共通商品券協同組合(秋田市大町3-1-6 TEL0188-62-1636)の共通ポイントカード事業が、沈滞傾向にあった県都秋田市の商店街に新風を吹き込んでいる。導入から1年が過ぎ、加盟店は300店、販売対象額は目標の50億円をクリアし、イベント面の活動にもかなり広がりが出てきた。
 同組合では、空地となっている旧産業会館跡地を活用し、「ほっぺちゃんサンデーマーケット」を7月27日から10月26日までの予定で毎週日曜日開催している。
 これは、県内の物産を中心としたマーケットで、市民に馴染まれるイベントにすべく、フリーマーケットも併催している。出店業者はポイントカード事業の準加盟店になり、客に対して販売額に応じたポイント引換券を発行、客は会場に設ける組合本部の端末機でほっぺちゃんカードにポイントを打ち込んでもらうという仕組みになっている。出店料は1コマ3千円だが、市民のフリーマーケットは無料。また水の使用は無料だが、電源使用の場合は、1日当たり500円の別途負担となる。出店時間は午前8時から午後3時までとなっており、駐車場も会場に隣接する旧協働社跡地に確保、無料で利用できる。朝市風の本格的な青空マーケットを定期開催するのは、秋田市では初めての試みで、7月27日に開催した第1回目のマーケットには、炎天下にもかかわらず3千人近くが来場、その後のマーケットでも多くの利用客を集め、消費者と商業者が交流を深めている。

 またこの他にも今年は市内各地で行われた夏のイベントにも協賛、竿灯や雄物川花火大会にも参加し話題を呼んだ。
 同組合の長野事務局長は「サンデーマーケットに関しては県内の小売業者や朝市団体、JAなどにも出店を呼びかけ、県都中心部の名物イベントとして定着させていきたい。また、今後も地域に密着した様々なイベントを開催し、商店街の活性化につなげると同時に、ほっぺちゃんカードの普及、PRを図り、加盟店も拡大していきたい。」と話している。
 同組合の事務所は8月25日に秋田県商工会館から1人立ちし、「ほっぺちゃんハウス」と名づけ、大町中心街の洒落たオフィスに移転した。「ほっぺちゃんハウス」は一般市民にも開放し会議やミニギャラリーの開催等、憩えるスペースとして活用することができる。

NEO ロマネスク 大町
湯沢市大町商店街

 湯沢市では、これまでに柳町・駅通りの両商店街で都市計画街路事業と並行して商店街近代化(アーケード設置・カラー舗装等)を実施し、中心商業機能の強化を図ってきているのに比べて、大町商店街は老舗や問屋等の有力店があり歴史は古いが構成店の店舗に老朽化現象が目立ち、また、街区のなかには住宅や非店舗等も混在、環境整備の立ち遅れなど様々な問題を抱え相対的に地盤沈下をきたしている。
 湯沢市大町商店街振興組合(湯沢市大町2-1-11 TEL0183-73-1492)の山内専務理事は「現在高齢化社会と郊外型SCが同時進行しているが、今後も車社会の利便性だけを考えていいのかというと疑問である。高齢者にとって郊外型SCは不便な存在だ。そのためにもわれわれ既存商店街は歩いて楽しめる商店街をつくっていく必要がある。」と語る。
 このような現状を踏まえ、その対応策として平成7年度より都市計画街路事業と並行し商店街近代化事業を開始した。事業のコンセプトについては「自然と歴史と文化を大切にし、人に優しい調和のとれた街づくり」を基本に、なつかしさと、にぎわいのある街「NEO ロマネスク 大町」と定めた。
 NEOとは本来の“新しい”という意味と、
 N→Nostalgia(ノスタルジア) 郷愁・あこがれ
 E→Energy (エネルギー)  力強さ・情熱
 O→Originality(オリジナリティー)独自性・独創性

をそれぞれ象徴している。
 ロマネスクとは本来建築やデザインの様式でローマ風のものを取り入れた様式を指すが、この大町では特定した地方を想定したものではなく、日本に本格的な洋風建築が取り入れられた、明治から大正の初期にかけてのどこかハイカラで庶民的な和洋折衷の建物をイメージしている。何よりも完成した商店街が来街者にとってどこかホットするものを感じさせ、そこで営業活動する者にとっても無理なく街並み環境を営業に反映させ続けることが出来るような近代化事業を目指している。そこで同商店街では洋館風のデザインを取り入れるために「まちづくり協定書」を設けて、外装の色や材質に基準を定め、外観デザインの統一を図っている。
 全長350メートルに約50の店舗。歩道3.5メートルの幅員を1メートルずつ自主的にセットバックしたうえ、車歩道をフラットにし段差を無くすほか、カラー舗装化、融雪設備、無電柱化等を取り入れるなど、懐かしさとにぎわいのある街「NEOロマネスク大町」づくりが進んでいる。

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