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「積極的な行動」 「付加価値の創造」で、 競争時代に生き残る 株式会社 二ツ井観光タクシー 代表取締役社長 中嶋 日吉 氏 |
長引く景気低迷の中で、タクシー需要の回復も遅れている。とりわけタクシーの輸送量は、自家用自動車の普及、鉄道など他交通機関の整備進展を背景として伸び悩み傾向にあり、今後もこうした状況に大きな変化は期待できない。 また、運輸省は2001年度までにタクシーの需給調整、運賃・料金、事業区域、最低保有車両数等の規制を大幅に弾力化する方向であり、規制緩和の波も避けては通れない状況となっている。 今後業界全体として、こうした現状を真摯に受け止めサービスの向上、新しいサービスの開発により、いかに限られたマーケットを確保するかが重要な課題となっている。 ![]() 中嶋 当社は、私の父が昭和39年、ここ二ツ井町で創業しました。それから縁あって県北地区にタクシー、バス、旅行の計8社を展開させていただいております。 正式な呼称ではありませんが、現在は平成元年に創業した第一観光バス鰍中心にしているため、皆様には「第一観光グループ」とお呼びいただいております。 私の父は長年「いつかはタクシーよりも多くのお客様をお乗せできるバスの会社をつくりたい」という夢を持っていました。ある時、その事を私と一歳下の弟に打ち明けられ、父の夢実現のため私は観光会社に、弟はバス会社に就職し修行を積んでいたのですが、バス会社創業翌年の平成2年に父が亡くなり、私と弟でグループ会社を継ぐこととなりました。 父が亡くなった時、周りの方々から「10年は潰すなよ」と言われておりましたが、今年で就任して10年。ホッとしていると同時に、今後に向けて気を引き締めております。
中嶋 橋本内閣の時に「公正な競争の元、サービスの多様化をはかり、規制を段階的に緩和していくべき」という運輸政策審議会の答申を受けた形で「需給調整の撤廃」「運賃の自由化」などという規制緩和の波が押し寄せました。具体的には「同一地域、同一運賃」や「人口31万人の秋田市には何台、能代市には何台という調整」が撤廃されるのです。 これにより各社は、資金的に余裕があれば何台でも車両を投入することができ、運賃も自由に設定することが可能になります。しかし、こうした競争に待ち受けているものは「限りない運賃のダンピング」と「他全体の縮小です。 私たちの感覚には「高い100円もあれば、安い100万円」もあるはずで、物の価値というのは単に価格が高い、安いで決まるものでは無いと考えています。だからこそ「このサービスにだったらこの位払ってもいい」とか「このサービスがあるからこの会社に乗りたい」と思っていただける「付加価値」の創造により勝負することを選択したのです。
中嶋 自転車積載可能タクシーは、二ツ井町が目指す「自転車のまちづくり」に共鳴し導入しました。あまり稼動していませんが、二ツ井町にいらした方々に「この町にはこんなタクシーがある」と思っていただけるだけでいいと考えています。 また車いすタクシーは、これまで秋田と大館にあった他社の車いすタクシーが大型で料金も高かったため、安価で気軽にお乗りいただけるよう、小型化をはかって導入したものです。こちらの方は当初予定した病院通院時のご利用に加え「お墓参り、昔耕していた田んぼを見る、親戚の家訪問」など用途はかなり広がっています。現在ご利用いただいている方々を名簿で整理させていただいておりますが、その数は数十名にもなるなど、大変ご好評をいただいております。 これらどちらのサービスも、それだけではペイするものではありません。しかし、護送船団方式が崩壊し厳しい競争原理が働く中、生き残るための武器として実施しています。今後も新しい経営施策を積極的に実行していくつもりです。 規制緩和や利用者の絶対数減など、厳しい状況にさらされるタクシー業界にあって、若いパワーで積極的に新しい試みをされる中嶋社長。「これからまた、全国でもめずらしい事業の実施を考えている」とのこと。次なる一手が期待される。
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