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「みなと温泉 あったまり〜な」は天然温泉とコミュニティ機能を備えた複合施設 |
株式会社ミッテフォルム 代表取締役 芳賀 明 氏 |
商店街の空洞化が進んでいる。秋田市土崎地区の商店街も歯が抜け落ちたように空店舗が目立つ。ある機関の調査では、土崎地区中心商店街の空店舗率は26%にも達しているという。 このような状況の中で、商店街の有志5人で運営する温浴施設「みなと温泉あったまり〜な」が4月20日オープンした。設立の目的は、全ての年代の人々に対し、健康増進、憩いと安らぎ、カルチャー、コミュニティの場を創出することにより、地盤沈下に悩む土崎地区の活性化に貢献すること。 「この施設が活性化の起爆剤になれば」と、熱い思いを抱く当社の代表取締役芳賀明さんに話を聞いてみた。
−オープン後、上々の滑り出しだそうですが…… 芳賀●予想の倍以上で、1日平均1,000人のお客さんがいらしています。オープン前から各マスコミに紹介していただいた反響が大きいようです。土崎、飯島、将軍野といった地元はもちろん、秋田市中心部や郡部のかたが団体でもお見えになっています。
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街の中央部に人が集まるものを 社名のミッテフォルムの「ミッテ」とはドイツ語で中央部、「フォルム」とは形あるいは形づくるという意味である。土崎の空洞化に歯止めを掛け、昔の土崎のにぎわいを取り戻したいという期待を込めている。
−なぜ温浴施設が核だったのですか…… 芳賀●平成7年に土崎地区活性化研究会として土崎ミッテフォルムを設立し、にぎわいの拠点となる施設について検討を重ねてまいりました。その結果、折りからの健康増進ブームに加え、地域住民から喜ばれる施設は、温浴を核とした複合施設以外にないという結論に達しました。 幸運にも、終戦直後に行われた石油採掘調査の記録をボーリング業者に調べてもらったところ、「90%以上の確率で温泉がでる」とのお墨付きをいただいたことが大きな決定要因となりました。
−一時期、計画が頓挫したいうことですが…… 芳賀●実は、この事業は平成9年度に国の高度化資金助成制度を利用して、事業協同組合で運営する共同店舗の予定でした。最終的に温浴施設を核としたこの事業計画は、この制度に馴染まないという行政判断で、平成8年10月時点で計画自体が宙に浮いてしまいました。
−「もうやめよう」という声もあがったそうですが…… 芳賀●すでに温泉の掘削も始まり、かなりの投資をしていました。また秋田市からの助成も決定していたのですが、一時関係者からそういう声もあがりましたし、大きな岐路に立たされたのは事実です。でも、これまでに費してきた時間や応援して下さった方々の気持を考えると今さら後へは引けない、という心境でした。 どうにか困難を乗り越え、県や市、また5つの金融機関の協力を得て、何とか資金を集め、平成9年1月に事業を再開しました。5月に地下約1,000メートルから約50度の天然温泉が湧き出たときは、本当にやってよかったと仲間と喜び合いました。
共同出資による地域貢献型 事業の見直しを行った結果、当初参加予定8社の内、酒、時計・メガネ等の物販部門3社が抜けて5社となった。残った5社は、衣料品販売業(2社)、飲食業(2社)、整骨院を営んでおり、温浴施設運営のノウハウは白紙の状態での船出。いわば共同出資による地域貢献型ベンチャー企業ともいえる。
混浴施設の特徴は何ですか…… 芳賀●東北では初の「冷凍サウナ」で、マイナス5度に設定しています。遠赤外線サウナで暖まった後、水浴の苦手な方には徐々に冷やせるこのサウナは打ってつけの設備といえます。また、「韓国式アカすり」は、とくに美容面から女性の間で大好評です。
−温浴施設の他に飲食部門が充実しているようですが…… 芳賀●以前から土崎地区は宴会場が少なく、ホテルが1軒ということで100人を超える宴会キャパシィティを有する施設の充実が望まれていました。そういうことから支配人、マネージャー、フロント係はホテル経験者を採用し、とくに料理部門は、和・洋・中のいずれにも対応できるようにそれぞれの料理人を配置するなど、スタッフの充実を図りました。 また、オープン当初とくに留意した点は、飲食サービスにおける不手際がないように、従業員のトレーニングを兼ねて何度もレセプションを開催しました。リピーターになっていただくためには、最初の印象が大切だからです。
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夜景に浮かぶセリオンを望み
飲食部門は、建物の2階に位置し、最大90畳の大広間に、24畳の和室、6畳の個室、16席の小上りなどがあり、充分な内容となっている。3階は、大・中・小の3つの会議室と屋上ガーデンになっている。各種会合に対応できるとともに、夏にはビアガーデンを開く予定。夜景に浮かぶセリオンを望みながらの雰囲気は最高とのこと。ぜひ実現させたいと意欲を見せている。
5人の中では最年少という芳賀さんだが、そのやさしい雰囲気の中に確かな人望と大きな度量が感じられた。
「土崎への熱い思いを込めたこの小さな一石が、土崎湊復興の大きな波紋となることを期待したい」と話す芳賀さん。蒸気船をイメージしたという5人の共同操船「あったまり〜な丸」は、土崎活性化への夢を乗せ、長い航海に着いたばかり。これからが正念場である。
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株式会社 ミッテフォルム 秋田市土崎港中央三丁目4―42 TEL: 018-847-2626 |