まだまだ低い関心度
県内企業の約8割が未対応

― コンピュータ西暦2000年問題への取組状況調査結果 ―

 コンピュータプログラムの中の日付の記述は従来、YY/MM/DD(年/月/日)と“年”を西暦の下2桁で記述することが一般的に行われてきました。しかし、このままでは3年後に迎える西暦2000年にコンピュータが1900年か2000年かの判断ができなくなり、様々な障害が生ずる可能性があります。
 そこで当中小企業情報センターでは、今年2月に、秋田県内の企業における2000年問題への取組状況を把握し、今後の関連施策に反映させるために当調査を実施しましたので、その調査結果を紹介します。

調査の概要回答者の内訳
1.調査対象
  秋田県内企業 1,000社
2.調査方法
  郵送による書面調査
3.調査時点
  平成9年2月
4.有効サンプル数
  416件
有効回答416社の内訳は下記のとおり。  業種別の内訳は、サービス・その他が155社(37.3%)で最も多く、次いで製造業の127社(30.5%)、小売業の55社(13.2%)、建設業の46社(11.1%)となっている。
 従業員規模別の内訳は、「20〜49人」規模が131社(31.5%)で最も多く、次いで「20人未満」の83社(20.0%)、「50〜99人」と「100〜299人」がともに80社(19.2%)となっている。
 詳細については、表−1〜2及び図−1〜2を参照。

図-1 業種別の内訳                      図-2 従業員規模の内訳
表-1 業種別の内訳                      表-2 従業員規模の内訳


調  査  結  果
1.現在使用中のコンピュータ
 回答企業416社が現在使用しているコンピュータの種類について見たのが図−3。
 全体の約8割に当たる78.6%が「ネットワークに接続していないパソコン(スタンドアロン)」を使用、「オフコン」が43.3%、「ネットワークに接続しているパソコン(LANなど)」が37.0%でそれに続いており、汎用機はわずか15.4%にとどまっている。
図-3 現在使用中のコンピュータ
2.ネットワークの形態
 ネットワークの形態については、「社内ネットワーク(LAN)」とする回答が67.6%と最も多く、次いで「企業間情報ネットワーク」の28.9%、「離れた事務所とのデータ交換(WAN)」の27.2%となっている。(図−4)
図-4 ネットワークの形態

3.情報システムの専任者の有無
 情報システムの専任者については、6割以上(60.6%)の企業で専任者がおらず(表−3)、また、「専任者がいる」と回答した企業では、要員1人という企業が「自社要員」、「外部常勤要員」のいずれについても5割を超える。(表−4)
表-3 専任者の有無
表-4 業種別の内訳

4.2000年問題への対応について
 2000年問題の取組状況については、「既に完了している」とする回答は12.3%にとどまり、「現在作業中である」の8.4%と合わせても約2割に過ぎない。一方、「検討していない」とする回答は45.0%で、「現在検討中である」の29.8%と合わせると、実に8割近くの企業がまだ取り組んでいないことになる。(図−5)
図-5 2000年問題への対応

5.検討していない理由
 2000年問題を検討していない理由を見たのが図−6。
 「新聞、雑誌、テレビなどで知っている程度」との回答が27.3%と最も多く、「影響を受けるプログラムを所要していない」が26.7%でそれに続いている。しかし、16.0%の企業は「2000年問題を全く知らなかった」と回答しており、企業側の認識の低さがうかがえる。
図-6 検討していない理由

6.どのような形で取り組んだか
 2000年問題に対し、既に対応完了と回答した企業の取り組み方をみたのが図−7。
 「関連するプログラムのみ修正した」との回答が37.3%で最も多く、「システムの追加や他の保守案件と一緒に取り組んだ」(23.5%)、「システムを新たに作り直した」(17.6%)と続いている。
図-7 どのような形で取り組んだか

7.ソフトウエアに要した経費の総額及び総工数
 ソフトウエアに要した経費について見たのが図−8。
費用総額は「50万円未満」とする回答が67.6%で全体の7割近くを示している。
 また、それらに要した総工数を見たのが表−5。 工数は全業種の平均で3.52人月で、建設業では0.25人月なのに対し、小売業では6.25人月と業種間格差が大きい。(人月とは延べの工数。2人で3カ月を要した場合、2人×3月=6人月となります)
図-8 ソフトウェアに費やした費用の総額
表-5 2000年問題に要した総工数

8.2000年問題への対応の開始時期と終了時期
 既に対応完了と回答した企業の取組開始時期を見たのが表−6。
「96年7月〜12月」が34.5%で最も多く、「97年以降」が24.1%でそれに続き、「94年以前」から取り組んだ企業も20.7%を示した。
 また、終了時期は「97年以降」「96年7月〜12月」が、それぞれ41.4%、27.6%となっており、この1年間に終了した割合が高い。
表-6 開始時期と終了時期

9.2000年問題に対する認識
 現在作業又は検討中及び検討していないと回答した企業の、2000年問題に対する認識を見たのが図−9。
 「これから検討したい」とする回答が30.1%と最も多い一方で、「危機感を持つほどのことはない」が24.9%、「対策は考えていない」が21.1%を示し、2000年問題に対して極めて楽観的な見方をする企業が半数近くにも上っている。
図-9 2000年問題に対する認識

10.2000年問題に対する社内の関心度
 現在作業又は検討中及び検討していないと回答した企業の、2000年問題に対する社内の関心度を見たのが図−10。
 「ほとんど認識はない」とする回答が45.1%と半数近くを占め、逆に「関心があり問題提起され ている」とする回答はわずか9.2%で1割にも達せず、社内の関心度はすこぶる低い。
図-10 社内の関心度

11.取組開始予定時期と終了時期
 現在作業又は検討中及び検討していないと回答した企業の、2000年問題に対する取組開始予定時期を見たのが表−7及び図−11。
 「未定」という回答が47.7%で約半数を占め、「既に検討中」が13.3%、「1年以内」が12.7%、「2年以内」が7.8%と続いており、今後2000年問題に対する認識が高まるにつれ、取り組む企業は増加するものと考えられる。
 また、取組終了予定時期を見たのが表−8及び図−12。終了時期については開始時期未定の企業が多いため、「未定」が45.7%、「2年以内」が11.6%、「3年以内」が9.5%であった。
表-7 取組開始予定時期
表-8 終了予定時期
図-11 取組開始予定時期
図-12 終了予定時期

12.ソースプログラム、ドキュメント類の保管・整備状況
 ソースプログラム、ドキュメント類の保管・整 備状況を見たのが表−9及び図−13。
 「ソースプログラム、ドキュメントの意味が分からない」という回答が26.6%を示し、「そろっていない」「そろっているか不明」がそれぞれ15.0%、13.9%で、全体で5割以上の企業が保管・整備状況について分からないと回答している。
図-13 ソースプログラム、ドキュメント類の保管・整備状況
表-9 ソースプログラム、ドキュメント類の保管・整備状況

13.どのような形で取り組むか
 現在作業又は検討中及び検討していないと回答した企業の、2000年問題に対してどのような形で取り組むかをみたのが図−14。
 「関連するプログラムのみを修正したい」とする回答が全体で53.0%と過半を占め、特に製造業、建設業では6割を超えている。「システムの増加や他の保守条件と一緒に取り組みたい」が33.7%でそれに続き、「システムを新たに作り直したい」は13.3%となっている。
図-14 どのような形で取り組むか

14.費用の総額
 取組に際してソフトウエアに必要な費用の総額を見たのが図−15。
 「50万円未満」とする回答が全体で47.9%と約半数を占め、中でも建設業では75.0%と極めて高い比率を示している。次いで「50万円以上100万円未満」が19.3%、「100万円以上300万円未満」が14.7%となっている。なお、「1000万円以上」とする回答はわずか7.2%であった。
図-15 費用の総額

15.どこに協力を求めたいか
 現在作業又は検討中及び検討していないと回答した企業の、2000年問題に対応するための協力依頼先を見たのが図−16。
 「コンピュータ業界」とする回答が53.2%と最も多く、次いで「取引先の企業」が21.4%、「中小企業事業団や公的機関等」が12.7%となっている。
図-16 どこに協力を求めたいか

16.2000年問題に際しての希望する支援策
 2000年問題の解決に際して希望する支援策について見たのが表−10及び図−17〜19。
 2000年問題対応セミナーの開催については、「希望する」という回答が23.8%だった。
 当振興公社の事業の1つであるアドバイザーの派遣(無料)については、「希望する」とする回答が12.3%であった。
 専門家や専門企業の紹介については、「希望する」とする回答は7.9%にとどまった。
図-17 セミナー開催について
図-18 アドバイザーの派遣(無料)
について

図-19 専門家や専門企業の紹介
について


 2000年問題については、最近各種マスコミで話題になってきたものの、調査結果をみる限り県内企業の認識や関心はまだまだ低いようである。専門のシステム担当部署を持つ大手企業に比べ、県内企業の多くはコンピュータに関する知識が乏しく、今回の調査結果にその傾向は色濃く表れている。
 この問題をいつまでも楽観視することは、2年半後に控えた2000年に突入した時に、各種業務に大きな支障をきたすことにつながる。経営者はもとより、社員一丸となっての認識と態勢整備、予算処置、システム部門に至っては実態把握と業務への直接・間接的な影響調査を今から始める必要があろう。

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