大店法の規制緩和、消費者ニーズの多様化・個性化、さらには価格破壊の増大等、小売店を取り巻く環境は著しく変化してきました。
そこで当センターでは、県内の小売商店の経営実態を把握するとともに、経営情報等に関するニーズを探り、これからの商業施策に反映することを目的に、本調査を実施いたしました。
【調査の概要】
1.調査対象
県内小売商店
2.調査方法
郵送による書面調査
3.調査期間
平成8年10月下旬〜11月中旬
4.有効サンプル数
440件
【調査結果】
1.業種構成
小売業を主な取扱い品目によって6業種に分けてみた。結果、有効回答440件の業種構成は表−1のとおり。
「繊維・衣服・身回品小売業」と「その他の小売業」が共にが25.5%で最も多く、「飲食料品小売業」が24.6%で続いている。「総合小売業」「自動車・自転車小売業」「家具・建具・什器小売業」は1ケタ台となっている。
A.総合小売業 | B.飲食料品小売業 |
C.織物・衣服・身回品小売業 | D.自動車・自転車小売業 |
E.家具・建具・什器小売業 | F.その他小売業 |
2.営業年数
それら小売商店の営業年数を見たのが図−2。
「20年以上50年未満」が51.6%と過半を占め、「50年以上」の26.1%を合わせると、約8割の商店が20年以上営業していることになる。また「5年未満」は1.6%、「5年以上10年未満」は1.8%で、10年未満の商店はわずか3.4%にとどまった。
A.5年以上 | B.6年以上10年未満 |
C.10年以上20年未満 | D.20年以上50年未満 |
E.50年以上 | F.不明 |
3.店舗数
66.8%の商店が「1店舗」と回答しており、有効回答の7割近くが1店舗のみの営業となっている。次いで「2〜3店舗」の19.5%、「4〜9店舗」の6.1%となっており、「10店舗以上」はわずか3.4%に過ぎなかった。また、4.1%が「店舗なし」と回答しており、回答の中には無店舗販売業者も含まれていることを念頭に置いていただきたい。(図−3)
A.1店舗 | B.2〜3店舗 |
C.4〜9店舗 | D.10店舗以上 |
E.店舗なし |
4.延べ売り場面積
「20坪以上50坪未満」と回答した商店が23.4%と最も多く、次いで「10坪以上20坪未満」の22.0%となっている。また、20.9%が「100坪以上」と回答しているが、これは単に量販店や多店舗展開している商店ばかりでなく、カーディーラーやガソリンスタンドといった業態も含まれているためである。(図−4)
A.10坪未満 | B.10坪以上20坪未満 |
C.20坪以上50坪未満 | D.50坪以上100坪未満 |
E.100坪以上 | F.無回答 |
5.年間売上高
小売商店の年間売上高の分布を見たのが図−5。(多角化の場合は小売部門のみを調査)
「1億円以上3億円未満」が27.0%で最も多く、「5000万円以上1億円未満」の22.3%がそれに続いている。しかしながら「1000万円未満」の5.9%、「1000万円以上3000万円未満」の15.5%、「3000万円以上5000万円未満」の11.4%を合わせると、1億円未満の商店が過半を占めることになる。
A.1000万円未満 | B.1000万円以上3000万円未満 |
C.3000万円以上5000万円未満 | D.5000万円以上1億円未満
|
E.1億円以上3億円未満 | F.3億円以上1億円未満 |
G.5億円以上 |
6.従業員数
(1)正社員のみの人数を見たのが図−6(1)。
「2〜4人」との回答が36.4%で最も多く、「5〜9人」が24.5%でそれに続いており、「1人」の14.1%、「なし」の10.7%と合わせると、実に80.7%の商店が正社員10人未満で営業していることになる。
A.なし | B.1人 |
C.2〜4人 | D.5〜9人 |
E.10〜29人 | F.30人以上 |
(2)また、パート、アルバイト等を含めた従業員数を見たのが図−6(2)。
ここでも「2〜4人」との回答が33.4%で最も多く、次いで「5〜9人」の23.4%となっている。しかし「10〜29人」の17.3%、「30人以上」の9.3%を合わせると、10人以上の商店が26.6%ということになり、小売商店はパート、アルバイト等での雇用が極めて多いことがうかがえる。
A.なし | B.1人 |
C.2〜4人 | D.5〜9人 |
E.10〜29人 | F.30人以上 |
7.小売業外収入への依存度
何らかの小売業外収入があると回答した商店が全体の28.9%を占め、そのうち「小売業外収入の方が多い」が8.2%、「半分くらい」が3.4%で、依存度が半分以上とした商店は11.6%に過ぎなか
った。(図−7)
A.無し | B.半分未満 |
C.半分くらい | D.小売業外収入の方が多い |
8.ここ3年間の売上推移
「減少」と回答した商店が37.5%と約4割にも上り、「大幅に減少」の15.8%と合わせると、実に53.3%と半数以上の商店が売上減少に陥っていることが分かる。また「横這い」とした回答は31.6%、「増加」が14.4%、「大幅に増加」が0.7%で、増加した商店はわずか15.1%にとどまっている。(図−8)
A.大幅に増加 | B.増加 |
C.横這い | D.減少 |
E.大幅に減少 |
9.経営環境における問題点(重複回答あり)
「近隣への大型店等の進出」「価格破壊による
影響」とする回答が49.2%、47.2%と両社が約5割を示し、「同業他社との競合」が35.1%でそれに続いている。さらに「商店街の停滞」が28.9%、「不況感による買い控え」が23.7%、「地域人口の減少」が22.1%、「地域経済の停滞」が21.6%と20%台を示した。(図−9)
10.自社の経営上の問題点(重複回答あり)
「粗利の低下」が42.2%と4割を超えたのをはじめ、「人件費等諸経費の増加」が34.4%、「駐車場がない・狭い」が32.8%と30%台を示した。
また、「経営者・従業員の高齢化」も15.9%を占め、「後継者がいない」(12.9%)とも相まって深刻化の様相を見せている。さらに「企画力が弱い」も18.5%を示すなど、経営上の問題点はハード・ソフト多岐に渡っている。(図−10)
11.今後の経営方針
「現状維持」とする回答が46.1%を占める一方、「積極経営」も41.4%を示した。逆に「縮小経営」は8.3%、「転業・廃業」はわずか4.2%に過ぎなかった。(図−11)
A.積極経営 | B.現状維持 |
C.縮小経営 | D.転業・廃業 |
12.今後の対応策(重複回答あり)
「顧客管理の徹底」が41.6%と唯一4割を超えトップで、顧客管理を重要視する商店が極めて多い。また「従業員教育の徹底」が28.6%を示し、接客サービスや商品知識の重要性が認識される結果ともなった。さらに「店舗の改装・改築」も24.3%を示し、今後の対応策もハード・ソフト両面を視野に入れている商店が多い。(図−12)
13..現在外部から受けている支援(重複回答あり)
さて、現時点でメーカー、問屋、商工指導機関等から受けている支援の状況を見たのが図−13。
「特になし」とした回答が50.1%で最も多く、半数以上の商店が外部からの支援を受けていな
いことが分かる。
支援を受けている内容としては、「売れ筋情報等の商品情報」が26.4%でトップ。「経営全般の
アドバイス」が16.3%、「コンピュータの活用」が10.6%でそれに続いている。
14.情報の活用について(重複回答あり)
(1)特に必要とする情報
「売れ筋等の商品情報」が44.4%を示し群を抜いている。次いで「経営全般の情報」(33.9%)、「繁盛店の情報」(32.1%)、「消費者ニーズ・購買動向」(31.1%)がほぼ同率で並んでいる。(図−14)
(2)情報の主たる入手先
「仕入れ先」とする回答が74.4%と群を抜き、「一般誌紙・専門誌紙」が44.9%、「同業者」が21.4%でそれに続いている。また「消費者」との回答も20.0%で4番目に多く、商店経営に際しては消費者からの情報提供も重要な鍵となっているようだ。(図−15)
(3)情報の活用上の問題点
最後に、それらの情報を活用する際の問題点
を見たのが図−16。
「経費が掛かり過ぎる」とした回答が36.8%で最も多く、「地元の情報が手に入らない」が26.4%、「適当な人材がいない」が22.2%でそれに続いており、小売商店の情報活用の問題点は、人・モノ・金にローカル性といったところか。また「情報の活用方法が分からない」とする回答も11.8%あり、せっかく入手した情報も宝の持ち腐れで終わっている例も多いようだ。
|