 |
大学人も一人の起業家である
|
秋田大学医学部実験実習機器センター
副センター長
天野 憲一 氏
|
かつて大学の存在は社会からかけ離れた立場に立ち、およそ社会に直接貢献できる研究をすることは、崇高な科学に対する低俗な研究であると考えられてきた。現在でも基礎科学に携わる研究者にとっては、それは依然として新興宗教の天声や定説のようなものである。昨今の社会事情が大きく変化することによって、今までの硬い殻を破る時代が既に来ているのに、気が付かない大学人はまだ多い。
当の私も、数年前まではその定説にはまっており、仕事上での必要性から最近になってようやくその呪縛から解放され、新しい定説に目を向ける事ができた。それは大学人であっても一人の起業家であると。但し、大学人を含めた国家公務員の服務規定は厳しく、自分自身では企業を起したり商品化できない。しからばそれを代行してくれる業者を探さなければならない。これが我々にとって至難の業である。最近は東北インテリジェントコスモスが仲介に入り、我々の研究成果に興味のある企業と結び付ける役割を果たしてくれている。運良く見つかれば良いのだが、なかなかそうもいかない。企業のほうも全てが東北インテリジェントコスモスに加入している訳でもないので、その接点を見い出すのが困難である。数年前より中小企業の方々と接する機会があり、中小企業の製品化に対する意欲を目のあたりにして思うことは、大学人の起業することに対する消極性である。私のように医学部に属している人間は特にそのような立場に立ったとき、学会発表や論文発表で止まり、それ以上のことはなかなか出来ない、というよりもなす術を知らないのである。
この数年、多くの大学では研究で得られた成果を基に外部との共同研究を積極的に押し進め、新産業の創出に貢献するためのセンターを設立している。秋田大学では地域共同研究センターを設立し、外部からの研究受け入れ及び内部の得られた研究を基に外部との共同研究の出来る体制を作っているが、内部にいながらそれをうまく利用できない。反省と今後の問題として、可能ならばこのようなセンターを介して外部の企業と協力してゆきたいと思う。
|