ショッピング近未来考
=小売業の原点への回帰=

掛札マネージメントラボラトリー
 所長
 掛札 彰久 氏


 中小小売店を取巻く環境は氷河期そのものである。各地でショッピングセンターやロードサイドの大規模専門店がオープンし、商店街からお客様の足が遠のいて行くのが、はっきりわかる。例えば、夕方に商店街の端から端まで見通せてしまう、などということが日常になっている。現在は、これらショッピングセンターやロードサイド店にお客様がシフトしている。しかし、これら大規模小売店が永遠なのだろうか?女性の社会進出で、夫婦共働がもはや常識となった現代、日常の買物をする時間の制約が明確になっている。ここで登場するのが、パソコンである。このパソコンが買物のスタイルを変えようとしているのである。
 先ずはパソコンを媒体とした「電子商取引」のいくつかを紹介してみたい。では日常の食品雑貨の買い物から始めよう。テレビ電話と対話しながら、欲しい品物を家庭用のコードブックをハンディの読取り装置で読取ることにより注文ができ、用意されているBOXに決められた時間に届けられ、支払は電子マネーにより決済されるのである。こうなると、小売店の機能は、商品・サービス情報や献立情報などの情報提供とライフスタイルの提案ということになる。
 次に、買回品や専門品については、何社かが共同して開設するバーチャル・モールがあり、アクセスすると画面はショッピングセンターへと誘導し、入口を入ると目的の店を選ぶということで、仮想現実の世界である。また、単独で開設する場合は、インターネットにホームページを持つということになる。さらに、衣料品の場合はどうしても手にとってみてみたいのが人情であり、これに対応すべく開発されたのが、音声は双方向、映像はプライバシーの問題で店の側からのみで、見たい商品をあらゆる角度で見ることが出来、専門家がアドバイスをするシステムで、商品を直に手で触れるという感覚に近いものとなっている。このように、時間のない現代人のためにパソコンが21世紀のショッピングの主役の一つとなり、ショッピングが、家族で百貨店やショッピングセンターへ出かけるレジャーの時代、即ち家族としての買物の時代から、パソコンを使ってのゲームの時代、即ち個人としての買物の時代へ、それは在宅のまま、現金やカードの提示をすることもなく、ただマウス及びキーボードを操作するだけで商品が自宅に届くのである。以上のことから明白なように、21世紀の消費のキーワードは“個人の欲求の充足”であり、商品開発においても、個人の欲求がどう移り変わり、その欲求を充たす商品・サービスとは何かがポイントである。
 ところで、パソコンの家庭への普及に伴い、買物がゲームとなってしまうのか。これに対しては、ハッキリ“NO”である。これらパソコンのシステムにさえヒューマンタッチ、即ち人間味をどう加えるかがその開発のポイントなのである。どこでも聞くのが、商店・商店街が生き残るためには、いかに一人一人のお客様を大切にし、地域に密着した商売が出来るかということである。しかし、現実にどれだけ実行されているのだろう。コンビニにam/pmというチェーンがあり、このコンビニで現在都内2店舗で歯みがき1本でも届けますという、政策を打出し、マスコミに取り上げられた。また、米国のノードストロームという百貨店では、現場での規則を一切なくし、すべてを販売員の責任とし、徹底した販売員各人による顧客情報管理と、メール及び電話作戦で、今やその顧客サービスは伝説となっている。常にお客様のためを想い、お客様の想像以上のサービスを行う、そして何より仕事に誇りを持ち、セールスが好きなのである。元来、中小小売店の武器であった地域密着、顧客一人一人へのきめ細やかな接客とフォローが、売らなければの気持ちが強いため、どこかに置き忘れて来たのではないだろうか。今一度地域のため顧客のために何をすべきかを是非思い出して欲しいものである。

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