“共存”よりも“強存”時代
―問われる経営体質―

経営コンサルタント・LTD(有)経営管理センター
代表取締役
 牧野 正弘 氏


●共存よりも強存の時代

 日本の企業社会を覆う「大開放・大競争の波、外圧」という名の“規制緩和”そして、人間性疎外感をももたらした「バブル崩壊と資産デフレ」は正に“政治的人間不況?”。
 戦国武将の教えさながらの「戦は計りごと多ければ勝つ、少なければ負ける!」すなわち、これを企業に取り入れるなら「市場を制するには、打つ手・経営戦略の豊富さ」がキメ手ということになる。
 経営戦略の3大武器は“人材”と “資本力”と “経営システム”である。この3大武器を駆使して、勝つ戦略を企てた企業だけが生き残る弱肉強食の時代が到来したといえる。
 経済大国日本を支えてきた製造業がコストの低い海外へ移転して、国内は空洞化現象による失業者が増大し、一方では外圧を受けての規制緩和や農産品の自由化による余剰農地の増大などを好材料に、流通業大手が3大武器の充実力を発揮して、モータリゼーションの進展と共に「立地革命」を巻き起こし、地方進出に一層拍車がかかる.......。加えて既存大手が売り場面積を拡張するなど、既存商店街をはじめ小売業界はかつてない苦戦を強いられており、共存どころか強者しか生き残れない時世である。
 永年、多くの企業に関わって体験してきたことは、大方の企業経営の現状は性格ともいえる頑なな“慣性”を有しており、容易に変革ができないということである。そのため、例え、ビジョン・方針等を打ち出し戦略が編み出されても、それがなかなか全社的に浸透されない場合が多いのである。こうしたことは、トップの「決断」と企業を守る管理・監督・幹部スタッフの「職分のわきまえやヤル気」の問題に起因している場合が殆どである。

●経営の危険シグナル

 経営環境が激変している中で、繁栄していく企業と低迷を続ける企業の格差は正にこのトップ層の力量にかかっている。業績を上げるという使命の重圧に挑む姿勢とトップに立つ経営者の経営改善に対する断固とした決意の度合いによって企業のバイタリティ(成長力)が左右されるという現実を、筆者はこの目で数多く確かめてきた。
 企業経営はもともと“競争”という外敵を避けることはできず、今日の繁栄といえど、明日の保証となり得ない。市場占有率を安定させ、或いは高めようとすれば、それなりに願望達成のためのあらゆる努力をしていかなければならない。この努力をしないまま、希望的観測だけで「なんとかなるだろう」とか「旧態依然、漫然とした日暮らし」経営が続くようになったとき、それは、その企業にとって“重大な事態”になる前兆であり、経営の危険信号であるということに経営者は気づくべきである。そして、早いうちに、経営対策に取り組むことが肝要である。

●人材育成と経営体質強化

 よく、金融機関や興信所等が「あの企業なら大丈夫」と評価する例は多い。この場合の判断根拠は経営体質の強弱の評価を総評して言うことになるが、これには概ね3つの構成要素があげられる。1.一般的に社風といわれる職場の雰囲気や職場の環境、社員の意識行動面などの「経営風土」2.経営陣を含む人的資源や資産力、資金力及び経営システム等独自ノウハウなどの「経営資源」3.蓄積されてきた信用・実績、立地条件や商品力及び営業基盤や情報を含むネットワークなどの「経営基盤」である。
 企業は生き物である。今日の健康が明日もまた続くという保証はない。常に健康管理は必要である。そのためにも企業の健康診断は欠かさないようにしたいものである。
 因みに社員のヤル気を醸成する4つの条件といえば、1.デイスクロジャー(業績公開)2.方針の確立 3.ビジョンの打ち出し 4.成果配分―を実践することが上げられる。勿論これを実践し、効果をあげるには事前に相応のコミュニケ−ション研修は欠かせない。
 ともあれ、頼もしい“光る人材”をいかにして育て上げるか、強者になるための不可欠条件ではある。そして、経営者もまた“感性”を磨くことを忘れてはならないのである。

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