「個性」が
  秋田を復活させる

財団法人 秋田経済研究所
研究員 荒牧 敦郎 氏


 秋田のアイデンティティー?
 先日の「高速新時代の幕開けシンポジウム」において、県外出身の学生の方が次のように質問した。
 「秋田のアイデンティティーが何なのか、分からないのですが。」この後ひとしきり、会場はこの話題で盛り上がった。確かに今、この問いが持つ意味は非常に大きい。
 「秋田のアイデンティティー」とは「秋田とは、こんな所です。」ということであり、言い換えると「秋田の個性」である。この「個性」こそが秋田を発展させるカギであると私は考えている。

 戦略的な観光の振興を
 秋田新幹線や秋田自動車道、そして来年の大館能代空港と、高速交通体系がいっきに整備され、他地域との交流の可能性が大きくひらけるという、かつてなかった状況に臨み、秋田は大きなチャンスを迎えている。特に観光面では「花まるっキャンペーン」の頑張りもあって、観光客の増加など効果が現われている。
 しかし、交通が整備されたからといってそれだけで観光客が秋田を訪れるわけではない。逆に、他地域との広域的な競争にさらされるという面もある。したがって、私たちがこのチャンスを活かすためには、他にはない自分だけの魅力=個性を発揮しなければならない。そうでなければ、誰もわざわざ秋田を選びはしない。これは、観光だけに限らず、商業や製造業などすべての産業、すべての企業、そして県内すべての地域に言えることである。
 秋田にとって観光は極めて重要な役割を持っている。近い将来、全国一の人口減少率が予想されている秋田県が地域としての活力を維持、向上させるためには、人口の県外流出をとどめるだけでなく、むしろ積極的に県外から人や企業を呼び込むことが必要である。
 そのためには、県外の人に「秋田を知ってもらうこと」、さらに「秋田を好きになってもらうこと」が不可欠であり、その入り口として観光を戦略的に活用するべきである。

 私たちの持つ絶対的な強み
 観光資源の面で秋田は宝の山といっていい。海、山、湖などの自然景観、移り変わりのはっきりした四季、竿燈やかまくらなどの行事、きりたんぽや稲庭うどんなどの郷土料理。書ききれないほどの材料がある。
 そこで問題は、この豊富な資源をどうやって活かすか、ということになる。これまで、接客マナーや道路案内などの様々な課題が指摘され、鋭意、解決にむけた取り組みがなされているが、一番重要なのは、「自らの個性=魅力を知る。」ということである。そもそも自分の魅力を知らなければ、それを人に伝えることができない。この点、秋田県人は秋田のことを良く知っていると思い込んでいるが、意外なほど自分の地域の良さ、魅力について知らない。日頃目にしてるので、それを当たり前と感じていることもあるだろう。もう一度、新鮮な気持ちで周りを見回すと、きっと思いがけない発見があるに違いない。

 美女と野獣
 次に重要なのは、その魅力を伝える(PR)ことである。「口が重い、宣伝がへた」と言われる秋田県人だが、「知ってもらう」ということに関してもっと貪欲になりたい。
 幸い私たちには他県にない武器がある。知名度抜群のキャラクター、なまはげこまち(秋田美人)だ。ちょうど、「美女と野獣」のような組み合せになっているのが面白い。全国を見回してもこれほど有名なキャラクターを2つも持っている県はない。実際、花まるっキャンペーンでも、なまはげとこまち娘は人々に強烈なインパクトを与えている。

 美しい国であるために
 伝えるべき魅力とは何だろうか。来年秋田市で行われる日本文化デザイン会議のテーマが「三美主義−さぁ世紀末−」と決まった。三美とは、美人、美酒、美林のことである。「今さら美人、美酒とは、」と言うなかれ。秋田と言った時に美を連想してもらえるのは大きな財産である。美林は自然環境の美しさであり、美人は人の美しさである。そして、酒は人が自然に働きかけて作るものだから、美酒とは「人と自然の関わり方の美しさ」を象徴するものだろう。良くぞ言ってくれたと思う。現状はそうでない点も多いが、ぜひイメージに違わず美しい国、秋田をつくり、それを積極的にPRしていきたい。

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