「買い物をしても『ありがとうございます』の一言も言わない」「客よりも商品知識のない店員」「態度が横柄」「無愛想」「クレームに誠実に対応してくれない」「電話での応対の悪さ」。「接客」という面では、残念ながら、まだまだこういう社員の対応を見聞きしたり、経験することが少なくありません。「あの店には二度と行くもんか」と思い、逆に、しっかりとした対応をしてくれる気持ちの良い店があると、リピーターとして通うことになります。
どこでこういう差がでてくるのでしょうか。以外と経営者は、「いまの若い者は、いくら教えてもわからない」と言って、社員個人の資質にその原因を求める傾向が多々ありますが、果たしてそうでしょうか。その大きな原因が、社員個人の資質ではなく、社会常識・ルール・初歩のビジネスマナーといった基本的なことについて、十分に社員教育がなされていないところにあるのではないかと思います。教育されていないということは、経営者や幹部が、現場での社員の問題点を把握していないか、問題があることに気がつかないか、あるいは経営者も社員と同じレベルにあるのではといえます。逆に、経営者が顧客の立場・視点で現場にいるならば、問題点はすぐにわかり、問題点がわかれば、教育の方法もまた見えてくるはずです。社員教育を実施している場合でも、その方法について、経営者の認識を改める必要があるのではないかと思います。社員教育を実施したことで、目的を達成したと考えたり、社員教育を人事担当やコンサルタントまたは外部で開催される社員研修会に、まかせっきりにしているということはないでしょうか。
「企業は人なり」「人材ではなく人財」「人間尊重」等々、人こそが経営の重要な要素であるということは、様々な形で表現されています。「おたくの会社は何を作っているのですか」と聞かれた故松下幸之助氏が「人間を作っている会社です」と答えたというのは有名な話で、経営の基本は、人をいかに動かすかに集約されていると言って過言ではないと思います。その経営において「人」が最も重要な要素であるならば、「人を育てる」ということは、経営者の最も重要な仕事の一つではないでしょうか。その最も重要な仕事を他にまかせっきりにしているのであれば、その効果は押して知るべしです。
ではどうしたらよいでしょうか。身だしなみ、言葉遣い、話し方、聞き方、挨拶、電話のかけ方・受け方、そしてクレーム対応の仕方という初歩のビジネスマナー、社員としての基本を、経営者が現場で訓練していくことです。いわゆる「OJT」です。こんな細かい仕事は、経営者の仕事ではないと思わないで下さい。顧客満足度においても、「社員の接客態度が丁寧で迅速」「クレーム等問題があったときの対応が親切」という最も初歩的なビジネスマナーが、重要な評価要素となっています。社員教育の目的は、経営者が教えたことを、社員が確実に実施できるようになるまで、繰り返し繰り返し指導し、当たり前と言われていることを、当たり前にできるようになるまで、徹底的にやることなのです。
この大競争時代に、多額の資金を要する設備投資に較べて、投資額(費用ではなく)が少なく「人」という重要度が高く、効果の大きい人材教育に、投資しない手はないのではないでしょうか。経営者が社員教育の重要性を再認識し、教育目的を社員に明確に示し、そして、ビジネスマナーといった基本的なところを含め、何を、いつまで、どのようにして、いくら投資してと、体系的・計画的に見直しされることをおすすめいたします。
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