「21世紀に生き残る企業は情報化と共同化がキーワード」

(有)アサップ経営システム

  コンサルティング代表取締役

 中小企業診断士 梅津 尚夫 氏


 長野冬季オリンピックは小沢征爾指揮するベートーベン第9「合唱」でその幕を開けました。衛星TVを通じて世界6カ国(5大陸と日本)にいる人が同時に「歓喜の歌」を合唱したのです。情報化が国際化に大きな役割を果たしていることを身近に感じた事例です。
 衛星TVが百以上のチャンネルで宇宙から世界中の情報を伝えています。インターネットを通して世界中の最新流行の情報、新製品の情報、製造方法の情報が得られます。日本の一地方にいても、都会と同じ時刻に同じ情報が取れます。
 このような「世界同時情報」がどこでも得られる時代に中小企業の経営が変わるのは当たり前です。競争相手は隣町の企業や郊外のショッピングセンターだけではありません。ロサンゼルスのデパートであり、中国の部品工場であり、オーストラリアのリゾートホテルが、我々の競争相手なのです。世界的な競争に耐える企業力を持たないと21世紀に生き残ることはできないでしょう。
 いや「いずれ国や県が何とかしてくれる」と思っているかもしれません。しかし、時代は変わりました。規制緩和で国の援助や保護はなくなります。戦後の焼け野原から復興するためには「保護政策」が必要でしたが、もう戦後57年もたちました。保護行政は終わりました。その象徴的なことが来年4月の「大店法」の廃止であり、金融ビッグバンによる資金調達の自由化です。
 では中小企業が世界に通用する競争力をつけるにはどうしたらよいのでしょうか。それを私は2つのキーワードで表したいと思います。つまり「情報化」と「共同化」です。
 「情報化」というとすぐインターネットだ、電子メールだという話になりますが、その前に、まず自社の業務の合理化をすることが第一ステップです。業務の合理化がスピードアップにつながり、管理を高めてくれます。
 そこではじめて、経営に必要な情報をコンピュータで集めようという話になります。どの地区では何が売れているか、どこがもっとも品質がよい原料材料を提供してくれるか。どこが販路として魅力があるか。そのような営業上の情報力をつけることが戦略的な経営をするために必要です。
 幸い最近のパソコンブームのおかげで低価格でコンピュータ化ができるようになりました。技術の進んだパソコンは一式50万円くらいでハードウェア(機器)が入手できます。ソフトウェアも会計処理や給与計算、販売管理など市販のパッケージを利用すれば安く、早く、簡単に業務の合理化ができます。インターネットなどは次のステップで十分です。世界的な情報収集をしてもそれを活かせる経営体質になっていないと、情報が役に立ちません。
 その意味で、業務を見直し再設計することが、まず情報化の第一目的にならなければなりません。そして、このような情報化を進めた中小企業が集まって、力を合わせることで、大企業に対抗できる力を持つことができるようになります。これが「共同化」です。
 中小企業の場合、規模が小さいので資金も足りない、専門家を確保できない、情報が入手できないなどの悩みがありますが、企業が連携を深めてお互いの優れた力を持ち寄れば、このような問題が解決できます。
 共同化には、共同仕入、共同物流、共同情報センターなどのように機能面で共同化するものと、共同団地、卸団地、商業集積(商店街、ショッピングセンター)など立地面での共同化があります。
 一方、メーカー、卸売業、小売業の取引業務や物流業務を情報化によって効率的に行う方策があります。その中で今もっとも注目をあびているのは、情報システムによる取引データの交換(EDI)です。
 このように「共同化」を進めるためにも「情報化」は不可欠になります。お互いの情報を素早く交換して、処理できる体制を作ることが共同化を成功するための必須条件だからです。
 まず情報化を始めましょう。そこから次の共同化の目標が見えて来るはずです。

バックナンバー集へ戻る