経営環境は、これまでとは非連続的で予測が立てにくく、その意志決定には大きなリスクが伴う変化の時代となってまいりました。このような中で経営新書が氾濫する昨今、先人の教えを心静かに学ぶのも一服の清涼剤ではないでしょうか。
土光先生の思い出
私が今の会社を設立した翌年の昭和45年に、土光敏夫先生の「経営の行動指針」が関係大学から発行されました。当時の先生は臨時行政調査会会長で東芝の社長になってからも家にクーラーさえないような清貧な暮らしで知られておりました。
先生が石川島播磨重工業会長在任のまま東京芝浦電気社長に就任され、周囲のスタッフにこの際新しい社是社訓をつくられたらとの提案に、この変化の激しい時代に固定した物の考え方は許されないこと、そんなスローガンが逆に新しい物の考え方を阻むことを指摘し、つくるなら毎日変る社是社訓をつくれと半ば冗談口をたたかれたようです。その後社内報を通じ「トップ指針抄」として全社員に流しておるものの中から百か条を選んで一冊の本とされたものがこの「経営の行動指針」です
私は今でもこの語録を心の行動指針として大事にしており、先生が発刊に際して「ただ私としては、人間が好きであること、人間の可能性を信ずることにかけては人後におちるものではない」と言われた言葉に、先生の強烈な印象の中に人間としての暖かさを忘れることはできません。
高齢化・高度情報化社会
公的機関からの委託で中高齢者の経営管理科生は今年で20期生を迎えており、教科の中には先生が始めて社長に就任されて社員に要請した「すべてにバイタリティを」、式で現すとバイタリティ(活力)=知力×(意力+体力+速力)で、知力を成果として結束させる行動力のこと等。また期待される社員像としては「変化に挑戦しうる人」であり、変化はいつの世にもあるが、その第一は変化には階層性がある。第二に変化には波及性がある。第三に変化には加速性がある、等々の話を入れております。
急速に進展する高齢化・高度情報化社会等、変化の時代に、いかに人として知的に対応して行くかが重要課題となっている今日、人生に再挑戦される方々のために「秋田版生き生き情報トータルシステム(私案)」づくりが強く望まれるところであります。
日に新たに日々新たなり
百か条の終わりに、先生の座右の銘として「日に新たに、日々に新たなり」が上げられており、これが先生の最大最良の健康法になっているとも言われております。
21世紀は革新スピードの時代と言われるが、私は変化の時代だからこそ「日新」がいかに大切かを教えられ、この経営の行動指針から常に新しい感性と温もりが伝わってくるものを感じており、時間に追われている自分にとっては最良の良薬であります。
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