経営雑感

社団法人秋田青年会議所
 理事長  石川 直人 氏
  (日本SMT(株) 取締役)


 先行きの見えない暗いムードが漂っている日本列島でありますが、私自身、製造業に携わる者として身にしみて景気の閉塞感を味わっている一人であります。この状態は長く続けば続くほど企業の体力を消耗し、更に悪循環を繰り返すのではないかと懸念します。
 確かにこれほど全体がすべて停滞している状態というのは、私自身はもちろん殆どの先輩諸兄も経験した事の無い時代なのでありましょう。しかし、この閉塞感が景気停滞を助長している事も強く感じます。一般消費者は「不景気だから」と言って単価の安いものでなければ見向きもしないし、企業は設備投資を控え、新規の受発注にも慎重にならざるを得ないわけで、政府の景気対策もなかなか即効性は出にくい状況なのだろうと思います。
 ややもすれば経営者の「やる気」さえ殺いでしまうような沈滞ムードの中で、何とか「元気」を出す方法を見つけなければ、いくら潜在能力が高い日本の企業も本当にだめになってしまうのではないでしょうか。
 まず、意識改革から始める必要があると考えます。景気が悪くなっているとは言え、視点を変えれば積極的な事業展開にはむしろプラスの材料も少なくありません。金利が安いのはもちろんですが、景気対策の制度資金もあります。それに原材料だって値上がりどころか安くなってきているものもあり、経費の面で圧縮できるものが増えているのではないでしょうか。無くなるマーケットがあれば新たに誕生しているマーケットもあります。「いつでも、どこでも、だれでも」が作れるものは東南アジアに出ていってしまったかもしれませんが、その反面「今は日本でしか作れないもの」が、新しいマーケットとして次々に誕生している事も事実です。
 積極的にやる事だけが最善の方法ではもちろんありませんが、情報化社会と言われる昨今、ビジネスの世界は確実に様変わりしています。“One and Only”と“Winner is All”と言われ、ライバルとの差別化を図ることや、シェアbPを取ること。そして勝者はひとり勝ちする世の中と言われます。タイミングを逸したときは、既に敗者となっている事があるのです。グローバルな視点で物事を見(診る・観る)、自分自身の体力・技術力を踏まえて、十分なフィージビリティ・スタディを行った上でアクションを起こし、決して卑屈にならず社員に「やる気」と「夢」を与えられる経営者になりたいものだと常に考えている今日この頃であります。
 最後になりますが、この不況は決して自分達に立ちはだかる壁ではないと信じ、時代の変化の中で対応能力を発揮出来ているか否かが明暗を分けているのだ、と弊社では社長方針に掲げています。変化対応能力こそが、21世紀に勝ち残るための唯一の手段として全社員に動機付けをし、活力ある秋田を実現する一助となるべく努力を続けることが、地域に根ざす企業としての義務であり、責任であると自覚し邁進したいと思います。

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