秋田の交通体系は空路・陸路で県内のほとんどの地域が複数の高速交通体系網を利用できるよう着実に整備が進められた。これら高速交通網の整備は首都圏との地域格差をなくし、秋田に多大の恩恵をもたらす反面、商品の物流における経済圏の広がりは、県外企業との競争を余儀なくさせ、更に情報通信の発展に伴い、いつでも、どこでも、誰でも同じ情報の収集が可能となり、情報における地域格差もなくなりつつある。地域経済といえどもグローバルな視野で企業活動を展開することが求められる。高度情報社会では情報収集能力の優劣が企業の発展も地域の発展も大きく左右する。
一方、少子高齢社会へ急速に向かう秋田としては、若者が定着するための条件の整備・高齢社会に対応する新産業の創出・高齢者などの活用による新しい労働力開拓などに力を注いでいくことも必要である。
NTTは情報収集能力の向上の基盤となる情報通信インフラの整備を進めている。県内の市内交換機のディジタル化は100%完了し、ISDN(総合ディジタル通信サービス)の普及にも力を注ぎ、当初10,000回線突破まで約8年要したものが、その後の1年間で20,000回線、そのわずか8ケ月後の平成11年3月には 30,000回線を突破した。
来たるべき高度情報社会の一面はネットワーク社会である。世界がネットワークで結ばれ距離的・時間的概念を超えた地球規模での大量の情報流出入は地域の個性を失わせるとともに、均質化された経済活動が進めば消費後背地を持たない地方の経済活力は停滞を余儀なくされる恐れもある。新しい技術、新しいシステムは常に両刃のやいば的性格を持つわけであるが、オープンで対等なネットワーク上でいかに効果的に情報を収集しその中から、秋田のオリジナリティーを見出すための方途をさぐり、外へ向けて発信して行けるかが地域発展の活路を切り開く大きなキーポイントになると思われる。
秋田には先端技術に挑む高度技術研究所や工業技術センターも整備されている。先ずはこれらの持つ技術やノウハウ・特許等のインテリジェンスを中小企業に開放し産学官の連携を図りながら、中小企業の保有する技術力の高度化や自らの経営資源を生かし更なる付加価値の創造など貧欲に取り組めるよう体制整備を強力に進めることから始めるべきである。
先般、秋田県は「秋田情報ハイウエー構想」を発表し、「情報化先進県秋田」を目指すとしている。「遊・学3000」 のプランも議論が始まっている。秋田としてどのようなオリジナリティーを目指すのか、秋田県をどういう県にしようとするのか、これを有識者やリーダーだけの課題として捉えるのではなく全県民的な議論を巻き起こしコンセンサスを形成していく必要がある。そして、そのオリジナリティーは県内ではなく、県外、日本全国、いや世界に向かって主張できるものであり、県民一人一人が粘り強く、一貫して主張していけるものでなければならない。
インターネットの普及により地域間情報格差がなくなり個々のオリジナリティーが求められる今、県内企業の大多数を占める中小企業がこの議論の中で自己主張し秋田を力強く発信していくことが秋田の明日を切り開くことになると思う。
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