いわゆる「学者」という職業の人間の仕事の一つに自分の研究を論文にして発表するというものがある。いくら優れた研究をしても、その成果を広く公表しなければ意味がないから、研究そのものと同じくらい重要な仕事である。成果を広く公表するためにはその研究に興味を持ってくれそうな読者の多い雑誌に投稿しなければならないから、どこに投稿するかということも重要である。日本にも優秀な研究が多数発表されている、世界的に評価の高い雑誌がいろいろある。
しかし、どうも日本人は日本で発行される雑誌よりも欧米で発行される雑誌に投稿したがる傾向が強い。論文や研究の世界では相変わらず欧米崇拝が健在なのである。身の回りを見回してみると同様なことは至る所に見られる。卑近な例では中央崇拝、東京崇拝とでも呼べる事象がある。地元企業の製品よりも東京に本社を構えた大企業の製品の方を信用したり、いろいろな意味で「中央進出」「東京進出」が地方企業のステータスになっていることである。もちろん、企業活動はお金を持った顧客が多い場所でやらなければ発展は期待できないからこれは理由のないことではない。でも、それが高じると地元の顧客を軽視したり地元需要を逃したりすることにもつながりかねない。
大学も同じである。大学としては一人でも優秀な学生を欲しい。そのためには広く門戸を開き全国から優秀な学生を集めたい。しかし、それが高じて地元の優秀な学生を逃してしまっては何もならない。難しいところである。どの大学を受験するかを決めるのは学生本人とその家族であり、高校の先生の指導の影響も大きい。学生やその家族の方々、高校の先生方が大学について「中央崇拝」を持っているとしたらそれをいかに打破するか。
県庁を初めとする県内の方々の尽力により我が秋田県立大学の施設・設備は全国水準をはるかに凌駕している。教職員も全国から優秀な方々が集まっており、他のどんな大学にも引けを取らないと自負している。これをいかに地元の方々に理解いただき、秋田県立大学の合格者数を地元高校のステータスにするか。全学を挙げて知恵を絞っているところである。
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