タイトル-ビジネスレーダー このコーナーでは、積極的な経営展開を図り市場から評価を得ている企業や、商業者の新たな取り組み、アントレプレナー(起業家)の挑戦などを紹介します。
有限会社  宅配こまち
有限会社  宅配こまち 有限会社  宅配こまち  昨年10月現在、秋田県の65歳以上の高齢者は人口の26.7%。2025年にはおよそ35%に達し、全国一の高齢県になる見込みだ。しかし、ひと口に高齢者といっても、介護が必要な人から独り暮らしの人まで、その健康状態も生活形態も様々で、高齢者を対象とする施設やサービスが充実してきつつあるとはいっても、まだまだ万全の態勢とはいかないのが現状。今後はさらに、多様なニーズに応える高齢者支援ビジネスの成熟が求められるところだ。
 今年4月、秋田市外旭川にオープンした『宅配こまち』は、お弁当や食品・日用品の宅配を通じて在宅高齢者の生活を応援する宅配専門弁当店だ。社長の渡邊さんは、様々な施設で経験を積んできたベテランの栄養士。明るくバイタリティーに溢れたその人柄に誘われるように着々とファンが増えている。
 当社のお弁当は彩りがよく、実に食欲をそそる。栄養士がカロリーや栄養のバランスを考えて作っており、いろいろなものが入っているからだ。食材にもこだわりを持っている。ご飯は秋田市内産のあきたこまち、野菜は周辺地域で採れるものなど、地域のものに徹底。生味噌を使用した味噌汁なども手づくりへのこだわりを感じる。
 メニューは日替わりで朝・昼・夕の3食あるが、1週間のメニュー表から好きな時だけ注文することも可能だ。健康志向の『すこやかこまち膳』と、健康とボリュームの両方を満たす『はつらつこまち膳』が基本の2種類だが、注文を受けた時点で健康状態や嗜好を聞きメニューに反映させるため、個々人に合ったセミオーダー仕様のお弁当になる。
 朝食は夕食と一緒に届けるシステムで、食中毒等を防ぐため、秋田では初めての抗菌仕様の容器を使用。顧客がお弁当を必ず冷蔵庫で保管するよう声かけをして帰るようにしている。また、配達や回収の際は必ず本人との手渡しが原則。会話を楽しみ、温かいうちに美味しく食事して欲しいという思いからだ。そして、実はこれが顧客の安否を知る手段にもなり、離れて暮らす家族からの依頼があれば、安否確認の連絡をするサービスも行っている。
 当社では、お弁当の宅配だけでなく、食料品や日用品の宅配も行っており、自分で料理したい人や買い物が難しい人のニーズにも応えている。また、現在は高齢者がメインだが、実は誰でも利用可能だ。「小さな子供がいて買い物に出られない」「アトピーでも食べられる食材が欲しい」というお母さんや、栄養が偏りがちな単身赴任のお父さんからの注文も大歓迎とのこと。
 渡邊さんは「微力ですが、これまでお世話になってきた地域やお年寄りに恩返しがしたいと思っています。会話の中からニーズを汲み取り、手となり足となって、お年寄りが毎日をより楽しく過ごせるお手伝いがしたいですね」とニッコリ。小さな体でパワー全開。『宅配こまち』のお弁当が美味しいのは、材料や味付けの良さだけでなく、渡邊さんの“愛情と元気”が隠し味になっているからに他ならない。
有限会社  宅配こまち 有限会社  宅配こまち

株式会社ミラビス
有限会社 to be  秋田市新屋の民家、開け放たれた縁側からにぎやかな声が聞こえる。「ア・ラ・ヤでデイ!」は、小規模かつ多機能な通所介護事業施設である。施設では、送迎、健康管理、昼食、リハビリテーション、その他レクリエーション等のサービスを行っているが、最大の特徴は、高齢者、障害者、乳幼児を同じスペースでケアしているという点である。
 経営者でケアマネージャーの花澤さんは、大規模な老人介護施設で勤務していた経験から、「もっと一人一人に合った、画一的でないサービスがしたい」と考え、平成16年8月に開業。同年、秋田県と秋田市が共同で申請した構造改革特区、「秋田デイサービス特区」が認定されたことを受け、指定通所介護事業所で知的障害者、障害児の受け入れが可能になる、特例措置の適用を受けた。
 経営会社の「to be」という名称は、日本語にすると「ある」「いる」「存在する」という意味がある。この名称には、「ある。」こと、それだけで生きる価値は見いだせるという、会社の信条が込められている。最近では、障害者と健常者の垣根を取り払おうというノーマライゼーションの推進が叫ばれているが、障害者間の垣根も取り払ってしまおうという更に原点回帰かつ先進的な考え方が、この施設の運営には反映されている。
有限会社 to be  「ここにいらっしゃる方は、それぞれ必ず得意な何かがあるんです。自分のできることを見せ合ったり、し合ったりすることで、人を喜ばせたり、人の役に立てる実感を得ることができるんです。」という通り、利用者はそれぞれ存分に持ち味を発揮し、「ある。」ことの喜びを感じている様子。本の朗読が得意な方の周りには聴き手が集まり、絵が上手な方はみんなのリクエストに応えて筆を動かす。利用者同士の交流が、ここの商品になっているといった印象だ。
 利用者はほとんどが新屋地区からの通所。住み慣れた地域で、安心してプロのケアが受けられる。施設の建物は築30年の民家。改装の際、あえて残した神棚や欄間など、自宅にいる雰囲気そのものである。その雰囲気も、単に利用者がリラックスできるようにということだけでなく、リハビリテーションやトレーニングへの効果を狙ってのもの。自宅に帰ってもできるようになるには、実際の自宅、家庭に近い環境での練習、訓練が必要ということで、実効性の高いケアが行われている。
有限会社 to be  サービスを提供する側の職員は、利用者と談笑する和やかさの一方で、高いプロ意識を持っている。介護はビジネスであるという認識を持って、商品として耐えうる良質のサービスを提供することが基本。サービスという、目に見えない商品の質を高く維持することは、提供する人間の状態が良ければこそできること、と考え、職員の働きやすさも重要視している。「人を幸せにするには自分が幸せでなくては」と話す花澤さん始め、職員の表情はプロの真剣さと優しさに満ちているように感じられた。
 現在、20名の定員はほぼ満員状態。福祉、介護に関わるニーズの多さ、多様さを日々感じ、自分に合ったケアを望んでいる人や、そのご家族のためにも、2店舗目を計画しているところだそうだ。利用者側が自分に合った介護サービスを、住み慣れた地域内で選択できる、そんな快適な関係が実現するよう、to be の取り組みに期待したい。