「地元の農家に元気になってもらいたかったんですよね」。減反政策などによる地元農家の減収を目の当たりにしてきた池田泰久さんが、農業の活性化のために考えついたのが、秋田県の認定品種である無臭大豆「すずさやか」の卸販売及び「すずさやか」を使用した加工食品の小売販売である。
こうして、平成17年2月、株式会社アグリテクノジャパンを立ち上げた池田さんは、実は、東北屈指の名家「池田家」第16代当主でもある。「代々、地元の発展ばかり願っている」と言う池田さん。「まずは、『すずさやか』の種苗を購入して、「JA秋田おばこ」を通じて地元農家に委託栽培してもらう。こうして収穫された『すずさやか』を当社で加工食品としたり、首都圏の業者に販売するシステムを構築しました。少しは、減反農家の所得確保につながったと思います」。
「すずさやか」の特徴は、大豆特有の青臭さがないこと。従来の大豆粉(大豆加工食品を製造するための粉)は、その青臭さを取り除くため、加熱処理を行っているが、この加熱処理の過程で、ビタミンEなどの酸化しやすい栄養成分が失われてしまっていた。もともと青臭さのない「すずさやか」から製造した大豆粉は、そういった心配がない利点とともに、イソフラボン、サポニンなどの機能成分もそのまま残る特徴がある。従って、美味しさ、そして栄養価を損なわずに、他の食材と混合使用することが可能となり、幅広い調理の可能性を見いだした。
契約農家には、「他の豆系品種から100メートル以上離すこと」を徹底してもらっているという。「『すずさやか』は2%以上の他品種が混入すると青臭さが生じ、その製品価値がなくなってしまうんです。管理には気を遣いっています」と池田さん。今年は、およそ170ヘクタールの畑から約350トンの「すずさやか」を収穫する予定である。
「いわゆるアグリビジネスとしては、まだまだ発展途上です。アグリビジネスが企業として成立するためには、農産物の収穫期ではない冬場にどのような活動をするかだと思います。そこで今、地熱を利用した冬場の野菜栽培について検討しているところです。こうなればもっと農家に喜んでいただけるし、地域の活性化に役立つんですけどね」。
あくまでも、地域貢献にこだわる池田さんが株式会社アグリテクノジャパンを立ち上げて1年が経過した現在、東京の加工食品会社を通じて、ケーキ、アイスクリーム、うどんなどに変身した「すずさやか食品」の試食会を首都圏で開催するなど、全国的な販路確保に奮戦中である。 |
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