タイトル-特集
2006年版  中小企業白書
 今年も中小企業庁より「中小企業白書」が発行されました。2006年版のテーマ分析は「海外経済との関係深化」「国内における人口減少」と、社会全体の動きの中での中小企業を映し出しています。
 第1部では、景況分析として、2005年度の中小企業の動向、第2部、第3部では、テーマ分析として、東アジア経済との関係深化や、少子高齢化・人口減少との関係について分析されています。
 今号「特集」では、2006年版中小企業白書の概要をご説明いたします。
景況分析  第1部 2005年度における中小企業の動向
 国全体の景気が回復する中で、中小企業の景況も改善しているものの、とりわけ小規模企業の景況感には、大企業に比べ回復に遅れが見られる。地域別には東北・中国・四国地方、業種別には建設業・小売業等の非製造業が伸び悩むなどのばらつきが見られ、依然注視が必要。 ■規模別・業種別業況判断DIの推移 ■中小企業の地域別業況判断DIの推移
 開業率は上向きに転じる一方、廃業率も増加し、その差は拡大している。その結果、中小企業数は年間12万社ずつ減っており、現在は約430万社。近年の廃業率上昇の大きな要因は、個人事業主が高齢化し、引退の時期を迎えていることである。高齢者による開業の増加、女性の創業希望者の増加等が目立つ。
■都道府県別開廃業率 ■高齢者による創業の動向 ■女性の創業分野
 中小企業の金融動向については、債務の削減と自己資本の充実に取り組む傾向が続いており、財務体質は強化されてきている。業種別には、運輸・通信業が好調の一方、建設業では改善が遅い。規模別に見ると、小規模企業になるほど資金調達を借入れに依存する傾向があり、改善の足取りが遅い。こうした中、金融機関は、貸出に際して、財務データだけでなく市場動向や技術力の評価にも力を入れる傾向にある。
■資金繰り判断DI ■中小企業向け貸出について金融機関が重要視すること
テーマ分析1 第2部 東アジア経済との関係深化と中小企業の経営環境変化
 中小企業の国際展開については、2001年以降、中国向けのアジア進出が急増傾向にある。東アジア進出時の経常利益状況を見ると、減少傾向が最も多く、生き残りをかけて海外進出を決意している様子。しかし進出後は、ビジネス全体の高度化が実現するなど、単なるコストダウンから市場開拓へと海外進出の目的が変化している。
 国際展開の課題としては、現地マネジメント人材の確保、技術流出、売掛債権の回収困難、部材確保、模倣品問題などが挙げられ、情報提供やアドバイスなどの環境整備が必要である。
■中小製造業のアジア現地法人数 ■東アジア進出の目的(進出時と現在の比較)
テーマ分析2 第3部 少子高齢化・人口減少社会における中小企業
 労働力人口は1999年から減少に転じていたが、総人口も2005年から減少が始まった。労働力人口の減少に伴い、就業者数も減少の一途をたどると予測される。労働力が減少する社会では、1人当たりの生産性を向上させる対策と労働力率を維持・向上させる対策がなされなければ、国内総生産(GDP)が減少し個々の国民の豊かさが損なわれる恐れがある。また、人口が減少することは、同時に「消費者」が減少することであり、国内市場の需要が縮小するとも考えられる。
■就業率が変化した場合の将来の就業者数
 少子高齢化が進むと、労働力の高齢化と技能承継、企業経営者の高齢化と事業承継が大きな課題となってくる。全企業の経営者の平均年齢は2004年時点で58.5歳。55歳以上の経営者が引退したいと考えている年齢の平均は65.1歳。高度成長期に創業した世代が、現在一斉に引退時期を迎えている。引退と同時に自分の代で廃業を検討している経営者のうち、25%は「後継者がいない」ことを理由に挙げている。事業売却(M&A)も有力な選択肢だが、実際に事業売却が可能だと考えている企業は少ない。
■55歳以上経営者の事業承継に対する検討内容
 総人口の減少を食い止めるためには、子どもを産み育てやすい社会の整備が必要であるが、若年者が子どもを産むまでには、安定した雇用・収入、仕事と育児の両立などのハードルが存在する。出産1年前に就労していた女性のうち、出産後も継続就業している女性は3割。7割は出産前後か育児休業後に退職してしまう。そのうち再就職するのは17.8%のみ。
 安定した雇用・収入について、若年者失業率の上昇、フリーター・ニートの増加といった問題があるが、実際には新規学卒者から採用した正社員と、フリーターから採用した正社員間にほとんど差はない。やる気と能力を評価することが重要である。
■少子化の観点から見た若年者及び女性の雇用形態や結婚・出産の状況
 中小企業になるほど、女性1人当たりの子ども数は多く、仕事と育児の両立支援に関して柔軟に対応していることが分かる。一定期間の休業も、大企業に比べ、昇進・昇給等に影響が小さい。企業にとって、仕事と育児の両立を支援することは、人材定着、人材確保、従業員の就業意欲向上等に寄与するものと考えられる。
■従業員規模別に見た正社員1人当たり子ども数と正社員の年齢構成
まとめまとめ
 第1部で見たように、景気回復について、地域や業種によってばらつきがあるが、総じて見れば中小企業でも債務、設備、雇用の「3つの過剰」を克服しつつあることが分かる。
 第2部では、中小企業も海外との市場競合を意識せざるを得ない環境に置かれつつあること、第3部では、人口減少を契機にこれまでうまく行ってきたやり方を見直すチャレンジが求められていることを説明した。
 中小企業は今、一時は永遠に続くかとも思われた出口のない長い「夜」にもようやく別れを告げ、東の空に薄明かりが広がりつつある中に立っている。これまで続いた「我慢の経営」から、「攻めの経営」に転じるチャンスも訪れている。しかし、攻めに転じる前に、現在、我が国の経済社会が直面している「時代の節目」を画する構造変化をよく見極め、それがいかなるリスクとチャンスを伴うものであるかを把握し、今後のチャレンジへと結びつけていくことが必要である。
「2006年版中小企業白書」は、あきた企業活性化センターインフォメーションコーナーで閲覧できます。
〒010-8572秋田市山王3丁目1-1県庁第2庁舎1階 財団法人あきた企業活性化センター
TEL 018-860-5630 FAX 018-864-7440
「2006年版中小企業白書」の内容は中小企業庁のホームページでご覧いただけます。
http://www.chusho.meti.go.jp/pamflet/hakusyo/

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