タイトル-特集
ものづくり中小企業への期待と支援
 平成18年6月13日、「中小企業のものづくり基盤技術の高度化に関する法律」が施行されました。基盤技術を担う中小企業の課題に応え、その活動を強力にサポートしていくもので、それに伴った多様な支援事業策が示されています。
 今号では、新法の元となった中小企業庁の政策(「新産業創造戦略2005」)と新法、支援事業の概要をご紹介します。
1 新産業創造戦略2005の概要
 経済産業省では、平成16年5月に策定された「新産業創造戦略」のフォローアップに加え、今後、重点的に取り組むべき政策の具体化を行うものとして、昨年6月に「新産業創造戦略2005」を策定しています。

1.新産業創造戦略の重点分野の強化

(1) 燃料電池 新たな戦略シナリオとして、定置用の市場拡大、自動車用の技術的課題の解決実現
(2) 情報家電 生活・産業・行政・社会的課題の各分野に競争力・課題解決力をもたらす新たな「プラットフォーム・ビジネス」を情報家電を基軸に展開
(3) ロボット 安全基準策定、需要開拓支援等による、生産工程の一層のロボット化とサービスロボット市場の創成
(4) コンテンツ 日本をアジア全体のコンテンツ制作・流通のハブとする「ソフトパワー」戦略の実現
(5) 健康・福祉 地域発の競争力あるヘルスケア産業群の創造に向けて、関係省庁との連携強化などにより事業環境を整備
(6) 環境・エネルギー 我が国の優れた環境・リサイクル技術の世界市場への展開に向けて、国際的なルール整備、国際標準化等を実施
(7) ビジネス支援 サービスの一層の高度化・多様化の促進に向けて、先進事例の抽出、先導需要の創出
地域独自の戦略に基づく、産学官連携、ブランド等「地域基礎力」の強化、信頼のコミュニティ形成支援

2.重点分野を支える共通産業へ の政策展開

○高度部材・基盤産業
(サポーティングインダストリー)への施策の重点化

先端的新産業分野等の競争力の源泉となる高度部材産業集積と、それを支える多様な技術を担う中小企業を強化するためのプログラムを定め、重点的に支援

3.横断的政策の進化

○人材、技術等の蓄積・進化
競争力を支える人材の育成・活用、出口を見据えた研究開発の促進等
○知的資産重視の「経営」の促進
知的資産重視の経営を行い、それが市場からも適正に評価され、企業価値を高めるメカニズムの構築
また最近は、先端技術分野で国内回帰の動きが活発化し、中小企業にも更なる技術向上が求められています。
●先端技術の国内回帰例
中小企業が持つ基盤技術は、先端産業分野等の川下産業へ広く供給されています。
基盤技術の例
●基盤技術の例 ●基盤技術の例
しかし、ものづくり中小企業は多くの経営課題を抱えており、現在の強みもあと10年経つと失われるおそれがあります。
●先端技術の国内回帰例
2 中小企業のものづくり基盤技術の高度化に関する法律による支援
 前述の現状を踏まえ、日本産業の強みを支えている中小企業のものづくり技術を高度化、強化するため、戦略的・重点的な施策展開として「中小企業のものづくり基盤技術の高度化に関する法律」が策定されました。
中小企業のものづくり基盤技術の高度化に関する法律
中小企業のものづくり基盤技術の高度化に関する法律 中小企業のものづくり基盤技術の高度化に関する法律
中小企業のものづくり基盤技術の高度化に関する法律 中小企業のものづくり基盤技術の高度化に関する法律
 中小企業者がその高度化を図ることが我が国製造業の国際競争力の強化や新たな事業の創出に特に資するものとして、経済産業大臣が特定ものづくり基盤技術を指定し、高度化に関する指針を策定。
めっき技術鋳造技術金属プレス加工技術
鍛造技術熱処理技術切削加工技術
金型技術動力伝達技術位置決め技術
真空の維持技術部材の結合技術組込ソフトウェアに係わる技術
電子部品・デバイスの実装に係わる技術織染加工技術プラスチック成形加工技術(射出成形)
高機能化学合成技術発行に係る技術
 特定ものづくり基盤技術の高度化に取り組み、支援措置を受ける認定中小企業になるには、指針を踏まえた研究開発計画の作成・申請をし、経済産業局から認定を受ける必要があります。
「中小企業のものづくり基盤技術の高度化に関する法律」による
「戦略的基盤技術高度化支援事業」スキーム及び想定スケジュール
「中小企業のものづくり基盤技術の高度化に関する法律」による「戦略的基盤技術高度化支援事業」スキーム及び想定スケジュール 「中小企業のものづくり基盤技術の高度化に関する法律」による「戦略的基盤技術高度化支援事業」スキーム及び想定スケジュール
「中小企業のものづくり基盤技術の高度化に関する法律」による「戦略的基盤技術高度化支援事業」スキーム及び想定スケジュール 「中小企業のものづくり基盤技術の高度化に関する法律」による「戦略的基盤技術高度化支援事業」スキーム及び想定スケジュール
 「平成18年度戦略的基盤技術高度化支援事業」への提案のための研究開発計画の申請は、7月21日に締め切られています。19年度以降に当該事業の支援を受けることを希望する場合、今から研究開発計画を検討し、申請の準備を始めてはいかがでしょうか。「中小企業のものづくり基盤技術の高度化に関する法律」に基づき指定された、高度化を図る特定ものづくり基盤技術についても、前述の17分野の他に今後追加があると考えられます。
3 「中小企業のものづくり基盤技術の高度化に関する法律」等による支援事業内容について
 「中小企業のものづくり基盤技術の高度化に関する法律」等による各種支援措置や環境整備等、様々な支援事業が実施されます。
<認定中小企業への支援措置>
戦略的基盤技術高度化支援事業
 我が国経済を牽引していく産業分野(重要産業分野)の競争力を支える重要基盤技術(鋳造、鍛造、切削、めっき等)の高度化等に向けて、中小企業が行う革新的かつハイリスクな研究開発や、生産プロセスイノベーション等を実現する研究開発を支援する。
【事業内容】
1 川下ユーザーから求められており、かつ、達成が見込まれる技術の方向性・レベル(高技術精度のみならず効率性や環境負荷を軽減する製法等まで含めた技術開発の方向性)に沿った、革新的かつハイリスクな研究開発等を、基盤技術を担う川上中小企業とそのユーザー企業、研究機関等からなる共同研究体において実施する。
2 なお、新法に基づき、重要基盤技術に関する現状と今後の発展の方向性・レベル等に係る高度化戦略を技術別指針として取りまとめる予定であり、本研究開発の実施に当たっては、当該技術高度化戦略の方向性に合致したプロジェクトを採択する予定。

●中小企業信用保険法の特例 ●中小企業投資育成株式会社法の特例 ●特許料等の特例 ●中小企業金融公庫の低利融資

<ものづくり基盤技術高度化のための環境整備>
川上・川下ネットワーク構築支援事業
 基盤技術を担う川上中小企業と、燃料電池や情報家電等の川下産業間の緊密なコミュニケーションを通じた「川上中小企業が行う技術開発の不確実性の低減」「情報の非対称性の解消」を図るため、川上・川下間の連携・摺り合わせをコーディネートする人材の配置や、両者の情報交換の場の創設、マッチング機会の創出など、川上・川下間のネットワーク構築に向けた取り組みを支援する。
【事業内容】
1 川上・川下フォーラムの設置
  中小企業(川上)側と重要産業(川下)側の代表者等で構成された川上・川下間の連携・摺り合わせを促進するフォーラムを構築し、川上・川下間の情報共有、連携の促進に向けた各種方策を検討。
2 川上・川下マッチングの促進
  各フォーラムにおいて以下のような事業を実施。
  ○ジョイント・コーディネータの配置 ○川上・川下交流会の開催 ○販路開拓事業 ○シーズ・ニーズ調査等

※川下中心に構築されるフォーラムの想定例:航空機、情報家電、ロボット 等 ※川上中心に構築されるフォーラムの想定例:めっき技術、鋳造技術、鍛造技術 等
高専等活用中小企業人材育成事業
 経済産業省では、これまでMOT人材や製造現場の中核人材の育成などに取り組んできた。結果、事業全体の戦略マネジメントや、現場の工程管理・生産ラインマネジメントを担う人材については育成が進んできた。
 しかしながら、そういった戦略や生産工程を任され具現化する現場人材(オペレーショナルな人材)の層が薄く、この部分の人材育成を実施することが急務。特に、産業全体のうち、オペレーショナルな部分の多くを担う中堅・中小企業においては、技術革新に対応し戦略を現実に実行できる現場人材の育成が求められている。
 さらに、2007年問題の団塊世代の退職を目前に控え、中小企業にとっては、若手の現場技術者の育成はより切迫した課題となっているが、中堅・中小企業が一企業内で人材教育を行うことは難しいのが実態である。
 一方、充実した施設や実務ノウハウのある講師陣を有する高等工業専門学校等が各地に存在しており、国立高専はすでに独法化を機に産業界との連携を模索している。
 このような二つの動きを結びつけ、地域の高専等を核として、地元中小企業に対する技術教育や技術指導を行う人材育成拠点づくりを推進する。具体的には、国立高専がすでに独法化を機に産業界との連携を図ることを十分意識し、地元企業とのコンソーシアムを構築し、地元企業のネットワークと高専等の設備を組み合わせ、最も効果的かつ効率的な人材育成を目指す。
【事業内容】
 地元企業において必要とされているが、技術が高度でありかつ経験に裏付けられるため座学での習得が難しい技術を対象として、プロジェクト管理機関が地元企業のニーズに沿った技術教育プログラムを開発し、高専等が有する設備を活用して実践教育を施す。
製造中核人材育成事業
 製造現場のベテラン人材の高齢化や技術の高度化・短サイクル化に対応して、製造業の競争力を支える現場「技術」を維持・確保するための実践的な人材育成を、産業界と大学等が一体となって取り組むプロジェクトを実施する。具体的には、地域の産業集積と大学等がコンソーシアムを形成し、産業界のニーズに対応した人材育成プログラムの開発及び実施を行い、製造中核人材を育成する仕組みの確立を図る。
中小企業への計量標準供給基盤強化事業
 中小企業を取り巻く急激な経営環境の変化(系列関係の激変、グローバル市場での競争)の中で、これまで系列関係の中で大企業が中小企業の製品・技術の精度管理を担う状況から、中小企業自らが精度管理を行うとともに、市場に対して製品・技術の精度や信頼性を科学的・客観的に検証・記述していくことが必要とされる状況に変化している。
 こうした状況の中、グローバルなビジネス展開において不可避となる製品・技術の精度に関するトレーサビリティ体系の確立に向け、地域の試験検査機関における計量標準供給基盤の強化を行い、中小企業の自律的な発展・競争基盤を整備する。
【事業内容】
 我が国競争力のベースとも言える中小企業のモノ作り、品質管理等における精度・信頼性を科学的・客観的に検証し、技術や製品のグローバルな市場での競争力強化を支援するため、地域の試験検査機関等(中小企業支援を目的に設立された財団法人や独立行政法人、民間試験検査機関等)を中核としたトレーサビリティの供給、技術移転体制を構築する。
 具体的には、地域の試験検査機関等において、公設試験機関、業界団体、校正機器メーカー等と連携しつつ、地場の中小企業に最適な施設・設備の整備、人材の育成、技術力の向上等の事業を推進するため、必要となる標準器等の購入費や技能の習得のための研修費、施設等の環境整備費等を補助する。
 これにより計量法トレーサビリティ(JCSS)制度に基づく登録事業者としての資格の取得と、地場の中小企業を対象とした校正事業、精度管理(技術移転)事業の立ち上げを支援することが可能となる。
中小企業基盤技術継承支援事業
 基盤技術を有するモノ作り中小企業の技術、技能、ノウハウ等を形式知化・システム化し、モノ作り中小企業の持つ優れた技術等を円滑かつ確実に継承するための基盤を整備する。
【事業内容】
 モノ作り中小企業の加工等生産過程における当該企業の「強み」の核となる優れた技術、技能、ノウハウ等を抽出し、デジタル化・体系化することにより、これまで個別従業員の暗黙知となっていた技術・技能等を蓄積し継承・共有化を可能とするツール(「加工テンプレート」)をIT技術を応用して開発する。また、そのツールにおいて蓄積された情報を活用するとともに、製造工程・設計の効率化・省力化を実現するソフトウェア(「工程、製造設計支援アプリケーション」)を開発する。さらにこれらの成果を中小企業が活用していくためのネットワーク対応型利用システムの開発を行う。
1. 技術・技能の継承・共有化ツール(「加工テンプレート」)の開発
2. 工程、製造設計支援アプリケーションの構築
3. ネットワーク対応型利用システムの開発
中小企業知的財産権保護対策事業
 海外展開を図る我が国中小企業の知的財産権保護を図る観点から、日本貿易振興機構の有する海外ネットワーク(知的財産専門家、現地調査会社等)を活用して、中小企業の個別要望に基づいた知的財産権の侵害状況調査等を実施する。
中小企業知的財産啓発普及事業
 知的財産の活用に課題を有する中小企業に対し、知財の活用ノウハウや問題解決の相談窓口として、全国の商工会・商工会議所をいわゆる「知財駆け込み寺」として整備を行う。併せて、企業経営の中核に知財戦略を据えた企業活動の普及を目的としたセミナーを各地で開催し、中小企業の知財活用を支援する。
【事業内容】
1. 商工会・商工会議所に知財相談窓口を設置
2. 知的財産権保護活用セミナーの開催
3. 知的財産啓発普及マニュアル・ポスター作成

特定研究開発計画の申請、認定等、ものづくり中小企業への支援に関するお問い合わせは下記窓口まで

●中小企業庁経営支援部技術課
〒100-8912 東京都千代田区霞ヶ関1丁目3番1号 経済産業省別館 TEL:03-3501-1816(直通)
URL http://www.chusho.meti.go.jp/
●東北経済産業局地域経済部情報・製造産業課
〒980-8403 宮城県仙台市青葉区本町3-3-1 TEL:022-215-7236(直通)
URL http://www.tohoku.meti.go.jp/

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