ビックあきたvol.302　経営探訪

製品差別化によりシェアを全国に拡大

　浅間製作所が製作した屋外広告物は、現在全国すべての都道府県に存在するという。なぜ、そこまでのシェアを獲得できたのか。「結果的に他社の製品よりも『良い』ものであったということです。他社製品との差別化を試みなければ勝ち抜いていけない。当たり前のことですが。看板の外枠に工夫を凝らしたことが最初の試みです」。外枠の内部にできる限りの空間を設け、スチール部材の使用を極力省くことにより、外枠自体により強度を発生させるとともに、軽量化を実現した。「中空目の字ボックス構造」である。
　また、看板内部照明消費電力の省力化のため、独自のインバーターを開発し、広告物を設置した後のランニングコストの軽減化にも貢献している。このインバーターを看板内部に取り付けることにより、消費電力を従来の３０％以上軽減でき、使用する蛍光灯の寿命も２５％以上アップさせることができるというから驚きである。
　これら独自のアイデアにより、浅間製作所の評判は瞬く間に全国を駆けめぐり、発注が殺到したのである。

受注企業は下請けにあらず

　しかし、発注側からの注文に納得できなかったり、会社のポリシー、あるいは、北林社長のポリシーに反するような仕事を強いられるような注文は迷わずお断りするという。
　「決して『下請企業』とは呼ばないでください。発注する側と受注する側は、常にフィフティーフィフティーの関係であるはずなんです。『下請け』という負い目を振り払ってこちらも言うべきことを言う。互いに納得し、良い仕事をするためには、主張すべきは主張することも必要なことです。下請けに徹すれば経営者としては、ある意味非常に楽ですよ。そうしたいと思わなかった訳ではないけれども、できなかった。性分ですかね。」
　典型的な攻めるタイプの経営者の側面が、言葉の端々からひしひしと伝わってくる。その反面、新しい製品の情報収集に注ぎ込む情熱も生半可なものではない。

新しいことへの意欲的取組み

　従来型の広告物は、外枠にアクリル製の看板を組み込んだものであるが、アクリル製だと、定型サイズの看板の製作にしか対応できず、不定型サイズの看板製作をするためには２枚のアクリル板を継ぎ足す作業が必要となる。
　「フレキシブルフェイスという素材を見つけましてね。これが非常に看板に適しているんですよね」。
　フレキシブルフェイス。もともとテントを作るための生地を改良し、看板用に内部からの照明を透過するようにした素材があるとの情報を得た北林社長は、いち早くフレキシブルフェイスの看板製作に取り組んだ。
　「使ってみると非常に利点が多かったんですよ。まずはどんな長さにも対応できる。そして割れない、値段が安い」。
　さらに、従来のアクリル板だと、看板の文字や図案を切り貼りするという作業から逃れられないが、フレキシブルフェイスは、その面に直接印刷できる利点があり、複雑な配色を求められる注文にも出力機を通して自在に対応できているという。
　今のところ、まだアクリル板の看板のほうが、生産量としては主流ではあるものの、フレキシブルフェイスの看板の生産量が年々多くなってきており、浅間製作所は、全国的にも、この火付け役を担ったわけである。

頑張れ秋田

　失敗を恐れず、常に新しいことに取り組む北林社長は、近年の秋田県経済界の低迷ぶりを嘆く。「何よりも秋田県内の中小企業経営者に言いたい。もっともっと頑張れと。県内だけで商売してもだめなことは当然であり、これからは『外貨』（県外にモノを売ること）を稼ぐことを考えないと。低迷する秋田県内の経済界を一緒に盛り上げていきましょうよ」。
　今年に入って、防犯警備サービス業の大手であるセコム株式会社がフレキシブルフェイス看板の利点と浅間製作所の実績に目を付け、浅間製作所は、セコムが開発する防犯警備ロボットの格納基地の発注を受けた。

　他にそば屋を経営し、休みにはクルーザーで海に出て、魚釣りをする多趣多芸の北林社長は御年５５歳。年齢を聞き間違えたかと思うくらい元気いっぱいである。そのバイタリティーで、低迷する秋田県経済を牽引してもらいたいものだ。

CORPORATION DATA

株式会社浅間製作所

代表取締役　北林　鉄美
<本社>
〒018-2301
山本郡三種町志戸橋字霜谷地22-2
TEL：0185-83-3172
FAX：0185-83-4662

URL http://www.shirakami.or.jp/~asamaco/