「何よりも同じ考えの同志が複数いたことが起業の後押しになりました。」
このように語るのは、この5月18日に冠婚葬祭業「エール株式会社」を立ち上げた川村多恵子さんである。
もともと冠婚葬祭業界の仕事に従事していた川村さんは、「何か商業主義」的なところを感じていたそうだ。
「確かに一般家庭において、誰かが亡くなる、これは想像以上に大変なことだと思います。御遺体を自宅に引き取り、枕経をお願いし、納棺・出棺、火葬、御逮夜、葬儀・告別式、こういった行事を2〜3日で行わなければならないのだから、それはもう慌ただしい。故人を悼む、悲しむ暇もない。御遺族も、とにかく、無事に、滞りなく、これらの行事が執り行われることを最優先に考えてしまう。理解できないわけではないですが、もっと故人を尊び御遺族が中心となる葬儀をプロデュースするべきではないかと考えていたところ、3人の同僚が賛同してくれたのです。」
川村さんが次々に出すアイデアに、賛同した3名の同僚が肉付けをし、ビジネスプランを固めてわずか1ヶ月で起業にこぎつけた。「うまくアイデアを文章化できたので会社設立は順調でしたが、事務的な作業は勝手が分からず戸惑いました」と話す川村さん。できるだけ少ない資金で株式会社設立するため、いわゆる1円創業制度(実際は資本金1万円で創業)を活用した。しかし、遺体を搬送するために必要な運送業の営業許可を申請した際、その許可基準に自己資本比率という項目があり、許可がおりないという苦渋を味わったという。また、各金融機関に運転資金の工面の相談をした際には、行く先々で少ない資本金に対して不安感をもたれたように感じられ、「このままでは社会的な信用が得られない」と実感したそうだ。「アントレプレナーシップを醸成しようとできた1円創業制度なのに、付随する社会環境がまだ整っていないと感じました。運送業の許可が下りないことには業務に支障が出るので、予定外だったのですが、思い切って資本金を1,000万円に増資しました」。
数あるアイデアの一端を紹介すると、お客様の多様なニーズにその都度対応できる体制を保つため、いわゆる自社のセレモニーホールは持たない。「核家族が一般的になり、少子高齢化が進んでいます。他の分野と同様に葬儀も十人十色なんです。葬儀の場所についても、自宅でという人もいれば、ホテルでという人もいます。そういった多様なニーズにきめ細かく対応していきたいので、決まった場所は持たず利用者の希望する場所で葬儀が行える形をとりました」。また、福祉サービスと融合させた形でのビフォーケア、アフターケアを信条とするという。「一人暮らしの方の安否確認システムを構築しておりますし、お墓や遺品の管理などをシステム化して、少子高齢化時代に対応していこうと思っています」。
エール株式会社のユニークな企画はまだまだ尽きないが、そういったサービス内容を逐次情報提供していき、「選択権はお客様」というスタイルを定着させたい考えだ。
川村さんとサポートした3名が中心となって7名のスタッフで立ち上げたエール株式会社は、近く新たに20名を新規雇用し、ユニークで夢のある「オンリーワンの葬儀屋さん」を目指していく。 |
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