経営探訪 秋田秋印運輸株式会社
非効率を打開することで、新しいビジネスを花開かせる運輸業から総合物流企業へ
秋田秋印運輸株式会社 秋田秋印運輸株式会社 秋田秋印運輸株式会社
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青果物輸送からのスタート
 秋田秋印運輸は、全国と当時の秋田市中央卸売市場間を、青果物を中心に配送する業務をきっかけに、現社長の三浦善美氏が昭和40年に創業した企業である。昭和51年に株式会社化して以降、青果物、米などの食料品輸送を機軸に、着々と事業を拡大させ成長を続けてきた。
倉庫業への飛躍
秋田秋印運輸株式会社 平成10年頃まで、「秋田県の米の流通には非効率な部分があった」。秋田県には、米の一大産地でありながら、県内で収穫した米の全量を保管するだけの倉庫がなかったのである。そのため、袋詰めや等級分けの作業が終わると、県外の倉庫に回してしまうことも多く、最終的な配送先が決まったときには、県外の運輸業者が秋田県産米を一大消費地に長距離輸送するという実態もあったそうだ。同社の主な荷主である生産団体や農業関係団体の倉庫は、生産品を生産者から効率良く回収するという役割が大きく、単体では消費地までの物流に戦略的に取り組むことは難しかった。
 そこで、「産地秋田から消費地にどのように生産品を届けるか、戦略的に取り組むことができる倉庫が必要では」と感じた同社は、全国農業協同組合連合会(JA全農)で流通や倉庫建設に携わった経験のある三浦征善専務が中心となり、物流拠点となるような定温倉庫の建設に取り組み、平成13年に秋田北ICそばに「定温・冷蔵物流センター」と営業所を完成させる。「荷主の理解、資金調達、倉庫業の許可申請、用地の確保などに同時進行で取り組まなければならない。しかも、どれ一つとして欠けてはならない。特に用地の確保は苦労しました」と三浦専務は笑って話してくれた。平成12年度に施行された「中小企業経営革新支援法」に基づく知事の承認を受けたことも、このセンターの建設を後押しした。現在、定温倉庫の中には米や大豆がびっしりと積まれており、その光景は壮観でさえある。また、県内では数少ない冷菓・冷凍食品を中心とした冷蔵倉庫6部屋も、フル稼働状態である。
秋田秋印運輸株式会社
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定温・定湿物流センター完成!
 そして平成18年9月、潟上市昭和の昭和工業団地に250坪の倉庫を8部屋有する「定温・定湿物流センター」を完成させた。ここの特徴は、温度を一定に保つだけでなく湿度もコンピュータで一定に管理できるという点である。予定する主な荷は米と大豆。品質を保持する上で、湿度という要素はないがしろにできない。
 倉庫の建設は、建設業者に丸ごと依頼できるようなものではないそうだ。倉庫の設計からフォークリフトのオーダーまで、自社で数字を出して発注したのだそうだ。「倉庫に入れるものは何なのか、それを何段に積んで保管するのか、そのためにはどんな大きさのパレット(荷物を載せてフォークリフトで運ぶための板)が必要なのか、そのパレットを倉庫内で効率よく積むためにはどんな規格のフォークリフトが必要か。倉庫内の通路の幅や、出入り口の高さ、フォークリフトのフォークの厚さ、パレットの上板と下板の間隔など、全部が関係している。試験を繰り返して、最も効率のいい数字を計算しました」。取材時、まだ何も入っていない倉庫の脇でフォークリフトのフォークを削っていた作業が、それを物語っていた。
 「ただ保管するだけなら誰でも、どこでもできる。荷主の要求に応え、食品の品質を保持し徹底した管理を行うことが、当社に期待されていること」と専務は話す。食品を扱う上では、運輸業や倉庫業も、食品の生産者、卸売業や小売業と同様の社会的責任があるのではないか。安全な食品が期待される近年、安全な保管、安全な流通も同じ期待を背負っているのだ。その一助にもなる取り組みとして、荷主がウェブ上で倉庫内の在庫管理を行えるシステムの開発を検討中という。
 「地域が何に困っているのか。自社がどうやってそれに応えられるかを考え実践することで社会貢献する。これは我が社の経営理念でもあります」。新しい物流センターの建設や、これからの展望について話す専務のしっかりとした言葉から、社会的責任を十分に意識した、新しい物流の姿が見えたようだった。
物流の総合プロデューサー
 最近は、運輸、倉庫と取り組んできたノウハウを活かし、物流全般に関するコンサルタント業務も行なっている。顧客の物流における問題点を分析し、対応策の企画・提案、実施サポートを行なう。顧客の物流の戦略拠点として、「物流最適化」サービスを提供している。
 また、三浦専務は同社とは別に、東北の倉庫業経営に携わる若手数名と、株式会社ロジリンクスの経営にも取り組んでいる。東北地方の荷主と倉庫のマッチングを行なうことがこの会社の主要事業である。商品の保管スペースを探す荷主と、効率良く倉庫スペースを稼動させたい倉庫主の仲介業、いわば倉庫専門の不動産屋さんだ。

 非効率こそ、チャンス。課題を解決し、顧客、地域に喜びを生み出す秋田秋印運輸。今後は、「所有する高い物流ノウハウを広めていきたい」と話す専務。物流から、地域振興に貢献してくれるに違いない。

CORPORATION DATA
秋田秋印運輸株式会社
代表取締役社長 三浦 善美
<本社営業所>
〒010-0082
秋田市外旭川字待合28 (秋田市中央卸売市場内)
TEL:018-869-5131 FAX:018-868-4794
URL http://www.akijirushiunyu.co.jp/