雪国のビルやマンションでは、冬期間マイナス気温が続くと屋上に積もった雪が階下の部屋の暖房で溶け出し、排水管を通り排水される。ところが、排水管を流れる水が外気温の影響を受け凍結して、排水管を詰まらせ管を破損させたり、屋上に溜まった水の影響で漏水事故が発生することがある。これに対し従来の凍結防止策は、屋上の排水口から紐状のニクロム線加熱型ヒーターを排水管の一番下まで通し、水の流れを確保するというのが一般的であった。しかし、この方法では漏電・断線などのトラブルが発生しやすいほか、屋上にサーモスタットボックスを設置する必要があったり、排水管の中にニクロム線を通すため、枯葉やゴミが詰まったり、高いビルほど設置費や電力費などの負担も増すなど、課題も多かったという。
そこで登場したのが、自己温度制御型ヒーター「ほあんかん」である。「ほあんかん」は、排水管最下部だけを覆う形で取り付けるヒーターで、排水管の凍結が最初に発生する箇所を凍らせないというこれまでの凍結防止策の常識を覆す、画期的な商品である。従来の対策に比べ故障がほとんど無く、耐久性に優れ、消費電力を抑えた優れものが完成した。 |
吉田社長が長年排水管凍結や漏水修理を経験してきた中で、いつも一番下の排水口とその周辺だけが凍り付き、そこから上は凍っていないことに気づき、ならば最初に凍る部分だけを暖めてみようというところが商品開発のきっかけになった。完成した商品は、県内各地での実験や大学との共同研究による実証を繰り返し、凍結防止効果を確認。平成16年から本格的に販売を開始した。最近は大手ゼネコンの建設する建築物にも採用されるなど、今年に入り既に350台を設置。県内外の大型店やホテル、病院、工場など順調に販路を拡大している。海外からも面白い商品と関心を寄せられており、海外取引にも興味を示しているところである。
また、関連商品として開発した折板屋根用つらら防止機能付き雨どい「オリコー3」も注目を集めている。この商品は、「ほあんかん」の熱を利用するなどして大型の建物などに使用される凸凹上の折半屋根のつらら発生を防止するもので、平成17年1月から平成18年3月に実証実験を行いその効果を確認。大型のつらら落下による事故や建物破損に備えようとする県内大型店に設置されているほか、県内外の新店舗にも採用されるなど、こちらも出足は好調だ。
「当社の本業は防水工事です。建物の劣化は水の影響が大きく、汚れや破損、錆びなどは、必ず水のトラブルが影響しています」。吉田社長は、「美観を維持しながら建物を長持ちさせるため、原因調査を重視し建築物に最適の改修工事を提案する、それが当社の役割」という基本姿勢を崩さず、さらなる商品開発に向け取り組んでいる。 |
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