タイトル-経営さぷりメント
定款を見直して会社を元気にしよう! 行政書士 藤原 昇
1.会社の元気は定款の見直しから
 平成18年5月1日に施行された会社法は、資本金制度をなくして起業・創業を容易にしました。他方、あまり注目されていませんが、既存の会社でも役立つことがたくさんあります。
 特に株式会社については、選択の自由を増やし定款自治の拡大をすすめています。定款を見直す(変更する)ことで、実態に合った会社のあり方が実現できるようになりました。そこで、定款の見直しから様々な問題を発見し、その解決を考えることが会社を元気にするきっかけになります。
 会社を元気にする仕掛けの宝庫、会社法の一部をご紹介します。
2.今度の定時株主総会で定款の見直しを
 株式の全部について譲渡制限がある株式会社を非公開会社といい、上場会社を除くほとんどが非公開会社です。非公開会社では、原則、取締役2年、監査役4年の任期を、定款の定めで各々10年に伸長できます。定時株主総会の終結まで任期のある役員の任期伸長は、その定時株主総会で任期伸長の定款変更決議をすれば足り、役員変更の登記は不要です。任期を10年にすると、2年に1回の登記が10年に1回で足ります。取締役の任期を監査役に合わせると、登記は4年に1回で済みます。建設業等の許認可会社では、任期を許認可の更新期間の5年にすることも考えられます。
 また、旧商法で設立された既存の株式会社は、株主総会、3人以上の取締役、取締役会、監査役が必要な機関でした。しかし、会社法では、株主総会と取締役1人だけが必要で、取締役会や監査役の設置は任意です。しかも、取締役1人でも代表取締役の登記ができます。会社の規模、対外的な信用等から取締役会や監査役が不要であれば、登記の費用はかかりますが、定款を変更してそれらを廃止することができます。
 今度の定時株主総会で、役員の任期も含め定款の見直しを進めるのが良いと思います。決算の承認とともに、会社法に適合させる定款の整備を準備しておくには、ちょうど良い時期です。なお、どの既存会社も会社法で決算書類の様式が変更になります。
3.異業種交流事業をすすめる
 既存の株式会社、特例有限会社、合資・合名会社で異業種交流は意外かもしれませんが、実はそうではありません。非公開会社と特例有限会社では、定款に定めると株主ごとに議決権や配当で異なる取り扱いができます。合資・合名会社でも同様のことができます。
 新たな事業形態としてLLP(有限責任事業組合)やLLC(合同会社)の利点が、盛んに言われています。しかし、既存会社でも他の共同事業者に議決権のない株式を譲渡する等、議決権や配当を工夫すると、経営権はそのままに既存事業の強化、共同のブランドによる商品販売、異業種の組み合わせによる新規事業等が可能になります。
会社法を活用することで、事業承継がしやすくなります。
4.増資や資金調達を考える
 株式会社、特例有限会社においては、社長個人の会社への貸付金を現物出資して増資する規制が緩和されました。増資は会社の信用を高め、社長の相続税対策にも有効です。
 また、会社の種類にかかわらず全ての会社で社債が発行できます。私募債の発行が容易になり、資金調達の有効な方法の一つとなります。
5.事業承継を考える
 非公開会社が株主ごとに議決権等で異なる取り扱いができるのは、1人株主にも適用されます。特例有限会社も同様で、事業承継にたいへん便宜です。
 たとえば、1人株主Aに対して推定相続人B、C、Dがいます。Bが事業承継に最適なので、AはBに会社経営のために全株式を相続させたいと考えています。しかし、A個人の株式以外の財産がC、Dの法定相続分に著しく足りず、C、Dに不公平な相続になる場合があります。その場合、Aの株式をC、Dの相続分に相当する分、議決権のない株式として相続させることができます。C、Dには、議決権はありませんが配当を受ける権利はあり、妥当な遺産の分割方法の指定が可能となります(相続税は考慮していません)。手続きとしては、株主総会で定款を変更し、会社が株主名簿にC、Dには議決権がない旨を記載します。Aは、議決権のある株式をBに、議決権のない株式をC、Dに相続させる遺言をします。相続後の対策として、相続で会社にとって好ましくない者が株主になるのを防ぐため、定款に、会社が相続人に対して株式の売渡請求権があると規定することが可能です。
 会社法は、非公開会社の場合には、譲渡以外の相続等で株式を取得する者が現れ、株式が分散して会社経営が不安定になる心配をなくすような配慮をしています。
6.会社、人生のかかりつけ行政書士として
 秋田県では景気回復の実感がほとんどなく、既存の商店街は寂れています。人口減少と少子高齢化の先進県であり、公共工事は大幅な減少傾向にあります。これを前提に議論すると、先行きに明確な答えが見つけにくいか、または良い答えがないということが様々な現象に共通して起こります。そのため、逆に、10年、20年のスパンで会社のあり方を考え、どの事業をどのように行い、どう利益を上げるか、戦略的な思考で会社を元気にする必要がますます高まってくると思います。
 行政書士は、株主総会議事録作成、定款作成や変更、遺言書の文案作成の助言等、できることはささやかですが、会社や人生のたいていのことに深いかかわりがあります。
 皆様の身近で便利なかかりつけの相談相手として、あるいはセカンドオピニオンとして、他の専門家とともに行政書士を利用していただければ幸いです。