タイトル-ビジネスレーダー このコーナーでは、積極的な経営展開を図り市場から評価を得ている企業や、商業者の新たな取り組み、アントレプレナー(起業家)の挑戦などを紹介します。

有限会社 エンカレッジ
有限会社 エンカレッジ  赤い文字で「Ag」と書かれた表紙を、手に取ったことがある方も多いのではないだろうか。秋田県内を中心に隔月20日、4万部を発行している、「お父さんの生活応援誌『Agエイジー』」。編集長の渋谷明美さんは、「お父さんという存在が好き」という気持ちと、「秋田を元気にしたい」という情熱から平成16年11月に有限会社エンカレッジを立ち上げ、フリーペーパー「Ag」の発行を開始した。誌名の元素記号には、銀のように渋い輝きを放つ世代に読んで欲しいという願いと、Akita、gracious(優雅、上品、魅力ある)という意味が込められている。県内外で活躍する魅力ある人や、仕事に役立つデータやツールの紹介、車などの趣味や暮らしの情報まで、毎号テーマを変えながら幅広い情報を盛り込んでいる。
 渋谷さんは大学卒業後、東京の(株)リクルートに就職し、結婚後は夫の父親が経営する印刷会社を手伝った。営業として充実した経歴を積んでいたが、授かった一男一女が幼いうちに突然夫が他界し、生まれ育った秋田に戻ってきた。子供も手がかからなくなってきた数年前、有限会社 エンカレッジ思い出したかのように「商売がしたい」という性分が動き出し、義父に「秋田営業所をやらせて」と頼んだという。しかし、義父から「自分で会社を立ち上げろ。一国一城の主ほど、面白いものはない」と叱咤され、不安でいっぱいではあったが自分で一から始めてみようと決意したそうだ。あきた企業活性化センターで創業支援、企業支援にあたっている同級生が親身になって相談に乗ってくれたことも、創業を大いに助けてくれたという。
 フリーペーパーの発行は並大抵の作業ではない。毎号、広告主を探して県内外を奔走し、新しい切り口の企画を上げ、きめ細かい取材を行い、記事を書く。1ページずつ、1コマずつ、白い紙に価値をデザインしていく。「締め切り前になってもページが埋まらずバタバタやっていると、突然「うちの情報を載せて」ってお電話をいただいたり、なんだか奇跡みたいに毎号発行までたどり着くんです」と渋谷さんは笑う。日々様々な人と出会える場所に足を運び、素直に耳を傾けることを、実に軽快に如才なくやっている。誌面の品質維持はもちろん、そんな日常の交流に心を配っていることが助け船を呼ぶのだろう。「少しずつではありますが皆様にお会いできたつながりのお陰様です」。
有限会社 エンカレッジ 「記事や広告を見た方が「あ、おもしろそう」と感じ、行動を起こしてくれるような、人と仕事を育てる媒体として「Ag」を発行していけたらと思います。発行を継続することが一番。読んでくださる方、広告を出してくださる企業様、一緒に「Ag」を作ってくれるスタッフ、「Ag」を愛してくれるすべての方の思い一つ一つを大切にすることが、つながる媒体、残る媒体を作ることになると信じています」。
 「Ag」を愛し、「結果は後からついてくると信じることができる」スタッフと、共に汗をかくことを楽しんでいるようだ。一人一人のしっかりとした粒が、連携して一層の効果を生み出すという「納豆組織論」なるものも披露してくれた。今後は、渋谷さんが現在社長業と兼任している営業を専任で任せられる人材を見つけ、より丁寧な営業、誌面づくりに邁進したいそうだ。
 「Ag」は、県内外の理美容店、医療機関、小売店や飲食店、日経新聞の折り込みなど、あらゆるところで手に取ることができる。ファンも着実に増えているそうだ。見つけた方は、仕事のヒント、生活の潤滑油を探しにページをめくってみては。
 縁を運び、縁で成り立つエンカレッジは、秋田の元気のために進化し続ける企業を目指している。