表計算ソフトを使ったNPVと期待値の算出と、それらを踏まえたIT投資効果の考え方をご紹介します。 【NPVとは】 net present valueの略で、正味現在価値または純現在価値と訳すことができる。 将来のキャッシュ・インフロー(現金流入)の現在価値から、投資であるキャッシュ・アウトフロー(現金流出)の現在価値を差し引いた正味の金額。NPVの値が大きいほど経済価値が大きく、NPVがマイナスであれば採算が得られないことを示す。
【問】初期投資100、年間の保守費用等の増加が8のIT投資が、5年間で回収できる期待収益は? ■総投資費用(100+8×5)÷期間(5)=28 単純に計算すると28で良いような気もしますがそれで良いでしょうか?表1を見るとNPVの計がマイナスとなっています。このNPVは「現在価値」という値で以下の計算式によって算出されます。 NPV=(キャッシュフロー)÷((1+金利)^(期間))
 ■この数式は将来のお金の価値を現在の価値に修正する為に用いられます。金利は自社の長期借入にかかる利息等を適用します。(ここでは5%としました)ここで表計算によるNPVの計算で適切な期待収益は31以上が必要になることがわかります。(表2)

【問】顧客データベースが破損した場合、業務停止による損失が100見込まれる。初期投資20、年間保守費用2のバックアップシステムは適切か? ■業務が停止してしまうような大きなリスクをかかえて経営を続けることは、できる限り無くしたいところですが、値段が様々なIT導入の提案をどのように解釈するかは難しい問題です。ここでは、例として以下のように考えてみます。 データベースの破損確率5%/年 リスク回避効果(期待値)=100×5%=5 ■結果を表3に示しました。NPVがマイナスになっていますので、提案に対しもっと安価な代替案を求めることが必要となりそうです。ところで、時間の経過によって物は破損しやすくなりますので、破損確率を年+1%上昇すると仮定した場合結果はどうなるでしょうか?表4ではNPVがプラスになります。このようにリスクシナリオをどのように解釈するかが投資判断には重要です。


■IT投資を検討する場合、導入後の様々な企業変化を想定・検討しなければなりませんが、上記の設問においても、“収益”や“効果”は推定値にすぎないことがお分かりいただけると思います。導入前の効果測定や検討は無論のこと、導入後の状況のフォローをすることが最も大切です。
 ■投資の優先順位については、代表的なものは以下のようになります。リース満了だから…という前に全社の状況を一度確認してみてはいかがでしょうか。 1)現状の基幹業務において、陳腐化等により業務停滞の可能性が極めて高いもの 2)営業⇒生産・調達⇒納品等の全社プロセスにおいて、最も生産性の低いフローを内在する工程 |