経営探訪
連絡先:有限責任事業組合
秋田スギ夢工房

株式会社小野建築研究所
所在地:
秋田市旭北錦町3番14号
TEL.018-888-4551
FAX.018-888-4552
E-メール
ono@d-cm.co.jp

 本県は、日本一のスギ人工林面積と蓄積量を持っている。しかしながら、スギの価格は安価な輸入外材に押されて長らく低迷したままである。この間に森林所有者の経営意欲は大きく減退し、間伐などの手入れの行き届かない荒廃森林の増加という結果になって現れている。
 こうした現状を打破するための手法の一つとして、木材を利活用する建設業と林業・木材産業関係者が、有限責任事業組合(略称:LLP)を設立し新たな事業モデルを展開している。この有限責任事業組合「秋田スギ夢工房」の代表組合員を務めている 那波 宗久氏 にお話を伺った。

 私たちは、平成18年9月に、住宅建築に関わる11社で「秋田スギの新しい生産システムの構築と森林再生」をコンセプトに「有限責任事業組合 秋田スギ夢工房」を立ち上げました。具体的には、「建設業と林業・木材産業の連携」による事業展開を通じて森林再生につなげようということです。
 コンセプトからすれば、NPO活動のように思われますが、NPOが非営利組織であることに対し、「有限責任事業組合」は非営利組織ではありませんし、収益は組合の運営費など最小限を確保すればよいということもあり、営利を目的とする株式会社や有限会社とも異なります。私たちの活動内容にうまく合致した制度です。
 組合の事業内容の詳細については後に触れることにして、この「有限責任事業組合」についてもう少し詳しく説明しますと、経済産業省が、創業を促し、企業同士のジョイント、ベンチャーや専門的な能力を持つ人材の共同事業を振興するために2005年度に制定した「有限責任事業組合契約に関する法律」によって設立が可能になった新たな事業体で、リミテッド・ライアビリティ・パートナーシップ(略称:LLP)と呼ばれています。このLLPは、「法人課税が適用されない」、「取締役を置かなくても良い」、「内部組織に柔軟性を持つことが出来、細部取決がかなり自由に出来る」、「組合としての収益を組合員で利用状況に応じて分配することが出来る」などの運営上のメリットがあります。
 また、仲間意識で協調してやっていける点もメリットとしては大きいです。設立に際しても、発起人会に相当する事務局会議を開催してから3ヶ月程度の短期間で出来てしまいました。
 そこで、いよいよ私たちの組合構成と事業展開の仕組みと内容について説明いたします。
 



 
 住宅建築に関わる11社で設立したと申し上げましたが、森林所有者や製材業者から専門工事業者や建設資材業者、設計・建設コンサルタントまでと、建設に関わる業者から構成されており、秋田スギを活用した住宅などの建築が第一の事業内容になっています。しかし、それはあくまでも手段であって、組合の目的は、連携(上図「業務の流れ」参照)の中で従来の木材流通システムを見直し、コスト削減とコストの透明化を高め、森林所有者へ適正な利益を還元し林家の経営安定につなげ、森林荒廃の防止、さらに森林再生・秋田スギの安定供給つながる循環社会を目指すということです。
 このほかの事業としては、林業再生ビジネス・コンサルティングや秋田スギに関する調査研究、秋田スギを活用した公共施設の建設など幅広い内容になっています。これらも先に述べたことと同じで、あくまでも目的を達成するための手段と捉えています。
 ところで、この秋田スギ夢工房のビジネスモデルではマネジメントが最も重要になります。設計段階から建築までの施工管理はもちろんのこと、原木価格や各種工事価格の決定も担う川上(林業)と川下(住宅建築)に精通した木材コーディネータという大きな役割があるからです。その意味で、CM方式(コンストラクション・マネジメント:建設プロジェクト全体を中立的に調整し円滑に運営管理する方式)で定評のある小野建築研究所の小野泰太郎社長が、実質的に中心になっていてくれていることが強みになっています。
 いずれにしても、有限責任事業組合では既存の各社のモチベーションを最大限に活用していくためにも、組合としての収益は最小限でよいので、大きなコスト削減が可能なのです。
 更に申し上げれば、施主さんにとっても大きなメリットがあります。施主さんが気に入った又は指定した山の、更に立木を選んで建築材として使用することも出来るということです。そして、当然のように、その建築される住宅ではコスト削減分が還元される形で建築費が安くなるということです。
 私たちの本格的な活動は今年に入ってから開始したのですが、個人住宅の建築では、さっそく2棟の着工が決まりました。施主さんに対しては、素性のわかる良質な木材を使用した格安で安心な住宅を提供でき、個々の組合員に対しては、施工経費を幾らか多く還元できるものと確信しております。
 どうか、多くの皆様に、私たちの「有限責任事業組合(略称:LLP)秋田スギ夢工房」の活動をご理解していただき、応援を賜りたいと思います。
(2007年6月 vol.311)