タイトル-経営さぷりメント



経営指針を成文化し、実践していますか[学びあいながら経営理念・経営方針・経営計画をつくり実践しましょう]



秋田県中小企業家同友会 事務局長 武田佳朗

 
1. 明日のわが社は大丈夫か?
 現在、47都道府県に存在する各県の中小企業家同友会では、経営理念を含む経営指針の成文化と実践の運動に取り組んでいます。
 中小企業の経営環境は依然として不安定であり、多くの中小企業は数年後の自社の安定的な存在さえ確信できない状態にあります。売上げが伸びない、落ちている。仕事はあるが、必要経費さえもまかなえないほどの安値競争になっている。又、仕入れ元の大手企業がどんどん値上げしてくるが、自社の売り先には転嫁できない。社員の採用ができない。後継者がいないので金融機関の姿勢が変わってきた。等々、経営者の悩みは募るばかりです。
 この状況を打ち破るために、経営指針(経営理念・経営方針(戦略)・経営計画)が求められています。激しい変化の中でも、揺らがない企業経営を実現することをめざして、全国の会員企業が経営指針づくりと実践の運動に取り組んでいるところです。

2. 経営指針とは?〜経営理念・経営方針・経営計画〜
 中小企業家同友会では「経営指針」の内容を、「経営理念」「経営方針(戦略)」「経営計画」の三つが合わせられたものとして考えています。同友会の経営指針づくりの特色としては、経営者同士がお互いに無給の社外取締役になったつもりで、自分の会社のことのように真剣に考え助言や意見交換をし合っていること、科学性、社会性、人間性というモノサシで各社の経営指針を考えていることです。そして、端的に言うならば、経営指針によって、自立型企業と、それを支える自主的社員を育てることをめざしています。
 もちろん、各業界や各企業ごとに異なる歴史や経営環境の中で、実際に生かせる経営の指針になっていなくてはなりません。様々な問題に囲まれている現実の経営の中で、その企業の現在の経営上の問題を解決する方向に向かわせ、将来の展望を切り開く経営指針を創り出すために真剣に知恵を集めているのです。

3. 科学性、社会性、人間性と「21世紀型企業像」
 中小企業家同友会では、経営指針に求められる科学性について、社会や経済の大きな流れや経営環境の変化をできる限り客観的に把握することと考えています。また、社会性については、企業が社会の重要な構成要素であることを自覚し、消費者、地域社会、顧客、仕入先、行政、金融機関などに対する社会的な責任を全うし、地域社会から信頼される企業づくりをめざすこと。人間性については、人間尊重の経営をすすめることと考えます。社員を単に利益追求の手段として見るのではなく、最も信頼し合える頼もしいパートナーとして見ること。また、社員の人生と人格を尊重し、その潜在能力をフルに発揮できる経営をめざすことです。
 中小企業家同友会では、全国の数多くの会員経営者の体験から、経営指針は、経営者が科学性、社会性、人間性に基づいて経営理念を真に深め自分のものにした時に初めて感動をもって社員に伝えることができるようになり、その企業の文化として育つことができると考えています。
 また、めざすべき企業像として「21世紀型企業像」を、次のように提唱しています。
21世紀型企業像
1 自社の存在意義をあらためて問い直すと共に、社会的使命に燃えて事業活動を行い、国民と地域からの信頼や期待に高い水準で応えられる企業
2 社員の創意や自主性が十分に発揮できる社風と理念が確立され、労使が共に育ちあい、高まりあいの意欲に燃え、活力に満ちた豊かな人間集団としての企業
(中小企業家同友会全国協議会 第25回総会 1993年)

4. 誰のため、何のための経営なのか?
 経営学の世界でも、最近は、企業経営の目的について新しい議論が生まれていると耳にしています。多くの経営の教科書には、「株主のための利潤の(長期的)最大化」が、企業経営の目的であり動機であると書かれているようです。しかし、現実に存在する多くの中小企業においては、経営者や所有者の私的財産を増加させるためという教科書上の目的とは別の目的が追求されている場合があることに気づかされます。
 いわゆる地元の中小企業は、その地域の経済や多くの人々の暮らしにとって不可分の存在であり、「自分だけが儲かる」ようなことは、例えやりたいと考えてもできない経営の実態や現実になっているのではないでしょうか。秋田県で生きている企業の場合は、秋田県内の地域社会と共に生き、共に繁栄する道以外は無いということが、「宿命」のように考えられるのですが、いかがでしょうか。
 そのような中小企業にとって、経営理念や経営の目的を考える時には、地域社会や、その支え手としての他の地元企業との関係も大変重要なものになってくると思われるのです。

5. あなたの会社でも、経営指針を見直し、成文化しませんか?
 様々な経営課題に追われる毎日で、このまま進んで行って確かな未来があるのだろうかと不安になるという時には、まず、経営指針を成文化すること、あるいは、再検討してみることをおすすめします。
 成文化された経営指針は、社員のみなさんにとって、また、取引先やお客様にとって、さらには、経営者自身にとって文字通りの指針になるものです。たとえば、社内だけであっても、経営指針が共通の認識となり共通の目標となっていけば大きな変化が生まれてくるにちがいありません。
 最初から優れた経営指針をまとめるのは難しいかもしれませんが、経営に関する大切な考え方や信条に基づいて組み立てた方針や計画などが明確になっていれば、それだけでも必ず役に立つ時が来るものです。
 現実の経営で、突然のように発生してくる問題に悩まれた時には、秋田県中小企業家同友会にも、同じ悩みを抱えながら真剣に知恵を集めて経営指針を創り、その課題を克服しようと挑戦している地元経営者の仲間が沢山いるという事を思い出していただけましたら大変有難く存じます。

中小企業家同友会とは………………………………
〜全国47都道府県に設立され中小経営者が自主的に活動、会員企業数は約4万社〜

 中小企業家同友会は、中小企業の利益を守るという立場から、1957年(昭和32年)4月、東京に生まれました。その後、全国の各県に生まれ、現在では47都道府県のすべてに設立されています。
 また、全国の中小企業家同友会で、中小企業家同友会全国協議会(略称=中同協)を結成し、『同友会の三つの目的』『自主・民主・連帯の精神』そして、『国民や地域と共に歩む中小企業』という「同友会の理念」に立脚して活動を進めています。
 活動内容は、経営者同士の学びあい、大学や公的研究機関の専門家等を招いての勉強会(例会・研究会)、経営理念・経営方針・経営計画などを学ぶ経営指針づくり研究会、人材の採用や教育を共同して進める共同求人活動、社員教育活動、そして、労使の信頼関係を強める活動や障害者問題にも取り組んでいます。
 また、全国規模の景況調査・研究活動や「金融アセスメント法」や「中小企業憲章」の制定を求める政策要望活動など、中小企業をとりまく経営環境を改善する活動にも全国の仲間の知恵を集めて取り組むなど幅広い分野で活動をしています。
●中小企業家同友会全国協議会HP
http://www.doyu.jp/

同友会の三つの目的………………
〜良い会社・良い経営者・良い経営環境を、めざして学びあっています〜

1 良い会社【自主的な努力による経営体質の改善】
2 良い経営者【謙虚に学びあい総合的な能力を養う】
3 良い経営環境【経営環境の改善に努める】

秋田県中小企業家同友会………………
〜同友会の仲間は『経営辞典』の1ページ。厚い辞典づくりをめざしています〜
 秋田県中小企業家同友会は、2005年(平成17年)5月に設立されました。毎月例会を開催し、主に会員同士で互いに学びあって、よい企業づくりなど三つの目的に沿って活動を進めています。会員企業数は120社(2007年5月末現在)。今年度は170社会員を目標に、県内の全域に会員の輪を広げることをめざして会員増強活動に取り組んでいます。
 代表理事  佐々木克巳(株)むつみワールド 社長
 副代表理事 斎藤民一 (株)三栄機械 専務
 副代表理事 佐田 博 (有)佐田商店 社長
 副代表理事 柳澤 忍 (株)仙北屋山内 専務
代表理事 佐々木克巳
お問い合わせ先
〜ご相談などにも、お気軽にご活用ください〜
秋田県中小企業家同友会 事務局
〒010-0951 秋田県秋田市山王4-5-27 山王ランドビル304
TEL018-867-7471 FAX018-867-7472
E-mail info@akita.doyu.jp
HP http://www.akita.doyu.jp/
(2007年7月 vol.312)