タイトル-特集1
中小企業地域資源活用促進法について 秋田ならではの新商品・新サービスの開発を支援
1 はじめに
 国では経済成長戦略大綱(平成18年7月)に基づき平成19年通常国会で関連三法案を提出し、同4月に可決に至っています。今回は、その経済成長戦略大綱関連法の中から、県内中小企業の皆様にも活用して頂ける「中小企業地域資源活用促進法」についてご紹介します。
2 経済成長戦略大綱関連三法について
 「経済成長戦略大綱」とは、人口減少が本格化する2015年度までの10年間に取り組むべき施策について、経済産業省を中心としてとりまとめたもので、経済と財政の一体的な改革を進めるに当たって、歳出・歳入一体改革と並ぶ車の両輪として、政府・与党の最優先課題と位置づけられています。
 また、このなかで国は、今後10年間で、年率2.2%の実質経済成長を視野に政策を実行することとし、これに基づき平成19年通常国会で関連三法案を提出、可決となっています。なお、経済成長戦略大綱と今回の関連三法の内容は次の通りです。
経済成長戦略大綱関連3法について〜成長と地域・中小企業の底上げによる格差の是正〜イノベーションによる生産性向上、地域経済の活性化のための法的な枠組みを整備
経済成長戦略大綱
法的な枠組みの整備
T. 産業活力再生特別措置法等の一部を改正する法律
生産性向上に向けた事業者の取組を支援。〈8省庁連携〉
・サービス業の生産性の向上(業種別にきめ細かく対応)
・イノベーションによる生産性の向上(異分野連携、技術経営力強化等)
・知財の活用促進(包括的ライセンス契約ごとの実施権の登録制度の創設)
・地域における中小企業等の早期事業再生の円滑化
U. 中小企業地域資源活用促進法
(中小企業による地域産業資源を活用した事業活動の促進に関する法律)
地域資源を活用した地域の中小企業の取組を支援。〈農水省、国交省など6省で連携〉
・地域の「強み」となる地域資源(産地の技術、地域の農林水産品、観光資源)を、地域主導で掘り起こす取組を支援。
・大都市や海外市場への展開も視野に、予算・金融・税制面、人材面(マーケティング等に精通した人材・仕掛人)で総合的に支援。
V. 企業立地促進法
(企業立地の促進等による地域における産業集積の形成及び活性化に関する法律)
多様な産業集積に向けた地域への企業立地等を促進。〈総務省、国交省など6省で連携〉
・企業への支援を通じた企業立地等の促進。
 「地域産業活性化協議会」を組織し、地域独自プランを策定。国と地域がそのプラン実現に向けて協働。(規制、人材育成等)
第1 国際競争力の強化
・イノベーションの加速
・アジア等と共に成長する等
第2 生産性の向上
・サービス産業の革新等
第3 地域・中小企業の活性化
・中小企業の再生の推進
・中小企業地域資源活用プログラム(新事業を5年で1,000件創出)
・地域の自立や競争力強化(がんばる地域を応援)
第4 改革の断行による新たな需要創出
第5 生産性向上型の5つの制度インフラ(ヒト、モノ、カネ、ワザ、チエ)
※大綱実現のための法律以外の柱  ・予算:経済成長戦略推進要望(平成19年度予算案3,000億円超)
                 ・税制改正:減価償却制度の抜本的見直し等
※企業立地促進法については、BicAKITAで後日ご紹介いたします。
3 中小企業地域資源活用促進法(中小企業による地域資源を活用した事業活動の促進に関する法律)
(1)背景
 地域間格差の拡大が懸念される中で、各地域の強みをいかして自立的・持続的な成長を実現していくことが重要となっています。特に産地の技術、農林水産品、観光資源といった地域の特徴ある産業資源(地域資源)は、域外への事業展開において差別化の要素となり得るものですが、多くの中小企業では、次のような様々な課題が存在しています。

@ 市場調査、商品企画、商品開発、販路開拓等に必要なノウハウや人的ネットワーク、資金、人材を確保することが容易でなく、域外市場を狙った新商品等の開発・事業化が実現されにくい。
A 域外市場に関する情報や人的ネットワークが不足しているほか、地域資源の価値を認識して新しい取組につなげる動きが起こりにくい。また、地域ブランドの確立など、地域全体で地域資源の価値を高めていくことは容易ではない。

 こうした実情を踏まえ、国では「中小企業地域資源活用プログラム」により、域外市場を狙った新商品等の開発・事業化に対する支援や地域資源を活用した新たな取組の掘り起こしや地域資源の価値向上(ブランド化等)に対する支援を通じて、地域の強みをいかした産業を支援することとしています。
(2)概要
■地域の強みとなり得る地域資源の3類型(例示)
産地技術
(株)白鳳堂、(株)竹宝堂、
(有)竹田ブラシ製作所 等(広島県熊野町) 
●毛筆の伝統的な製造技法を用い、肌触りがなめらかで色の濃淡など微妙な表現が可能な化粧筆を開発。
●国内外のトップメイクアップアーティストに使われるなど、高い評価を確立。
★ポイント
有名化粧品メーカーとの共同開発、マーケティング専門アドバイザーのノウハウも活用。
農林水産物
井原水産(株)(北海道留萌市)
●コラーゲンを鮭の皮から抽出・精製する技術を実用化し、化粧品、食品、試薬品等向けに加工販売。 
★ポイント
大学や公設試との連携により、鮭皮からコラーゲンを抽出する技術を確立。
観光資源
(株)指宿ロイヤルホテル(鹿児島県指宿市) 
●黒豚、にがうり等を用いた食事、天然砂蒸し温泉、ウォーキングを組み合わせた健康増進プログラム『スパドゥ』を実施。
★ポイント
大学、医師会等との連携で、医学的な検証と事業化のためのデータ収集を実施。 中小企業地域資源活用促進法を一言でいうと、「地域の強みである地域資源(産地技術・農林水産品・観光資源)を活用した中小企業の新商品・新サービスの開発・市場化を総合的に支援する制度」です。
 本県には、「豊かな自然」やそこから見出された様々な食品や環境など豊かで特色ある様々な地域資源が存在しますが、こうした地域資源を活用して新商品・新サービスを展開する場合に補助金や様々な優遇措置を受けることが可能となります。
 具体的には、「樺細工」「川連漆器」「曲げわっぱ」などの伝統工芸品やその技術、「稲庭うどん」「ハタハタ寿司」など本県が誇る豊かな食文化、温泉や観光施設における新商品・新サービス開発など幅広い活用が考えられます。
 なお、国ではこれにより地域産業の発展の核となる新事業を5年間で1000創出することとしています。
■各地の地域資源を活用した取組の例
景況感の厳しい業種・地域における前向きな取組
○繊維、建設、小売、サービスなど景況感の厳しい業種、農林水産業、建設などへの依存度が高い地域において、地域資源を有効に活用する、新分野進出などの試みが行われている。
(3)新法による支援のポイント
 新法による支援のポイントは下記@〜Dの通りですが、中小企業が地域の個性豊かな資源を域外に売り込む際のサポートに重点を置いているのが特徴です。
 @地域の「強み」となる地域資源を、地域主導で掘り起こす取組を支援
 Aマーケティング、ブランド戦略に精通した人材・仕掛人を起用
 B産学官連携、農工連携など、従来の垣根を越えて、地域の力を集結
 C首都圏など大都市、更には海外市場を視野に、域外に売り込む力を強力にサポート
 D関係6省(総務省、文科省、厚労省、経産省、国交省)の協力体制を充実
(4)支援スキームと支援措置の概要(地域資源売れる商品づくり支援事業)
 国による支援スキームは下図スキームの通りですが、各段階に応じて、専門家によるきめ細やかなアドバイス(無料)を受けることが出来ます。
 @各都道府県が指定する地域資源を経済産業省等が認定。
 A地域資源を活用して新商品開発等を行おうとする事業者は、事業計画書を作成し、県を通じ、東北経済産業局等に申請。
 B東北経済産業局等の認定を受けると新商品開発に係る補助金や設備投資減税、低利融資を受けることが可能。
■中小企業地域資源活用促進法に基づく支援のスキーム
※ハンズオン支援
 ハンズオン支援とは個々の事業者に対し、各段階に応じた専門的指導・支援を行うために設置される機関です。事業計画の相談から生産設備の導入まで幅広い支援を無料で行います。
※事業計画
 事業者が作成する事業計画については現在国で詰めの作業をしている最中であり、後日詳細な情報が公開される見込みです。
※事業期間
 事業期間は、個別事業の内容(事業計画の内容)により異なりますが、現在のところ3〜5年です。
(5)具体的な支援措置(地域資源売れる商品づくり支援事業)
 事業者が受けることが出来る具体的な支援措置としては、主として補助金を受けるもの、融資を受けるもの、税制優遇を受けられるもの等がありますが、いずれの場合も事業計画書の中で、各事業者がどのような事業計画を持ち、地域資源を域外にどう売り込みたいのか、そのためにはどのような支援が必要なのかを記載することとなります。
 なお、支援措置では補助率が最大で2/3(組合等の場合1/2)となっているほか、設備投資減税措置も盛り込まれるなど、従来施策に比べ支援の内容が充実しています。
■中小企業地域資源活用促進法の認定を受けた中小企業等に対する主な支援措置
 (域外市場を狙った新商品等の開発・事業化に対する支援)
《補助金等》
 ○地域資源活用売れる商品づくり支援補助金(売れる商品づくり支援事業 30.0億円)
  試作品開発、 展示会出展等に係る費用の一部を補助。(補助率2/3)
 ○マーケティング等の専門家による継続的なアドバイス(ハンズオン支援事業 20.3億円)
 ○中小企業基盤整備機構が主催する商談会やアンテナショップに対する優先的な出展(中小機構交付金8.4億円)
《融資等》
 ○政府系金融機関による低利融資(中小公庫、国民公庫、商工中金)必要な設備資金及び長期運転資金を低利で融資。
 ○信用保証協会の債務保証枠の拡大(中小企業信用保険法の特例)既存の保証制度とは別枠での債務保証を実施。
 ○高度化融資 組合が行う施設の整備に必要な資金を都道府県と中小機構が協力して融資。
 ○食品流通構造改善促進機構による債務保証等 食品関係の取組に必要な資金の借入れに係る債務保証等を実施。
《税制》
 ○設備投資減税(中小企業等基盤強化税制)─機械及び装置を取得した場合、取得価格の7%税額控除、又は30%特別償却
                     ─機械及び装置をリースした場合、リース費用の総額の60%相当額の7%の税額控除
(6)今後のスケジュールとポイント
 現段階で判明しているスケジュールは下記の通りです。現在、県では、各市町村及び関係団体等と地域資源の指定について作業を進めているところですが、出来るだけ早く皆様に「地域資源」を公表したいと考えています。
 なお、事業者の皆様が作成する事業計画等の詳細な内容は、現在国で詰めの作業をしていますので情報が入り次第、ホームページ等を通じて皆様にも提供したいと考えています。
平成19年 7月上旬 県の基本構想決定
  8月上旬〜 国による地域資源の認定
  8月下旬〜 事業者による事業計画書の申請
  9月 東北経済産業局等による事業計画
審査開始
※平成19年6月時点のスケジュールであり、今後国の都合により変更される場合があります。
(7)本制度の活用を検討される事業者の皆様へ
 本制度の活用を検討する場合には、まず活用しようとする素材や技術(産地技術・農林水産品・観光資源)が、県が指定する地域資源として認定されていることが重要となります。
 そこで、本制度を検討したいとお考えの方は是非一度、下記問い合わせ先にご相談頂きたいと思います。もちろん、本制度の事業内容の確認や他の事業補助金との違いなどのお問い合わせでも結構です。
 本法律は、頑張る中小企業の方々のための制度であり、従来の施策と比べ、事業者の規模やその他の制約が非常に少なく、使い勝手の良い制度となっています。皆様のご利用・ご相談をお待ちしております。
(8)他施策との違い(参考)
1.地域の強みを活かし、蓄積し、地域産業の競争力強化へ
「地域資源の活用」とは必ずしも素材ではなく、ソフト的な経営資源(見えざる資源)の蓄積(技術、経営システム、ブランド等)も含まれます。また、地域主体の取組を産学官連携、農工連携との観点からも支援いたします。
2.対象の拡大
「産地技術型」、「農林水産品型」、「観光資源型」の三類型を主として、地域の強みとなる「地域資源の活用」を推進する企業を応援します。
3.外部専門家と仕掛人による、大都市市場・海外市場とのリンク
 顧客起点の事業展開、製造・販売一体展開を促進するため、マーケティングなど従来施策で最も弱かった部分に、専門家を起用(ハンズオン事務局)するほか、アンテナショップ、商談会など海外のトップ級国際見本市などを目指す取組を応援します。
4.総合的なプログラムと強力な支援ツール
 法律、予算(政府案100億円)、設備投資減税、低利融資、ファンド等政策手段を総動員し、関係機関との大連携を図っています。特に、全国10カ所にハンズオン支援事務局を設置するほか、マーケティング、デザイナー、販促の専門家や観光カリスマなど外部専門家を派遣し、きめ細かな継続的ソフト支援を行うほか、事業計画のブラッシュアップ・フォローアップまで行います。
4 まとめ
 現在、県では、各市町村や商工団体等を中心として情報提供・収集を行っていますが、法律施行前にも関わらず、相当数のお問い合せやご相談を頂いています。地方と大都市との格差が叫ばれる中、県内企業が本制度を活用して更に大きな成功を納め、飛躍する契機の一つとなることを期待しております。
(詳細・お問い合わせ先)
●秋田県産業経済労働部 産業経済政策課 企画班	電話018-860-2226 FAX 018-860-3868
●(財)あきた企業活性化センター 営業統括グループ	電話018-860-5610 FAX 018-860-5704
●東北経済産業局 中小企業課	電話022-222-2425
(2007年7月 vol.312)

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