タイトル-ビジネスレーダー
必要なときに最高の医療サービスを提供する/理事長 小玉 敏央さん
医療法人正和会
介護老人保健施設ほのぼの苑
〒018-1401
潟上市昭和大久保字街道下92-1
TEL018-877-7110
FAX018-877-7723
URL http://www.seiwakai-akita-no1.or.jp/
 
 介護老人保健施設というのを聞いたことがあるだろうか。
 老人福祉施設と同じと思われがちだが、介護老人保健施設は、介護を必要とする高齢者の自立を支援し、家庭への復帰を目指すために、医師の管理の下、充実した看護、作業療法士や理学療法士等によるリハビリを受けながら栄養管理・食事・入浴などの日常の介護サービスを提供する施設をいう。
 今回は、その介護老人保健施設として、平成18年度秋田県経営品質賞『優秀賞』を受賞した「医療法人正和会 介護老人保健施設ほのぼの苑」をご紹介したい。
 この医療法人正和会の理事長で、「ほのぼの苑」の医師でもある小玉敏央氏は、20年前に病院の待合室で70代の患者さんが倒れ亡くなるという経験をした。病院内に除細動器があれば治療の手段ももっとあったのではないかという無念の思いが強く、それ以来“必要なときに最高の医療サービスを提供する”を念頭に医療体制の整備を行ってきたという。潟上市の同一の敷地内に小玉医院(内科・小児科・循環器科・呼吸器科・消化器科)、南秋田整形外科医院、おおくぼ歯科診療所、南秋田眼科医院からなる総合医療エリアを構築し、その中にほのぼの苑、南秋田訪問看護ステーション、南秋田在宅総合ケアセンターを開設し、必要な医療サービスを必要なときに最高の水準で受けられる体制を確立したそうだ。ほのぼの苑は、平成8年4月に医療法人正和会の関連施設として開設された。
 この「ほのぼの苑」の入苑者のうち、約1/3が経管栄養(※)などによる治療が必要な方で、全体でも医療処置を要する方がかなり多い。しかし、その入苑者の48%が在宅復帰し、秋田県内の介護老人保健施設の中では在宅復帰率がトップクラスとなっているそうだ。この理由として、全ての職員が入苑者に対し“如何にすれば良くなるのか”、“良くなって、家に帰るにはどうしたらいいのか”を念頭に、常に入苑者の気持ちになって考えているということが上げられるのではないか。
 「ほのぼの苑」で特徴的なものは、職員の離職率の低さがある。介護労働者の離職率が全国平均で21%に上っている中、「ほのぼの苑」の離職率は平成18年度で5%(20名のうち1名が離職)と非常に低い。また、その離職の理由も自己の能力向上のための離職で、厚生労働省の調査でいう肉体的負担ではなかった。反対に、「ほのぼの苑」を辞めない理由を調査したところ、「やりがい」、「仲間の励まし」等が挙げられ、職員の資質と職場環境の良さが離職率の低さに繋がったといえる。この職員の力が入苑者の苑での生活と在宅復帰を支えている。
 また同苑では、入苑者の在宅復帰を支えるもう一つの側面である入苑者の家族による、「家族会」を発足させ、苑の運営についての意見交換会を定期的に開催している。その際、家族側から苑に対して不利益な意見が出ても、個人が特定できないようにグループを構成するなど、厳しい意見でも真摯に受け止め、改善に努めようする姿勢が窺われる。機関誌「ほのぼの苑だより」へ議事録を掲載するなど、参加できなかった家族への報告も行っている。
 その結果、同苑が行ったアンケートによる顧客満足度調査結果が満足度80%と非常に高い数値を示したそうだ。
 また、小玉理事長によれば、「入苑者の整容を見れば、職員の入苑者に対する意識向上度が判る」という。
 今回の秋田県経営品質賞の受賞は、日本経営品質賞アセスメント基準書に基づく8つの視点から審査を受け、その中で@トップの地域貢献への強い思いが生み出すリーダーシップ、A職員の利用者に対する献身的で現場に即応したスピード感あふれるサービス、B委員会・プロジェクトチームによる組織活動、C正和会グループ内外のネットワーク の4項目が評価されたものだ。それは、小玉理事長の介護・医療に対する思いと、経営者としてのリーダーシップ、また職員が自ら問題提起しプロジェクトチームを立ち上げるなど常に改善に向け努力した結果によるものだろう。
※口からの食事が困難なため、胃や腸にチューブを通し、直接栄養剤等を注入する栄養管理。
 
タイトル-ビジネスレーダー
「好き」を出発点に、女性のためのフリースペースを開店/代表 勝田 節子さん
雑貨&カフェ りらくの森
〒017-0202 鹿角郡小坂町小坂鉱山字栗平22-10
TEL・FAX 0186-29-4758
E-mail
rirakunomori03@aria.ocn.ne.jp
営業時間 10:00〜18:00
定休日 木曜日
 
 小坂町の国道282号沿いに、ポット型の看板を掲げた小さなお店がある。2006年11月に開店した雑貨販売、カフェ、レンタルスペースの3つ事業を併せ持つ複合店舗「雑貨&カフェ りらくの森」だ。
 店内スペースの半分を占める雑貨販売は、インテリア小物、文具、キッチン用品などの可愛らしい商品のほか、地域の手芸作家さんたちが作ったパッチワークのバッグや小物、押し花作品、ビーズアクセサリーも並ぶ。雑貨販売のスペースと一続きになったカフェは、コーヒーや甘味、軽食を低価格で提供する約20名が入れるスペース。レンタルスペースは小さなバザーといった感じで、近隣の主婦たちが家庭で使わない新品の衣類や食器などを持ち寄り、低価格で販売している。
 「商売のことは何も分からない素人でした」と笑う代表の勝田さんが準備からわずか4か月で開店までたどり着くには、「雑貨が好き」「地域の女性にほっとできる場所を提供したい」という温かくも強い思いがあったからだ。
 「パートを辞めて地元、小坂町で勤め先を探していたとき、『こんな雑貨屋さんがあったらな』と以前から感じていたことを、『じゃあ自分でやってみよう』と考えるようになったんです。20年くらい前まではたくさんあった喫茶店も今ではほとんど無くなり、地域の女性がリラックスして交流できる場所が無いというのも気になっていましたし、サークル活動などで作った手芸作品などを発表する場だった町の文化祭が無くなってしまったことも残念に思っていました。そこで、雑貨販売の他に、地域の方の作品販売、カフェやレンタルスペースなどの事業を取り込むことにしたんです」。
 勝田さんは、当財団法人あきた企業活性化センター主催の「創業バックアップセミナー」や商工会主催の創業塾などに参加し、開店に向けて勉強した。「創業バックアップセミナー」は、創業の基礎知識に関する講演と県内事業者の創業体験談を聴くことができ、専門家への個別相談もできるイベント。勝田さんはこういったセミナーを活用したほか、参考になりそうな県内各地のお店を訪ねて行って、分からないことを直に相談したそうだ。「何も分からなかったので、先輩方に率直に相談しました。大変親切に教えていただいて本当にありがたかった」。そうして懸命に作った事業計画は、実現性などが評価され当センターの「創業支援補助金」にも採択された。
 りらくの森には、地域の女性はもちろん、子どもからお年寄りまで来てくれている。「雑貨専門店だと買わずには入りづらいところがありますが、ここは、友達とのお茶呑みがてらに雑貨を手に取ったり手芸作品を眺めることができますので、ずっと気楽に立ち寄っていただけるようです」。勝田さんが町の国際交流協会の活動にも携わってきたことから、毎年世界各国から来町するJICAの研修生と地元の方々の交流の場にもなっているほか、韓国語教室や手芸作家による講習会にスペースを提供するなど、開店から10か月経ち、さらに多様な顔を持つようになった「雑貨&カフェ りらくの森」。「今後は利益を上げながら、リラックスできる空間の維持に努めたい」と話す勝田さん。その笑顔とパワーでりらくの森を色濃く育てて欲しい。
(2007年9月 vol.314)