タイトル-ITコラム
BIビジネス・インテリジェンス Profile: (株)トミスシステムズ 佐藤 正人(エンジニアリングマネージャー/ITコーディネータ)BI(ビジネス・インテリジェンス)

 BI(business intelligence:ビジネス・インテリジェンス)という言葉は1990年代初め頃から使われ始めました。ガートナーグループのアナリスト、ハワード・ドレスナー氏が最初に提唱したとされています。近年、中堅・中小企業においても関心が高まっている、このBIについてご紹介します。

BIとは

 現在、多くの企業では多種の業務においてシステム導入(コンピュータ化)が実現されています。その結果、そこには膨大なデータ(情報)が蓄積されていることになります。
 BIとは、「業務システムなどで蓄積されたデータ資産を、分析・加工し、企業の意思決定に活用しようとする手法(概念)」と一般的に説明されています。「意思決定支援システム」と基本的な概念は似ていますが、BIは「尚一層幅広いユーザー(経営者から一般社員まで)が手軽にデータ分析できる仕組み」と解釈した方が分かりやすいのではないかと思います。
 また、データウェアハウス(DWH)という言葉もあります。これも分析システム全体を表したり、また分析するためのデータベースを表したりといった具合で、表現における定義づけがさまざまで混乱を招きかねません。

BIの構成要素

 次に、BIを構成する主な要素を整理してみます。
a)ETL(extract,transform and load; 抽出, 変換, 挿入)
 基幹系システムなどに蓄積されたデータを抽出し、利用しやすい形に加工して対象となるデータウェアハウスに書き出す仕組み、これら一連の処理を支援するソフトウェア。
(システム全体の中でも非常に重要な要素です。使用しにくいデータでは適切な分析が困難となります。)
b)データウェアハウス
 基幹系システムなどに蓄積されたデータを分析しやすいように抽出し、整理・統合したデータの貯蔵庫。また、インフラ関係及び分析ツールなども含まれる。
c)データマート
 特定の部門やニーズに合わせ、データウェアハウスから必要なデータだけを抜き出して構築する。データウェアハウスの部分集合といえる。
d)分析ツール
 OLAPやデータマイニング・レポーティング・モニタリングツールなど、データウェアハウスやデータマートに蓄積された情報を使い、分析・閲覧するツール。
 BIツールは、これまでの単体ツールから統合型へと大きく変転してきています。
 基本的な構成を図に表してみます。

BI基本構成

@OLAP
 OLAP(オーラップ)とは、ユーザーが直接データベースの検索・集計を行い、その中から問題点や課題を発見する分析型アプリケーションの概念、ツールのことです。例えば、「昨年、一番売れた商品は?」の分析から「では、今年は?」、「どの色が一番売れた?」、「地域差は?」といった具合に、次々と問い合わせ内容を変化させて分析していきます。
Aデータマイニング
 データマイニングとは種々の統計解析手法を用いて、隠れた関係性や意味を見つけ出す知識発見の手法のことです。例えば、「一緒に買われる商品の組み合わせ」を発見するというもので、スーパー・百貨店・ネットショップなどで利用されています。有名な事例としては「おむつを買った人はビールを買う傾向がある」があります。
Bレポーティング
 帳票出力機能です。単に帳票を出力するだけではなく、レイアウトや出力項目、権限による開示許可などを設定し、目的にあった分かりやすいレポート作成を可能とし、有効的な情報共有が実現できます。
Cモニタリングツール
 ビジネスの目標をどのように達成しているか、若しくはされていないのかを監視します。経営陣、管理職などのユーザー層に適しており、経営状況を一目で把握したいというニーズに応えるため、可能な限り視覚的に分かりやすく表現しています。
 また、数値を表やグラフ化する機能に加え、達成率などの目標値に連動させて色や形を変えたシグナルとして表示する機能もあります。

 企業情報の【見える化】を実現するため、BIはあらゆる業界・業種のさまざまな分野で活用されています。
 そして、その一般的効果としては、売上増加・コスト削減・利益性の向上・経営リソースの効率化・顧客満足度の向上などに現れてきます。
 現在、データベースベンダーやビジネスアプリケーションベンダーなどが中小企業向けにさまざまなBIツールを提供し始めています。BIツールは視覚的にも分かりやすいという特性から、製品を見た目だけで判断してしまう(惑わされる)ことが懸念されるところです。長期にわたり使用するシステムですので、目的(活用方針)を明確にし、多様な要件に対応できる分析機能とその容易性、また非定型レポート作成機能の容易性、その他にもサポート体制、コスト(維持管理費など含む)、セキュリティなどを総合的に判定することが大切です。

  
(2007年9月 vol.314)