タイトル-特集
知的財産を活用しましょう! 中小企業のパートナー 弁理士
 「独自に開発した製品の利益を守りたい」「特許製品を広く販売したい」「ほかの企業が自社の模倣ではないか」。知的創造物に関する疑問や問題を抱えている企業の強い味方になるのが、“知的財産権”と、その保護・活用の専門家である“弁理士”です。
 秋田県は、平成20年3月3日、日本弁理士会協力協定を締結しました(平成20年3月3日〜平成22年3月31日)。知的財産の活用による地域の活性化と産業の振興を目指し以下の協力事項が確認され、今後、日本弁理士会と協力し県内中小企業の知的財産権に関する取組をサポートしていきます。

【協力事項】
1 知的財産の普及啓発及び知的財産にかかる知識を有する人材の育成に関する事項
2 知的財産の相談に関する事項
3 知的財産の活用に関する事項
4 その他、地域産業の振興のための知的財産の保護と活用に関する事項
【協定に基づく事業】
1 知的財産セミナー(秋田県、あきた企業活性化センター、日本弁理士会 共催)
2 知的財産相談会(             〃            )
3 知財目利き委員会(評価対象の分野に合わせた弁理士を委員として派遣)
知財目利き委員会とは?
 県内大学・公設試験研究機関等で出願済みの特許を評価する委員会です。研究側で課題となっている知財関連予算や人材不足を補い、特許維持管理の効率化と技術移転の促進を図っています。(財)あきた企業活性化センターが事務を担当しています

“弁理士”を活用しよう〜日本弁理士会の活動〜
 たいへんな労力をかけ開発した技術や製品の利益を、模倣や盗用から守ることができる権利が知的財産権です。そのうち、企業活動に深く関わる、技術に関する権利を産業財産権と分類します。
 弁理士は、特許権、実用新案権、意匠権、商標権、の手続きを代理することができる国家資格者です。知的財産を生み出した方にとって、有利な内容でそれを権利化できるよう、調査やアドバイスを行い書類を作成し特許庁に提出します。また、権利の侵害に関しては弁護士と協力して訴訟に対応します。具体的には、次のような場面で弁理士を活用することができます。
弁理士には、いつ依頼すればよいのでしょうか
1.あなたが技術開発・商品開発をしようとするとき〔効率的な開発・開発成果の保護〕
a.技術開発・商品開発に着手するとき、今までにない新しい技術・商品を開発しようと意気込んでいるはずです。しかし、市場を見て、この技術・商品は今までにない、と判断すると大きな痛手を受けることがあります。特許出願・意匠出願されていても商品化されないものが多数あります。「発明した」と思っても、既に特許されている、という事例は幾多もあります。

b.技術開発の相談を受けた弁理士は、開発技術の周辺にある特許出願、意匠出願を調査して、従来の水準を提示し、無駄のない、効率的な開発が進行するようにアドバイスします。
2.あなたが発明・考案をしたとき〔特許権・実用新案権の取得〕
a.新しい発明や考案、あるいは改良をしても、特許権や実用新案権として権利をとっておかないと、他人の実施を阻止できません。
 弁理士は相談を受けると、技術内容をお聞きし、特許になるか実用新案になるかを判断します。また、必要があれば従来の技術を調査します。

b.出願することが決まると弁理士は、願書と共に、発明・考案の内容を詳しく説明した明細書・図面を作成し、特許庁に出願手続を行います。
 なお、このような業務は、発明・考案という無形の技術思想を文章によって表わし、その技術的範囲を画定するという、きわめて高度な技術的、法律的知識を必要とするものですから、弁理士以外の者が報酬を得て手続の代理を行うことは、法律で禁じられています。
 弁理士は出願の委任を受けると、出願から登録にいたるまで、さらには権利が満了するまで、すべての手続(例えば、意見書や手続補正書の提出など)の代理を行います。
3.あなたが物品のデザインを考えたとき〔意匠権の取得〕
 弁理士は、どのようにすれば広い範囲の権利をとることができるかを検討し、意匠図面(必要によっては意匠写真)を作成して出願します。
 デザインであっても、意匠よりも特許による保護が相応しい場合もあり、保護の方法の選択は重要であり難しい問題です。
4.あなたが商品またはサービスのマークを考えたとき〔商標権の取得〕
 弁理士は、あなたの希望するマーク(商標)が登録に適するものであるかどうかを判断するとともに、必要に応じてそのマークと同一又は類似のものが、既に登録又は出願されていないかどうかを調査します。そして、あなたの商品又はサービスが商標法で定められたどの分類に属するかを判断して出願をします。
5.あなたが外国へ出願するとき〔外国特許権・商標権などの取得〕
 技術に国境はありませんが、特許制度は各国で独立しています。そのため、外国における特許権取得がますます増加しています。また、近年、技術で裏付けられた製品の輸出が増加しています。これに対応して、弁理士はあなたが外国で特許や商標について権利をとりたいとき、あなたに代って複雑な外国出願の手続を行います。
 弁理士は、外国の提携弁理士と法律の改正などの情報交換を絶えず行い、国際会議などでも直接会って、意志の疎通を図るなど、常時、国際交流しています。
 発明や商標などの国際的保護を容易にするため、167か国以上がパリ条約に、126か国以上が特許協力条約に、66か国以上がマドリッド協定議定書に加盟しています。
6.権利について争いがあるとき〔審判・訴訟〕
a.審判の請求
 弁理士はあなたの出願が拒絶されて、あなたがこれに不服がある場合や、他人の特許や登録を無効にする必要が生じたとき、又は商標登録を取消す必要が生じたとき、あなたに代って審判の請求を行います。また、あなたの権利に対して審判が請求されたとき、弁理士はあなたに代って必要な手続を行います。

b.登録異議の申立
 商標登録の要件を欠く出願が誤って登録されたときは、その権利に対し、あなたに代って登録異議の申立を行います。これは、あなたの製造・販売などの活動を不当に妨げるような権利が発生、存続することを阻止するのに重要な手続です。
 また、立場が変って、あなたの出願が登録されたとき、上記のように登録異議の申立を受けることがあります。このような場合にも、弁理士は申立の理由を検討し、必要な手続(意見書の提出等)をあなたに代って行います。

c.訴訟
(1)弁理士は、あなたが審判の審決あるいは異議の決定に不服があるときは、その審決や決定の取消しを求め、あなたに代わって裁判所に訴訟を提起します。また、無効審判の審決の取消しを求める訴訟が提起されたとき、あなたに代わって裁判所に対する必要な手続を進めます。
(2)弁理士は、あなたが権利侵害の訴訟を起こしたり、起されたとき、あなたの代理人あるいは補佐人として訴訟を有利に展開します。

d.調停(仲裁の手続を含む)
(1)あなたに代わって、裁判外で、特許権、実用新案権、意匠権もしくは商標権又はJPドメイン名について、日本知的財産仲裁センターが行う調停の手続をします。
(2)あなたに代わって、裁判外で、回線配置利用権または特定不正競争に関する調停の手続代理をします。
7.あなたの権利を侵害する物品が輸入されるとき〔輸入差止め〕
a.特許権、実用新案権、意匠権、商標権、著作権、著作隣接権、育成者権を侵害する物品について、関税定率法に定める輸入差止申立手続及び認定手続きに関する権利者の代理を行い、あなたの権利を侵害する物品の輸入が差止められるようにします。

b.回路配置利用権を侵害する物品について、関税定率法に定める輸入差止情報提供手続及び認定手続に関する権利者の代理を行い、あなたの権利を侵害する物品の輸入が差止められるようにします。
8.あなたが実施したい方法や物が、他人の権利にふれるのではないかと心配なとき〔鑑定・判定〕
a.弁理士は、例えば発明の技術的な範囲がどこまで及ぶか、商標が似ているかについて、鑑定を行います。

b.弁理士は、上に述べたような事柄について、第三者の見解を求めるために、あなたに代わって特許庁又は日本知的財産仲裁センターに対し判定請求を行います。
9.あなたが契約を締結したり、媒介や相談を希望するとき〔売買・ライセンス〕
 特許権、実用新案権、意匠権、商標権、回路配置利用権、著作権、著作隣接権、不正競争防止法第2条1項に規定する不正競争で、同項第1号から第9号に掲げるもの(同項第4号から第9号に掲げるものにあっては、技術上の秘密に関するものに限る)に関する契約の締結をあなたに代わって行ったり、媒介や相談にも応じます。
出典:パンフレット「弁理士info」より
日本弁理士会の概要
 日本弁理士会は、弁理士法に基づき大正11年5月に設立された、100年以上の歴史を持つ弁理士に関する、唯一の公益法人で、全国に支部を持ちます。国家試験に合格し、日本弁理士会に登録した者だけが、弁理士と認められます。日本弁理士会は、国、地方自治体、各産業団体などと連携しながら、知的財産権の研究、弁理士の研修、諸外国の制度研究と海外弁理士会との交流、知的財産支援センターによる支援活動、広報活動、特許相談などの業務を通じて、産業の発展、公正な取引制度の確立に寄与しています。※秋田県との協力協定は、全国の地方自治体のうち17件目となります。
日本弁理士会
 〒100-0013 東京都千代田区霞が関3-4-2 TEL.03-3581-1211 http://www.jpaa.or.jp
特許・意匠・商標なんでも110番(東北支部)
 〒980-0014 仙台市青葉区本町3-4-18 太陽生命仙台本町ビル5階 TEL.022-215-5477

知的財産活用の利益
 弁理士との協力により知的財産権を取得・活用することで、中小企業等の皆様には次のような利益が期待できます。「たいしたものじゃない」と考えてしまう前に、弁理士をはじめとする専門家に相談してみてはいかがでしょうか。技術や製品が、大きな利益を生むかもしれません。
【協力事項】
(1)知的財産権(特許権・実用新案権・意匠権・商標権・著作権)の譲渡による利益
(2)知的財産権に基づくライセンス契約に基づく収益
(3)知的財産権を担保とする借金
【協定に基づく事業】
(1)出願中を含め他社の参入を妨害する参入障壁による利益
     ;類似品が短期間に出現するのを防ぎ、シェア拡大
(2)特許等の表示による消費者心理をくすぐる宣伝広告による利益
(3)ある程度の価格決定権を有する利益
(4)製品メーカーに売り込みを有利にする利益
【協定に基づく事業】
(1)ライセンス先の製品の宣伝を通じて自社製品の売り上げ増につながる利益
(2)非類似の分野での他者の宣伝による宣伝相乗効果による利益
(3)営業秘密(ノウハウ)による品質担保を商標でにおわすことによる広告効果
レポート:知的財産活用セミナー 〜知的財産の活用の仕方〜
 日本弁理士会と秋田県の協力協定締結を記念し、日本弁理士会、日本弁理士会東北支部、日本弁理士会知的財産支援センター、秋田県、財団法人あきた企業活性化センターが共同し、平成20年3月3日、「知的財産活用セミナー」を秋田市において開催いたしました。
 日本弁理士会の中島淳会長から、「17件目の協力協定を秋田県と締結でき非常に嬉しい。日本弁理士会は、相談会などを地方でも多く開催し、地域の中小企業の利用促進に努めている。この協定により、秋田県の産業振興につながるよう連携を深めていきたい」と挨拶がありました。
 また、日本弁理士会知的財産支援センター長の飯田昭夫氏より、弁理士及び弁理士会に関する講演が披露されたほか、知的財産活用の事例として三浦電子株式会社代表取締役社長三浦俊之氏より、「特許を取得するためには、弁理士や弁護士など専門家との協力と、諦めずに取り組む強い気持ちが必要。登録までは補正や審査、拒絶、査定など多くのハードルがあるが、諦めずに何度も挑戦することで特許を得ることができた」と初めて特許出願に挑戦してから、特許取得の効果を得るまでの経験談が披露されました。
●特許第2626778号ほか

 講演終了後、日本弁理士会秋田県支部 熊谷繁弁理士による相談会が実施され、技術や製品を権利化したい県内企業担当者との面談が持たれました。
 平成20年度も、このようなセミナーや相談会を3〜4回開催する予定です。「どこに相談してよいのか分からない」とお悩みの方は是非お越しください。弁理士への相談が、知的財産活用の第一歩となります。

知的財産権(特許権)の出願から登録までの流れ
 知的財産権のうち、三浦電子株式会社も取得した特許の取得までの手続きの流れについて、10ページをご覧ください。出願から方式審査、審査請求、審査、特許査定と特許庁による手続きを通過すると、登録となります。その間、特許庁から補正や拒絶などが示され、申請をより正確なものに作り上げることが必要になります。「特許庁に根気よく通い、面談を重ねることでコツが分かってきます。諦めずに、アドバイスを貰うつもりで特許庁に足を運ぶことが大事ではないかと思います」と、三浦社長(三浦電子株式会社)。
 千里の道も一歩から。そこにある財産が有効な権利になるかもしれません。
知的財産に関するその他のご相談先
◎財団法人あきた企業活性化センター産学連携推進グループ「知財目利き委員会」事務局
 TEL018-860-5624 FAX018-860-5704 http://www.bic-akita.or.jp/
◎秋田県知的所有権センター
 TEL018-860-5614 FAX018-860-5615 http://www.bic-akita.or.jp/ipcenter/ipcenter.html
◎社団法人発明協会秋田県支部
 TEL・FAX018-824-4282 http://jiii-akita.jp/
(2008年4月 vol.321)

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