ビジネスレーダー

有限会社 北部地研

 鹿角市の有限会社 北部地研は、平成19年度の当センターの経営改革総合支援事業(フェニックスプラン21)の認定支援を受け、新事業としてコールサービス『孫の手』を展開している。この新たな取組に至った経緯などについてお話を伺った。
 建設業である北部地研が新分野に進出するきっかけとなったのは、専務取締役である石垣晋一さんの発案だった。
 「高齢者の孤独死や自殺といったニュースを耳にするたびに心を痛め、問題解消のために何かできないかと思い、4〜5年程前から、高齢者を対象とした安心で楽しく、生きがいを感じることができる場の提供という構想を持っておりました。しかし、以前のように建設業界の景気のいい時期に、全くの新分野であるコールサービスを始めようと言っても誰も耳を貸すはずがないと思い、私も口にすることはありませんでした。建設業を取り巻く環境が厳しくなった近年、利益率は年々悪化しており、その要因の一つである労働稼働率を精査してみると、我が社では約3割の余剰時間があることが分かりました。社員のリストラによる規模の縮小という方策もありますが、地域貢献という企業の使命からすると、あるべき姿ではないと考えました。そこで、余剰時間を使った新たな事業として、常々考えていたコールサービス業への展開を提案したのです。本業を続けながらの新分野への進出ではありましたが、建設業界の置かれている状況が状況だけに、社長や社員からの反対はありませんでした」と石垣専務は語る。
 『孫の手』は行政や民間の介護サービスとは違い、健康で日常生活を問題なく過ごすことができながらも、独り暮らしや日中一人で家にいることの多い65歳以上の高齢者を対象とした会員制のサービスである。会員とその担当者である社員が一緒に行動することで仲間意識を構築し、会員に、自分も社会の一員であることを認識してもらい、積極的に社会活動に参加するなどして、充実した楽しい毎日を過ごしてもらうことを目的としている。入会金は5千円で、3千円の月会費を支払うことにより、毎朝希望の時間に「おはよう、じいちゃん寒ぐねが?」といったコールサービスが受けられるほか、病院等への外出サポートや買い物の代行、冬場の雪かきといった附帯サービスが格安な料金で用意されている。
 「高齢者社会といわれる今日、鹿角市でも高齢化率が30%を超える現実です。独り暮らしのお年寄りや、高齢者だけの世帯の方々が抱える「寂しさ」や「不安」を取り払い、一緒に楽しめ、かゆいところに手の届く”孫の手”のようなサービスを提供していきたい」と代表取締役 本田立子さんは語る。
 現在のところ、想定していた会員数には達していないものの、お年寄り本人に対するサービスばかりではなく、犬の散歩といった想定外のニーズがあったり、各方面からの問い合わせや協力の申し出が寄せられるなど周囲の関心は高まってきている。今後も引き続き、接遇研修等の人材教育に力を入れるとともに、ホームページなどによるPR活動を行い会員の拡大を図っていく。
 地域に必要とされる「コミュニティー型建設業」を目指す有限会社 北部地研の今後の動向に注目したい。

 CORPORATION DATA

有限会社 北部地研
〒018-5334
鹿角市十和田毛馬内字毛馬内28
TEL.0186-35-4835 
FAX.0186-35-2922


(2008年8月 vol.325)


株式会社 タカハシ

 湯沢・横手・由利本荘など、県内外に婦人服専門ブティック「アザレア」などのテーマ型セレクトショップを展開している株式会社タカハシは、路面店にこだわった営業を行っているほか、県内のアパレル関係では珍しいインターネット販売も手掛ける。また、新たに、「どんぶく(綿入り半天)」の国内外への製造販売を計画し、当センターの経営改革総合支援事業(フェニックスプラン21)の認定支援を受けている。意欲的な経営について専務取締役 高橋文柄 氏にお話を伺った。

 創業は昭和元年です。羽後町西馬音内で祖父母が仕立業を始め、尊敬する父の代で総合衣料販売を行い、およそ30年ほど前に婦人服専門ブティック「アザレア」の経営に転換し今日に至っています。8つの店舗それぞれに独自性を持たせ、市場にあわせて客層を分けています。
 ファッション販売という仕事の呼称は、販売員、ショップ店員、ファッションアドバイザー等、いくつかありますが、私たちは、一人一人のお客様に「私専属のスタイリストがいるお店」と思ってもらうことを大事にしてきました。仕事で大切にしたいものを文章にしようと、みんなが集まって3日かけて作ったミッションがあります。それが、「目指せチェンジアップスタイリスト!輝いていく事を楽しみ、ともに幸せを分かちあおう」です。
 フリー客の多い駅ビルや県外の百貨店に出店した時期がありますが、客数が多い立地では、接客自体が捌き型に向かってしまいます。現在のお店が全て路面店になったのは、「一人一人のお客様のスタイリストになる」という思いが自浄的に働いたからでした。ミッション実践のため、一人一人のお客様のブリーフィングを大切にしています。来店予約された方のコーディネートを事前準備しています。これが私たちのコアコンピタンス(※1)です。
 この強みをより大きな商圏で試したくなり、盛岡市と吉祥寺(東京都)にお店を出しました。盛岡は岩手全域から、吉祥寺は23区から、ファンが集まるお店を目指して1本立ったビジネスモデルを作りこんでいます。
 最近のマーケット状況や消費性向の変化を考えるに、前述のコアコンピタンスだけでは、いずれ手詰まりになると感じ、今年から、ネット通販と店舗を一体化する「クリック&モルタル(※2)で日本一」を方針に掲げました。
 ネット通販の勉強を始めて、通販には、通販に向いた商品があると知り、通販用の新商品開発に着手しました。秋田らしさを全国・世界に発信できる商品はないかと会議を重ねる中で、ある女性スタッフが、「どんぶぐ」を発案。商品部の女性も、「どんぶぐこそ日本最強のルームウェアだわ」と続き、「私たちの感性を集結させれば、新しいどんぶぐが作れるはずだわ」…と膨らみ始めました。
 「子供の頃、好意を寄せていた女の子が風邪をひいて休みました。志願してパンと宿題を彼女の家に持って行きました。自宅の二階から降りてきた彼女の姿は…母親手作りのどんぶぐ」。そのとき感じたときめきは、今も忘れません。
 昔のどんぶぐは手作り故、それはそれは、キュートなものがたくさんありました。しかしながら、現代のルームウェアは、大量生産に適したジャージやフリースが中心となり、心ときめくものが見当たりません。
 日本人のDNAに根ざした古典衣装を、ファッション屋の感性で現代風に蘇らせ、表舞台に再登場させる…そんな大それた志を加えて、新しい事業計画がスタートしました。思いに共感してくれるアートクリエイターやデザイナー(なぜか40代以上ばかりだけど)が少しづつ集まってくれています。
 折りしも時代は温暖化対策。同時にパリ、ニューヨーク、ミラノでは年々ジャパンブームが広がっています。ミラノでは、布団で寝るのが流行っているほどです。
 私たちは、日本文化が詰まったエコウェア(どんぶぐ)の開発を急ぎ、世界進出を本気で目指しています。

※1 他社に真似できない核となる能力、競争の優位性
※2 インターネット店舗と実店舗を効果的に統合・組合わせるビジネス手法

 CORPORATION DATA

株式会社 タカハシ
湯沢市愛宕町4-5-56 TEL.0183-73-8150
代表取締役/高橋 秀夫
専務取締役/高橋 文柄
創業開始/昭和元年(1926年)
URL http://www.rakuten.co.jp/womanremix/


(2008年8月 vol.325)
 
TOPに戻る
 
財団法人秋田企業活性化センター