特集1

下請取引の適正化

 「下請代金支払遅延等防止法」(以下「下請法」)は、親事業者による下請事業者に対する優越的地位の濫用行為を取り締まるために昭和31年に独占禁止法の特別法として制定され、経済のサービス化・ソフト化の流れを受けて平成16年に改正されています。改正以降、ソフトウェアやテレビ番組等の情報成果物作成委託及び運送やビルメンテナンス等の役務提供委託に係る下請取引が対象として追加されています。
 親事業者が下請法に違反した場合には、公正取引委員会から、違反行為を取りやめるよう勧告されます。勧告される内容は、違反行為の取りやめのほか、下請事業者の被った不利益を原状回復させること、再発防止措置を採ることなどです。勧告された場合は、企業名・違反事実の概要などが公表されます。
 企業の法令遵守が強く叫ばれる中、下請法違反は企業価値を大きく損なう行為です。

 事業者間の取引のうち、下請法の適用を受けるのはどのような取引でしょうか。
 下請法では、その範囲を、事業者の“資本金規模”と、“取引の内容”によって定めています。

(1)資本金規模

 親事業者の立場から、次のチェックポイントに回答すると、下請法で定義される「親事業者」に当てはまるかどうか、取引相手が「下請事業者」に当てはまるかどうかが分かります。

(2)取引の内容

 事業者の資本金規模による区分に該当する場合、その事業者間の取引は下請取引となります。その下請取引は、内容によっても条件が定められていて、「製造委託」「修理委託」「情報成果物作成委託」「役務提供委託」と四つに大別されています。

★トンネル会社規制
 事業者(直接、下請事業者に委託をすれば下請法の対象となる場合)が、資本金3億円以下(プログラムを除く情報成果物の作成委託、役務(運送・物品の倉庫保管・情報処理は除く)提供の委託の場合は5千万円以下)の子会社を設立し、その子会社を通じて委託取引を行っている場合に、@親会社−子会社の支配関係、A関係事業者間の取引実態が一定の要件を共に満たせば、その子会社は、親事業者とみなされて下請法の適用を受けます。

 下請法は、下請取引の公正化と下請事業者の利益保護のため、親事業者に次の4つの義務を課しています。

(1)書面の交付義務

 親事業者は、事業者名、委託内容、納期、納入場所、代金額(算定方法の記載も可)、代金支払期日などの必要事項を記載した発注書を書面で交付する義務があります。

(2)書類等の作成及び保存義務

 親事業者は、下請事業者の給付、給付の受領、下請代金の支払いなど、取引に関する書類を作成し、2年間保存する義務があります。

(3)下請代金の支払期日を定める義務

 親事業者は、下請事業者との合意の下に下請代金の支払期日を、物品等を受領した日から起算して60日以内のできる限り短い期間内で定める義務があります。

(4)遅延利息の支払義務

 親事業者は、下請代金を支払期日までに支払わなかったとき、下請事業者に対し、物品等を受領した日から起算して60日を超えた日から実際に支払するまでの期間について、その日数に応じ当該未払金額に年率14.6%を乗じた額の遅延利息を支払う義務があります。

下請法は親事業者に対し、次の遵守事項を設け、不正な取引を禁止しています。

(1)買いたたきの禁止

 親事業者が、通常支払われる対価に比べて著しく低い額を不当に定めることは「買いたたき」として、下請法違反になります。

(2)受領拒否の禁止

 親事業者は、下請事業者に責任がないのに、委託した給付の目的物の受領を拒否すると、下請法違反になります。

(3)返品の禁止

 親事業者は、納入された物品の受領後に、下請事業者に責任がないのに、返品すると下請法違反となります。

(4)不当な給付内容の変更及びやり直しの禁止

 親事業者が、下請事業者に責任がないのに、発注の取消や変更を行い、又は受領後にやり直しをさせることにより、下請事業者の利益を不当に害すると下請法違反となります。

(5)下請代金の減額の禁止

 親事業者は、下請事業者の責任がないのに、発注時に決定した下請代金を発注後に減額すると下請法違反となります。

(6)下請代金の支払遅延の禁止

 親事業者は、物品等を受領した日から起算して60日以内に定めた支払期日までに下請代金を支払わないと下請法違反となります。

(7)割引困難な手形の交付の禁止

 親事業者は、下請代金を支払う場合、一般の金融機関で割り引くことが困難な手形を交付すると下請法違反となります。

(8)有償支給原材料等の対価の早期決済の禁止

 親事業者が下請事業者の給付に必要な半製品、部品、付属品又は原材料を有償で支給している場合に、下請事業者の責任がないのに、この有償支給原材料等を用いて物品の製造、修理又は情報成果物の作成をした目的物の下請代金の支払期日より早い時期に当該原材料等の対価を下請代金から控除(相殺)したり、下請事業者に支払わせたりすると下請法違反となります。

(9)購入・利用強制の禁止

 親事業者が、下請事業者が注文した給付の内容を維持するためなどの正当な理由がないのに、親事業者の指定する製品(半製品含む)・原材料等を強制的に下請事業者に購入させたり、サービス等を強制的に利用させて対価を支払わせたりすると購入・利用強制となり、下請法違反となります。

(10)不当な経済上の利益の提供要請の禁止

 親事業者が、下請事業者に対して、自己のための金銭、役務その他の経済上の利益を提供させることにより、下請事業者の利益を不当に害すると下請法違反となります。

(11)報復措置の禁止

 下請事業者が親事業者の下請法違反を公正取引委員会又は中小企業庁に知らせたことを理由として、親事業者が、その下請事業者に対して、取引数量を減じたり、取引を停止したり、その他の不利益な取扱いをしたりすると、下請法違反となります。

 取引の適正化のガイドラインとして、ベストプラクティス(望ましい取引事例)をいくつか紹介します。ベストプラクティスとは、下請事業者と親事業者を対立するものと捉えない、苦しいときこそそれを共に乗り切る共存共栄のための運命共同体との認識を持つ、といった考えを実践する取引例です。

 取引に関する相談窓口として、平成20年4月より、全国47都道府県に「下請かけこみ寺」が開設されました。

■各種相談
  取引問題に知見を有する相談員が親身になって相談に応じます。商工会議所、商工会、中小企業団体中央会、中小 機構等に寄せられた相談も取り次がれます。
■裁判外紛争解決手続(ADR)
  裁判外紛争解決手続(ADR)により、取引に係る紛争を迅速かつ簡便に解決がされるよう調停を行います。全国に 約180名の弁護士が登録されており、「下請かけこみ寺本部」が主導して全国各地でADRを実施します。
■ガイドライン普及啓発
  「下請適正取引等ガイドライン」の説明会を全国で開催し、普及啓発を図ります。

〈参考〉
公正取引委員会・中小企業庁「ポイント解説下請法」
公正取引委員会「知って得する下請法」
中小企業庁「下請適正取引等の推進のためのガイドライン ベストプラクティス集(改訂版)」
公正取引委員会HP http://www.jftc.go.jp/
(財)全国中小企業取引振興協会HP http://www.zenkyo.or.jp/index.htm

 下請に関する相談・お問い合わせ先

(財)あきた企業活性化センター 
経営支援グループ 販路拡大担当
〒010-8572 秋田市山王3-1-1 秋田県庁第二庁舎2階 
TEL.018-860-5623 FAX.018-860-5612

 

(2008年10月 vol.327)

 
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