信頼に応える重厚な仕事
株式会社大栄木工は、昭和22年の創業以来、秋田の豊かな木材資源を活かし、木製ドア・障子・襖などの木製建具に専門特化して技術を磨いてきた。職人の技術が自信だと能登社長が言うように、一級建具技能士(大臣認定)17名、二級建具技能士(知事認定)6名を擁し、オーダーメイドの要求に応え続けている。
主な納品先は、ホテル・旅館等の宿泊施設、寺社、一般住宅で、建具の設計から制作、取り付けまでを一貫して行うことができる。
「当社は、規格品ではなくオーダーを受けての製造ですから、求められる技術・品質も非常に高いものです。ご要望に応えるために、従業員は日々研鑽に努めています。逆に言うと、毎回違う発注が従業員の最高の教材になってくれていると感じますね。これまで、設計事務所を中心に地道な営業活動を続け、小さな仕事も積極的に、納期厳守でやったことが、現在の取引につながっていると思います」。
同社では、現在、皇居の門の修復を請け負っているのだという。「大変嬉しく、これまでの仕事が認めてもらえたのかなと感慨深かった」と、能登社長は嬉しそうに話す。
安心・安全な木製ドア
同社は、時代の要求に応え、洋間のドアも数多く手がけ、帝国ホテルやリッツカールトン東京を始めとする一流ホテルの客室や宴会場にもドアを納めてきた。ホテルの客室は、お客様に快適さとともに安全を保証しなければならない。防火性を保つため鉄製ドアが主流であったところ、昭和50年以降、デザイン性を備えたドイツ製の木製ドアが入ってきた。これを見た能登社長は、需要を感じた上で、「木製建具のプロである当社なら作れるに違いない!」と、オリジナルの防火木製ドアの開発を始めたそうだ。
試作を繰り返し、平成9年に、国内の20分、60分防火の認定(国と交通大臣認定)を取得する製品を完成させ、「ベルドールシリーズ」として販売を開始した。このドアの内部には、特殊な膨張剤の層があり、高熱が加わることで膨張し、ドアとドア枠の隙間を塞ぐ高断熱層を形成する仕組みになっている。現在は、この商品の販路を海外にも広げるため、今年8月に、イギリスの防火認定試験(BS)を受け合格したところだという。
さらに、一般住宅をターゲットに、地震などの災害時の脱出を助ける「木製セーフティードア」の開発・商品化に取り組んでいる最中だ。デザインを利用し、ドアの一部が取り外せるようになっているというもので、安全・安心を求める消費者に対して訴求できると考えられる。
事業の今後、地域とともに
最後に、今号の特集でもある“事業承継”について聞くと、「父親が始めた事業を受け継ぐことは自然なことだった」、と話す能登社長。
さらに現在、能登社長の息子さんが同社の営業で奮闘しているところ。ホームページを活用した顧客獲得など、新しい世代ならではの取組を進めているのだという。
「雇用を守ること、地域に貢献できる事業を継続すること、これまで手がけた実績が、責任感を感じさせてくれます」という社長の言葉がとても頼もしかった。
「服飾品や家具の世界的なブランドのような、木製建具のブランドを育てたいですね」。秋田で作られたドアが、世界で開かれる日を期待したい。

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