ビジネスレーダー

有限会社 成田食品

 “ゆり納豆”の銘柄で幅広く固定客を掴んでいる由利本荘市の有限会社成田食品は、宅配・訪問販売を基軸にした営業展開をしているが、お客様との会話を契機に「GABA納豆」を開発し、販売している。同社の取組を、代表の成田元務氏に伺った。
 私が納豆づくりを始めてから20年余りになりますが、家業だったわけではありませんでした。サラリーマンと兼業の農家でしたが、地域農家が転作で大豆生産の団地化に取り組んだ際に、肝心の大豆がなかなか売れない現実に遭遇しまして、それならば自分が納豆にして売ろうと決意したことによります。したがいまして、今でも全て県産大豆を使用しています。
 創業当初、生産量はわずかで、しかも、宅配という対面販売でのスタートでしたので、新参の私どもはお客様から大変厳しい評価をいただくこともありました。しかし、その後徐々に信頼を得ることができ、口コミもあって販路が広がり現在に至っています。
 創業時から、宅配・訪問販売を基軸にしてきて、現在は、今では珍しいこの販売方法にこだわるようにしています。販売エリアは、由利本荘地域に限らず、秋田市北部から仙北・平鹿地域までと幅広く、多くの固定客がついていてくれています。販売量全体からすれば限られていますが、由利本荘市や秋田市のスーパーにも卸しています。
 「GABA納豆」は、2008年2月から販売を始めているのですが、現在は全体生産量の2割程度になっています。小売価格は、定番商品の“ゆり納豆”に比べて2割高になっていますが、販売量が増えれば、もう一段価格を低くすることも出来るかと思っています。
 「GABA納豆」の開発を思い立った契機についてお話ししますと、訪問販売の際に、健康食品や機能性食品のことがお客様との話題に昇りまして、「もともと健康食品である納豆にGABAが入っていたらよいのでは?」との声を聞いたことによります。お客様が喜ぶ商品を提供できることが私の喜びでもありますし、大手が開発を諦めたという話を聞いていたので、かえって挑戦してみようかという気になりました。
 この商品は、“爛漫”の秋田銘醸(株)さんが米糠から作ったGABA液を使っているのですが、単に納豆にGABA液を混入したものではありません。発酵段階から、納豆菌と一緒に大豆に混入しているのです。簡単なようで、この「納豆菌と一緒に」ということが極めて難しいのです。なぜなら、納豆菌がGABAを食べてしまうからです。ここのところが苦心の為所でしたが、当社はGABAの特長を最大限に生かした納豆の製品化に成功し、お陰様でお客様が喜ぶ新たな商品として発売することができました。今後、この「GABA納豆」を、大きく育てていきたいと思っていますので応援してください。

GABA:ガンマアミノ酪酸。アミノ酸の一種で、抑制性神経伝達物質として機能しており、ストレス軽減等に効果があるといわれる物質。

 CORPORATION DATA

有限会社 成田食品
〒018-0711
由利本荘市岩谷町字十二柳124
TEL・FAX.0184-65-2348


(2008年12月 vol.329)


諸井醸造所

 海を望む男鹿市船川に、味噌・醤油・漬物などの製造を営む諸井醸造所がある。醤油の醸造から事業を始め、昭和5年の創業以来、秋田の味を演出してきた。
 諸井秀樹代表は、大学で醸造学を修め家業を継いだ三代目。諸井さんが開発し、現在まで販路開拓に注力しているのが秋田の伝統調味料“しょっつる”だ。しょっつるは、魚を塩漬けし発酵させて作る調味料、魚醤の一つで、秋田の魚、ハタハタを使用したものを指す。しょっつる鍋などに用いられ、秋田を代表する味の一つだが、全国的な知名度も低く消費規模も小さい。「商品として製造するところが減少していき、このままでは“しょっつる”が無くなってしまうと思いました。どうにか全国に“しょっつる”を売れないだろうかというのが始まりでした」。
 「まったくの我流で開発し、平成12年に臭みが少なくあっさりした「魚ミー」、その後秋田産ハタハタのみを使った風味豊かな「秋田しょっつる」を商品化しました」。商品開発と同時に、平成13年には、フードコーディネーター、デザイン専門家、料理人、県、当センター(当時あきた産業振興機構)等とプロジェクトチームを作り、“しょっつる”に関する市場調査等を実施。「食べやすい“しょっつる”を作り、効果的にPRし知名度とブランド力を高めることで、全国に売れる調味料になる」という結果に至り、積極的にメディアに露出しPRしてきた。そして、平成19年度、当センター専門家派遣事業を利用し、ホームページのリニューアルを実施、ネット通販を始めたところ、全国の消費者や業者から注文や問い合わせが来ているという。
 諸井さんが“しょっつる”に専心するのは、単にその味を全国に売りたいだけでなく、原料であるハタハタとともに生きる地元の振興を目指してのことだ。その考えは、スローフード協会の“味の箱船”認定という評価を受けたことと一致する。「説明するのは難しいんだよ」と諸井さんが笑うように、1986年にイタリアで始まった「スローフード」の考えと活動は世界中に様々な形で広がっている。「地域の貴重な食品を大切にし、時間を惜しまず安全な食を愉しむ」というのがスローフード運動の考えの一端だ。この考えに基づき、「各地方の伝統的かつ固有な在来品種や加工食品、伝統漁法による魚介類などのなかの、このままでは消えてしまうかもしれない、小さなつくり手による希少な食材」を保護するために、「味の箱船」として認定する制度がある。“しょっつる”も諸井さんを始めとする男鹿地域の取組が評価されて、平成18年に認定を受けた。「単に美味しいからじゃなく、3年の禁漁を経てハタハタ資源復活を果たした取組自体が評価されたんですよ。食の世界遺産とも言われる認定です」。スローフード秋田の理事も務める諸井さんは、イタリアで行われる、世界からスローフード運動の主旨に賛同して活動する生産者の集会「テッラ・マードレ」に参加するなど、伝統調味料“しょっつる”の復活を通して、食の本当の豊かさを広めている。最近は醸造所の見学やしょっつる鍋を組み入れた観光メニュー作りも仕掛けているという。
 「“しょっつる”を当たり前の調味料にしたい。新しい食べ方を提案し、“しょっつる”本来の美味しさを多くの方に知っていただきたいです」。
 秋田の方は、いま一度、それ以外の方は新しい食材として、諸井醸造所の“しょっつる”を味わってみてはいかがだろう。

 

 CORPORATION DATA

諸井醸造所
〒010-0511 男鹿市船川港船川字化世沢176
TEL.0185-24-3597 FAX.0185-23-3161
ホームページ http://www.shottsuru.jp/


(2008年12月 vol.329)

 
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