特集2

  本誌11月号でご紹介した「秋田県内中小企業の事業承継に関する実態調査」で、県内中小企業の約85%が「事業を承継したい」と考えている一方、業績不振、後継者がいない等の障害により事業承継を進めることができない実態が明らかになりました。(回答企業数:1,082社)
  当センターは、企業経営者、後継者により良い事業承継のための対策方法などを紹介するため、11月6日から県内4カ所で「中小企業経営者のための事業承継セミナー」を開催しました。11月7日に秋田市で開催したセミナーの内容を基に、事業承継の進め方を紹介します。(11月7日セミナー講師:長谷部光哉税理士事務所代表/長谷部 光哉)

 

 

 

  「中小企業における経営の承継の円滑化に関する法律」が今年5月に成立し(平成20年10月1日施行)、相続税、民法、金融の面で事業承継円滑化へ向けた措置がとられています。この法律は税制、法制、金融の3つの柱を設けています。(図1参照)
  税制については、平成21年3月に国会で審議される予定の相続税の納税猶予制度。
  法制については、(1)生前贈与株式を遺留分の対象から除外、(2)生前贈与株式の評価額を予め固定、の民法の特例。
  金融支援については、後継者への株式集中に係る資金ニーズに対応する(1)中小企業信用保険法の特例、(2)(株)日本政策金融公庫法及び沖縄振興開発金融公庫法の特例が設けられました。
  中小企業経営者の高齢化が進行し、あらゆる調査結果からも後継者の確保が困難になっている実態が分かっています。かつて、事業承継は税金の問題でしたが、現在は後継者不足を含めた経営自体の問題が大きな障害となっています。国内企業数の99%、労働者の約7割を占める中小企業の活性化のため、事業の承継、存続は、当事者も支援側も是非取り組まなければならない課題です。

 

図1

  事業の承継を進める際には、企業の戦略としての事業承継計画書を作成します。まずは、次の現状把握を行います。
(1)会社の現状把握>>>経営環境を見直し、“強み”を見つけ、市場の光を当てる戦略を立てる
(2)経営者自身の資産等の現状を洗い出す>>>株式の保有状況、借入などの現状を把握し、整理の計画を立てる
(3)後継者候補のリストアップ
 事業承継の手法、後継者を決め、具体の事業承継計画を立てましょう。経営の見直しは、BSC(バランススコアカード)を作成すると効率的に行うことができます。また、借入や返済の資金計画を含めて計画を作成することが重要です。決定した後継者と計画を共有し、後継者の不安を取り除くことが、スムーズな承継につながります。後継者のリストアップ〜決定段階では、現経営者から見ると後継者は非常に未熟に見えるものですが、“ポストが人を育てる”と言いますから、積極的に社外・社内で研修を行い、責任を持たせることも必要ではないでしょうか。

1.政府の取組
  先に触れた、「中小企業における経営の承継の円滑化に関する法律」の中で規定された相続税の納税猶予制度ですが、非上場企業等に係る相続税の軽減措置が現行の10%から80%納税猶予に大幅に拡充されるとともに、対象も中小企業全般に拡大されます。この制度は、平成21年3月の国会で審議される予定で、平成20年10月1日以降の相続に遡って適用されます。(図2参照)

図2

2.相談窓口・各種支援施
(1)全国の事業承継支援センター、中小企業基盤整備機構の相談窓口で、事業承継のご相談を承っています。また、事業承継について、シンポジウムやセミナー等を開催し、情報提供を行っていますので有効に活用し、計画づくりの参考にしてください。

(2)ファンドの活用も選択肢の一つです。優れた技術やノウハウを持っているが、後継者の不在などにより、新商品の開発、新事業の開拓等、新たな事業展開が困難となっている中小企業または当該事業を承継するために設立される会社に対し、事業資金を提供しています。

(3)制度融資もあります。法人・個人事業主、親族内・親族外承継を問わず、事業承継に際してあらゆる資金ニーズに応えるための制度融資が実施されています。

  法整備も進み、事業承継を取り巻く環境は改善されてきています。何より経営がしっかりしていないと承継も難しくなりますので、支援機関の様々な支援メニューを活用するなどし、経営改善に取り組むことも重要です。
  事業承継の計画づくりは、支援機関等の相談窓口やメインバンクに相談し最善の手法を検討してください。承継の実行段階では、税理士等の専門家を利用して、円滑な承継を目指しましょう。

出典:図1、図2/(独)中小企業基盤整備機構「中小企業経営者のための事業承継セミナー」

 

(2008年12月 vol.329)

 
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財団法人秋田企業活性化センター