経営さぷりメント
2008年度上期企業倒産状況と今後の見通し

全国の概要・目立つ大型化

 2008年度上半期(4月〜9月)の全国企業倒産は件数で前年同期比11.04%、負債では190.37%の増加となった。件数では上期としては3年連続で同期比増、負債ではリーマン・ブラザーズ証券(東京)と関連3社の負債合計が4兆6957億円に達したことなどもあり、2000年の11兆357億円に次ぐ戦後2番目を記録した。
 この期間は長引く原油などの資源高と、消費の不振が背景にあり、地域の金融機関も貸出姿勢の厳格化を余儀なくされてきたが、特徴として資本金1億円以上の企業が6年ぶりに200件を上回り、負債額でも100億円以上の企業が前年同期比で106%も増加、上場企業も過去最多の17件が倒産するなど、企業規模が中小零細から中堅以上へと広がった。産業別では不動産(35.6%増)、運輸(30.1%増)、情報通信(24.8%増)、金融保険(23.6%増)、建設(15.6%増)などの増加が目立つ。地区別では9地区全てで前年同期を上回ったが、特に中国(34.7%増)、東北(24.3%増)、北海道(21.6%増)の増加が目立ち、まだ自動車産業の好調が続いていた中部は0.1%の微増に止まった。

東北地区の状況・内需型産業の不振続く


 上半期の東北地区の状況は件数で前年同期比24.3%増、3期ぶりに増加、負債では20.5%の増加となった。件数では全国平均の2倍以上の増加率であり、地域別では各県とも増加したが、特に青森49.0%、福島35.2%、岩手26.5%の増加が著しい。資本金1億円以上の倒産が300%増(5件→15件)、負債額10億円以上が50%増と、全国の動向と同様、中堅規模以上の増加が目立つ。産業別では建設業の構成比が37.1%(全国は29.9%)とトップを占め、続く小売業の17.7%も全国の11.3%を大きく上回り、東北地区は内需型産業の不振が色濃く出ている。

秋田県の状況・大手、中堅と小売業が増加

 当県の上半期の倒産は件数で前年同期比16.9%増となり、東北地区の平均増加率を下回ったが、上期としては5年ぶりに2期連続の増加となった。負債額では前年同期に0件であった資本金5000万円以上の大手中堅の倒産が12件発生、負債10億円以上が8件となり、実に235.6%の増加、これは2002年を上回り史上最大の負債額である。産業別では建設業が33.3%と東北の平均37.1%よりは少ない。これは前期、前々期とも建設業の比率が50%を超えるという、異常な状況にあったことの反動と見られるがそれでも全国平均の29.9%を上回り、依然倒産業種のトップにある。注目すべきは小売業の比率が前年同期比倍増の20.2%を占めたことで、全国平均の11.3%、東北平均の17.7%を大きく上回っている。
 また、製造業の比率20.2%も全国の14.4%、東北の11.6%に比べかなり高い。地域別では秋田市の比率が低下したのに比べ、大館市、男鹿市の増加が目立った。

今後の見通しと秋田県の課題

 下期に入り、経済情勢は激変した。サブプライムローンの破綻から始まった米国発の金融危機は全世界に波及、500兆円とも600兆円とも言われる世界の金融資産の損失は、米国経済の象徴であるビッグ・スリーを破綻の危機に追い込み、ドルの暴落と相俟ってトヨタをはじめとする日本経済を牽引してきた輸出産業に大打撃を与えている。非正規従業員の大量解雇のみならず、正社員のリストラも始まっており、大手製造業は相次いで新規投資の凍結に踏み切っている。こうした状況を背景に、日銀が12月15日に発表した企業短期経済観測調査(日銀短観)では大企業製造業の業況判断指数(DI)がマイナス24となり、前回(9月)調査より21ポイントも低下、この低下幅は1975年2月以来、34年ぶり、1974年8月の24ポイントマイナスに次ぐ史上2番目の数字である。日銀東北支店による東北6県の短観でもDIはマイナス34(製造業はマイナス30)で、特に自動車関連がマイナス50、電気機械がマイナス38と深刻な状況にある。このような経済状況の中で、10月の全国倒産企業は今年最多の1429件発生、上場企業が月間最多の8社倒産した。10月に成立した補正予算で実現した6兆円の緊急保証制度は、10月末からほぼ一ヶ月間で1兆円が利用され、カンフル効果で倒産件数は1277件に止まったが、それでも11月としては最近6年間で最も多く、1〜11月の累計件数は昨年の年間件数を上回った。経済の実態は金融ビッグ・バンによる金融機関大混乱の1998年当時より深刻で、98年と99年に実施された特別保証30兆円を上回る対策が必要と見られるが、世界経済が立ち直るまで持ちこたえられるのか不安が募る。2009年の倒産件数は史上最多の1984年(20841件)を上回る恐れがある。
 秋田県の場合は、愛知や三重、宮城や岩手など、自動車や電気機械産業の集積が進んでいる地域に比べ、直下のダメージは少ないとはいえ、既に各地でリストラの動きが出始め、更に固有の問題として人口の急減があり、小売業の不振はもとより、自治体財政の悪化は公共投資の更なる減少をもたらし、建設業をはじめ官公需に頼る企業の衰退を招く。緊急保証制度の利用も、秋田県は東北6県の中で最も利用が多く、12月8日までで517件に達し、体力の乏しさが浮き彫りとなっている。倒産やリストラに対する当面の雇用・金融対策とともに、息の長い人口減少対策が求められる。

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(2009年1月 vol.330)

 
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財団法人秋田企業活性化センター