特集1

《成功事例発表要旨》

1.ITを活用した新たな販売促進と新規販路開拓

秋田成幸産業株式会社 代表取締役/利部 浩 氏
〒010-0002秋田市東通仲町14-3 TEL. 018-836-1551 FAX. 018-836-1666 http://www.konpouya.com/


 ダンボール、テープなどの梱包用資材の法人向け卸売業です。
 限られたパイを奪い合うより、新たな販路を開拓しようと、秋田の価格競争力のある梱包用資材をインターネット上で全国に販売することを発想し、「梱包屋ドットコム」を開設しました。このWEBサイトを制作するにあたり、(財)あきた企業活性化センター(以降、センター)の「フェニックスプラン21」の補助金を獲得し、専門人材を雇用しました。法人向けでは珍しく価格を明記したWEBショッピングサイトとし、明朗販売を実践しています。
 また、価格だけでは数ある梱包用資材販売店の中から選んでもらうことは難しいと、より顧客の心を掴む販売促進に取り組み、自ら主演して自社制作したネットCMをショッピングサイトに公開するほか、自身のブログも公開し、日々更新に励んでいます。自分が顔を出して、人となりを見てもらうことで、身近で信頼してもらえる販売店になることを目指しています。
 「梱包屋ドットコム」は、開設1年目の月商40〜50万円から、3年目の現在は月商300万円まで成長し、北海道から沖縄まで、さらに台湾までも取引を広げることができました。
 当社は、今後、WEB販売を中核に世界から注文をいただける梱包用資材屋を目指していきます。

2.無線式骨伝導補聴器の開発

株式会社WECOM研究所 代表取締役社長/加藤 透 氏
〒010-1623 秋田市新屋町字砂奴寄4-11


 平成18年創業の研究開発系ベンチャー企業です。
 現在は、高齢者向け「無線式骨伝導補聴器」の開発に取り組んでいるところです。当社の集音器は、耳の軟骨に音を伝導させる非常に新しい技術であるため、まずは市場で実績を積んでから、と考え、薬事法における「補聴器」の認証はまだ得ていません。
 当社集音器の開発活動は、多くの関係企業・関係団体との連携・共同のもと行っています。もともと軍事用に開発された骨伝導について研究していた山形大学工学部機械システム学科のほか、(株)アキタ電子システムズ、(独)産業技術総合研究センター、真崎医院(秋田市の耳鼻咽喉科)と共同研究を始め、山形の新世梶A慶応大学医学部、樺央科学、オンキヨー梶A(株)ミキモト装身具、秋田市、中小企業基盤整備機構、鞄立ハイテクノロジーズ、などと幅広く連携しています。センターは、「産学官技術実用化・製品化促進事業」の補助金ほか、経済産業省の新連携事業の資金支援への橋渡しなどでサポートしてくれました。
 開発の途中で、未だ成功とは言えない段階ですが、今後、携帯電話と連動する機能を持つ集音器や、PCインターフェースなど、高齢化の進む秋田県でこそ、高齢者のコミュニケーションに役立つ商品の開発に取り組んでいきます。

3.理想の介護を求めて

有限会社tobe 取締役/花澤 富見子 氏
〒010-1637秋田市新屋扇町7-34 TEL.018-828-8170 http://www.to-be8.com/


 平成16年創業の介護サービス業です。通所者が来所できない日や、帰宅してからの食事を提供するため仕出し事業もやっています。
 大規模介護施設では難しい、一人一人の「その人らしさ」を大切にするトータルサービスを提供したいと、指定通所介護施設「ア・ラ・ヤでデイ!」を秋田市新屋に開所しました。同年、構造改革特区の認定を受け、高齢者に加え、知的障害者、障害児の受入を可能にしました。
 二棟目の「まめでらハウス」は小規模多機能型居宅介護施設で、宿泊、通所、訪問のサービスを地域に密着して提供し、利用者の生活をトータルケアしています。
 ケアマネージャーの資格を取得し、仲間に誘われるように会社を起こすことになり、「介護に対する熱い思いしかないけれど、無いお金は借りればいい、無い知恵も借りればいい」、とセンターに相談してきました。「創業支援補助金」、「経営革新計画認定」に申請し、プレゼンテーションは、熱い思いと、出たとこ勝負の迫力、皆様のアドバイスで乗り切ることができました。設備は、借り物でも初めから最良のものを揃えたいと、低床ベッド、空調設備、調理設備まで「設備貸与制度」を利用して導入しました。
 介護サービスも選ばれる時代。常に、大切なお客様にもっと良い介護がしたい、という気持ちで経営に当たってきました。年商約1億のうち、ほとんどが経費になってしまいますが、これまで5年間、事業を維持できて良かったと思っています。現在は定員いっぱいになりましたので、秋田の高齢者が笑って暮らすための次の何か、また新しい介護サービスがしたくなってきたところです。

4.プラスチックリサイクル事業への転換

株式会社湯沢クリーンセンター 経理部長/木村 隆 氏
〒019-0205秋田県湯沢市小野字西十日町83 TEL.0183-52-5300 FAX.0183-52-5222 http://www.yclean.net/


 平成8年に創業し、産業廃棄物処理とリサイクル事業を行っています。
 当アンドーグループは、(株)アンドー、当社、(株)横堀温泉紫雲閣、(株)アキタニット、有限会社ふくろう、から構成されていますが、「地域になくてはならない企業」「中央に発信し続ける企業」「社員一人一人が成長し続ける企業」という経営理念のもと砂利屋から事業転換を図り、リサイクル事業、介護事業へと経営を進めています。創業時から、環境の変化に対応することを重視し、環境の変化自体が新しいビジネスチャンスだと捉えてきました。自己資本比率が40%を超える企業は倒産しないそうで、当社もそれを目指しています。
 (株)アンドーは、グループ統括、プラスチックを固形燃料に再加工するRPF製造業、コンパウンド加工業、自動車貨物運送業を行っています。また、事業展開の一つとして、(株)湯沢クリーンセンターの事業を開始しました。ペットボトルの再生処理、産業廃棄物処理、中間処理を行い、平成18年度に二回目の「経営革新計画」の認定を得て、プラスチック処理・再生処理施設を建設しています。
 平成13年に国の「地域活性化創造技術研究開発費」を獲得し、「大型成形品までを含めた再生PET樹脂による射出成形品の試作及び実用化」を研究したほか、秋田県産業技術総合研究センター、山形大学工学部などと連携し様々な研究活動もしています。
 砂利事業は引退し、ペットボトル、プラスチック、介護の事業を成長させていきたいです。特に、再生固形燃料生産は稼ぎ頭で、当社の中核事業になるのではと考えています。流れの早いリサイクル業界にあって、砂利で築いたプラント製造・運営のノウハウが自社の強みではないかと考えています。今後、新しい展開をセンターに相談に行けるよう頑張りたいです。

《講演要旨》

5.老舗呉服問屋「東京山喜」三代目の経営革新

東京山喜株式会社 代表取締役社長/中村 健一 氏
〒130-0011東京都墨田区石原4丁目37-4 TEL.03-3623-5291 FAX.03-3623-5293 http://www.tansuya.jp/


 東京山喜(株)は、リサイクル着物の小売店「たんす屋」を全国に110店舗展開しています。
 創業は大正13年、京都で呉服問屋をやってきました。戦後昭和36年、二代目が本社を東京に移転しました。私は、バブル崩壊後の平成5年に三代目として社長に就任しました。
 呉服は、昭和50年のピーク時には2兆円の市場規模があったと言われていますが、それ以降右肩下がりが続き、今では4千億円規模まで縮小し、特に問屋は構造不況で、気がついたら「無用」になっていました。京都の室町は、呉服問屋街で車が駐停車して渋滞していたのに、現在は室町バイパスといわれるほど閑静な街に変わっています。それほど街は変わるんです。小売店の販売規模が1/5に縮小するなら、生産側は1/10になります。売れる時はその逆です。市場の影響を大きくうけるのがメーカー、生産側です。
 私は当初、問屋として生き残ろうと考え、生産拠点を中国にも広げて安価な商品を作り、売上を伸ばすことができました。しかし、呉服問屋業界が信用不安に陥り、赤字に転落した平成10年、このままではいかんと思いました。
 私はいつも四つの質問をします。
 (1)着物は好きですか? (2)着物が着たいですか? (3)この一年着物を買いましたか? (4)ここ一年着物を着ましたか?
(1)イエス、(2)イエス、(3)ノー、(4)ノー、これが大多数の女性です。好きで着たいけれど、高そうだし自分だけじゃ着られないんです。
 私は、古本販売のブックオフを見て、こんな明るくて分かり易いリサイクル店を着物でやりたいと思って、「たんす屋」一号店を平成11年に立ち上げました。目標を変えたこの時、向かい風が背中に当たる追い風に変わったのを感じました。小売店にケンカを売るような事業と思われましたが、新しい着物の市場を創造しますという私に共感していただき、着物販売大手、百貨店さんにも御協力いただいて出店しています。
 現在は法人・個人をオーナーに36店のフランチャイジーを抱えるフランチャイズ方式で店舗運営しています。個人オーナーが顧客・商品・スタッフの管理に専念し、本部が経営全体をサポートすることで、最大の生産性を生むことができると考えています。
 さらに、単なる物販ではなく、きものライフソリューションカンパニーとして、着付け、着付け講座、着用の簡単な着物などを提供しています。きものの最適な環境での保管と、着用希望時の配送、着用後のクリーニングなどのサービスを低価格で提供することも考えています。1着100円なら預けたい、と言ってくれる女性が沢山います。「持つ」苦痛からお客様を解放して、喜んでもらう。喜んでくれる方が沢山いるなら、たぶん採算合うようにできると思うんです。
 着物の文化は、物を大切にする日本文化が凝縮した本物の価値ある文化だと思います。国際化が進む現代だからこそ、この本当の日本文化が日本の固有の価値観として求められています。物を大切にする文化は、人の心を大切にする文化だと思います。
 ユニクロの柳井社長が「世界一の洋品店になるぞ」と宇部から出発された。国際化のエネルギーを上手に利用して、私も世界一の着物屋になりたいと思います。今の日本が元気になるために、着物ができることがまだまだいっぱいあると思います。

 

(2009年1月 vol.330)

 
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