特集1

●鈴木さなえ
1967年生まれ。能代市出身。高校卒業後、東京で中国語を学んだ後、中国へ留学し中国語と中国民謡を修める2008年6月に中国で北京中秋共創商貿有限公司を設立。秋田の物産を、北京市内の飲食店向けに販売しようと営業展開中。物産卸売のほか、中国進出したい企業へのコンサルタント業、中国〜秋田間の観光業へも取組を始めている。自称、在中国ふるさと秋田PRおばこ。

北京中秋共創商貿有限公司
住所:〒100025 中国北京市朝陽区東四環中路41号嘉泰国際大厦830号
電子メール:zirans@hotmail.com

昨年6月に中国で
北京中秋共創商貿有限公司を
設立するに至る経緯をお聞かせください。

 県職員として農業振興に携わっていた父が旧県立営農大学校の副校長を務めていた際に、自宅に連れてくる中国からの農業研修生の話す中国語に惹かれました。高校卒業後、東京で中国語を学んだ後、上海、ハルピン、北京の学校で訛りのない中国語をマスターしました。語学だけでなく、中国音楽学院などで中国民謡を本格的に勉強して、向こうでコンサートも開いたんです。
 その後、フリーの通訳として北京の日中友好環境保全センターや日本の地方自治体の環境関連交流事業を数年間お手伝いしました。秋田の仕事を手伝うようになったのは、2002年、県農林水産部が秋田杉の加工品や住宅部材を中国に売り込む事業を北京市で行った際、通訳としてお手伝いしたことに始まります。このとき、秋田の企業も中国に魅力を感じていることを知り、その後、秋田の多くの良質な物産を見る機会も得て、北京にいる秋田県人として、私なりにもっとうまくマッチングしてビジネスとして動かすために何かできないかと思ったのです。そこで、ついに北京での起業を決意し、昨年4月に中国に営業の許可申請をして、6月に許可を受け、北京中秋創共商貿有限公司を起ち上げることができました。

中国で会社を設立することに
難しさはありませんでしたか。

 申請から許可まで2ヶ月もかかりましたが、基本的な事務手続きの流れは、日本での設立と同じようです。中国でも起業数を増やすために新法が施行され、現在は、1名でも会社を興せますし、海外資本でも同様に奨励してくれています。ただ、会社の設置場所は確かな所に置かないといけませんので、場所探しに苦労しました。当初、集客を見込める立地の小売店舗を北京市内で探したところ、1月当たりの家賃が最低1万元(約13万円)と非常に高かったため、販売店舗の必要ない卸売業の許可を得ました。卸売業の許可を得れば小売業もできるのが実際です。

会社の事業内容を詳しく教えてください。

 私の理想は、北京市に秋田ビジネスのネットワーク、「チーム秋田」を作ることです。秋田−釜山−天津のコンテナ海路を活用して、優れた食品や工芸品を中国に持って行き、秋田の人間である私がPRして、中国に「秋田ブランド」を確立しようと考えています。
 現在は、日本酒を販売しようと、秋田の5つの酒蔵と北京での販売事業についてお話を進めています。北京で試飲会を実施したところ、関心も高く評価を得られると分かりました。
 中国政府は、第11次5カ年計画(2006〜2010年)で、環境にやさしい社会、調和の取れた社会づくりを掲げていて、市民の間でもエコやロハス、スローライフといったライフスタイルへの関心が高まっています。こういった雰囲気に対して、秋田の食品や工芸品なら訴えることができると思っています。

日本酒の販売市場としての可能性は
どのように感じていますか。

 都市部では、富裕層が増え高額な外食に対する需要はますます大きくなっていますし、ほかの先進国と同様に健康的な日本食に対する関心も高まっています。北京市内には、グルメ検索サイトに登録されているだけで約450軒の日本料理店があり、そのうち日本人が経営していたり、料理長を務める本格的な日本料理店は40軒弱あります。日本酒は、関税、付加価値税など約85%の税率がかけられ、飲食店では日本の3〜4倍の価格になっています。すでに、日本の大手商社や清酒会社が中国での卸販売を始めていて、秋田のお酒も入ってきていますが、管理が徹底されていないのか味が落ちているのを感じます。
 私は、売れればいい、飲まれればいいというのではなく、一つ一つの商品に愛着を持って、銘柄の特性に合わせたきめ細かい管理と、より美味しい飲み方や、秋田の工芸品を器として使用するといった県産品のトータルコーディネートによる販促活動を行っていきたいと考えています。こうした取組が、秋田県人が経営する小さな会社の強みだと思っています。

中国の経済状況と雇用労働に対する
所感を教えてください。

 農村部では出稼ぎ労働者2千万人が失業状態で、政府が生活費補助や技術研修の実施などの施策により、雇用と生活の確保を図っているそうです。しかし、北京市にいる限り、世界的不況の影響はまったく感じません。購買力はますます高まっていて、市民の消費活動は本当に活発です。慶事や外食への支出は驚くほどです。
 北京では、最低賃金は1月当たり約800元(約1万円)、大卒の初任給は約3000元(約4万円)です。私も中国人を1名雇用することにしたのですが、労働面で強く感じたのは、労働者の帰属意識が薄いことと、会社の経営状況よりも個人の成果に応じて報酬をもらいたいという賃金感覚ですね。

今後は、どういった事業展開を
予定していますか。

 相互的な観光事業です。秋田観光のメニューを中国側に提案し販売できます。中国人向けに、少人数グループで秋田の自然や食を体験してもらうツアーを企画し、秋田ファンを増やしていきたいです。日本の方が中国に旅行する場合には、観光プランの立案から宿泊・交通のチケット手配、現地でのフォローまで可能です。
 また、起業の経験から、中国への新規進出の際のコンサルタント業でもお手伝いできるのではないかと思いますし、なにか少しでも秋田の企業のお役に立てればと思います。目標は「秋田ブランド」を中国に確立すること。地域のブランディングには、「ばか者、よそ者、変わり者」が必要と聞いたことがあって、とても感銘を受けました。もちろん秋田には優秀な方が大勢いらっしゃいますし、親身になってアドバイスしてくれる秋田ファンの「よそ者」もいらっしゃいます。「ばか者、変わり者」はあまりいないようですので、私は、情熱で突進する秋田のばか者か、斬新奇抜なアイデアで新しいことに挑戦する秋田の変わり者の、どちらかにはなれればと思っています。

   ※1元=13.48円 100円=7.41元(2009年2月17日現在)


 BRICs(ブラジル、ロシア、インド、中国)の次の経済新興国として注目されるVISTA(ベトナム、インドネシア、南アフリカ、トルコ、アルゼンチン)の中でも日本にとって生産、市場として魅力が大きいといわれる国がベトナムです。秋田県表面処理技術研究会が行ったベトナム企業視察から、日本企業のベトナム進出の現状などを紹介します。



期 日/平成20年11月24日(月)〜11月29日(土) 
参加者/参加者名簿のとおり 秋田県表面処理技術研究会 7企業、1機関、11名
内 容/
 11月24日、予定通り秋田空港を13時に出発し、仁川国際空港経由で当日の22時25分にハノイのノイバイ国際空港に到着した。ホテルまでの道すがら、専用バスの中から覗った街は、街灯やネオンが少なく、暗いという印象であった。
 2日目の25日は、早速企業視察で、8時にホテルを出発し、市民の足として有名なバイクの集団の洗礼を受けながら一路タンロン工業団地(Tang Long Industrial Park:住友商事が58%出資)を目指した。タンロン工業団地では、住友商事(株)から出向の大西伸治さんからベトナムやタンロン工業団地の概要を説明して頂いた。インフラの整備された広大な工業団地に日本企業等が83社進出しているとのことであった。

1. Tang Long Industrial Park  
 当工業団地は、住友商事グループが58%出資し、2007年9月に完成。総開発面積274haで、入居企業数は83社、従業員数は44,000人(2008年8月現在)である。
総投資額は13.1億米ドル、2007年輸出額は15.8億米ドルである。

 団地内では、最初にTAKARA Tool & Die Hanoi Co.,Ltd(金属プレス成形加工、樹脂成形加工等)を訪問した。現在レンタル工場で手狭になっており新しい工業団地に移る予定とのことであった。

2. TAKARA Tool & Die Hanoi Co.,Ltd
 (株)多加良製作所のハノイ工場で2005年に設立。工場はレンタルである。従業員数は約170名でSUS材どのプレス成形、プラスチックの射出成形、金型のメンテナンス等を行っている。6社と取引しているが、主要取引先はキャノンで、プリンター部品を納入している。

 次にSumitomo Bakelite Vietnam Co., Ltd(フレキシブルプリント基板の製造、携帯電話の組立等)を訪問した。めっき工程の説明は秋田工場におられた石橋さんが担当され、懐かしい再会となった。

3. Sumitomo Bakelite Vietnam Co., Ltd
住友ベークライト(株)100%出資の会社で、主要製品はDVDや液晶製品のフレキシブルプリント基板である。敷地は65,000m2、工場の面積は20,000m2で、2002年4月から操業し、2007年9月から実装生産を行っている。現在、3,177名で94%が女性で、平均年齢22才、日本人の出向者は35名である。

 次の視察先は、Goshi-Thanglong Auto-Parts Co.,Ltdであったが、案内役のガイドさんが間違って団地内にあるGoshu Kohsan Vietnam Co., Ltd(. 排水処理のエンジニアリング会社:社名が似ている)に案内するというハプニングがあり、約30分程遅れてGoshi-Thanglong Auto-Parts Co.,Ltd(ホイール、マフラー、ハンドルなどのホンダのバイク部品や自動車部品製造等)を訪問した。好調の企業でこれからもバイクは伸びると説明があった。

4. Goshi-Thanglong Auto-Parts Co.,Ltd
熊本県合志市にある合志技研工業(株)が55%出資の企業で、ホンダのバイク部品(マフラー、ホイルリム等)を専門に製造している。1997年1月に設立、11月に創業。1998年は1,517億ドン、177名が2008年は15,843億ドンで1,312名になっている。5Sに力を入れている。

 3日目の26日は、ホーチミン市へ移動する日であったため、企業視察は無しで、午前中にハノイ市内の視察(ホーチミン廟など)を行った。ホーチミン市へは空路で移動し17時に到着したが、ちょうど雨が上がった後で、夏の夕立後の湿気の多いムッとした雰囲気に、いかにも南国という感じを持った。街の様子もハノイ市に比較し垢抜けており、エネルギッシュな商業都市のイメージであった。
 4日目の27日は、午前中にホーチミン市から約45mの距離にあるビンズオン省のミーフック(三福)工業団地にあるKDK ELECTRIC WIRECO.,LTD(伸銅線、錫めっき銅線の製造等)を訪問した。2008年6月操業で、未だフル操業でないため工場内は空きスペースが目立った。

5. KDK ELECTRIC WIRE(Vietnam)CO.,LTD
 川崎電線(株)100%のベトナム工場である。ホーチミン市から45km。製品は伸銅線、溶融錫めっき銅線で、敷地面積50,000m2、建物面積は9,000m2 である。2007年12月起工式で、2008年6月から操業を開始したばかり。

 午後は、Kyoshin Vietnam Co., Ltd(金属プレス部品、射出成形部品、巻線コイル部品などの製造等)を訪問し、錫、ニッケルめっき工程を視察した。めっきは外注できないため止むを得ず行っているとのことであった。

6. Kyoshin Vietnam Co., Ltd
 協伸工業(株)の海外生産拠点として1995年に設立。製品は金属精密プレスによるタブ端子、ヒューズクリップ、テーピング端子、組み立て部品としてマグネットコイルなどがある。従業員数は259人(内日本人2名、事務系27人、技術系20人、一般作業者212人)である。また、第二工場では、2004年からSn、Ni、Cuのバレルめっきを行っている。

 続いて、M.K Science Vietnam Co., Ltd(電着塗装、無電解ニッケルめっき、ニッケル−クロムめっき等)を訪問した。ちょうど交替の休憩時間であったため、めっき作業を見学できなかったのが残念であった。

7. M.K Science Vietnam Co., Ltd
長野県にある(株)エム・ケーサイエンス100%出資の金属表面処理加工の子会社で、2004年9月創立、2005年1月操業である。従業員数は約380名、内日本人4名(1名はベトナム人だが日本に帰化)で、敷地面積は2,100m2である。主な処理は、無電解Niめっき、Niめっき、Znめっき、Ni−Crめっき、バレル研磨、電着塗装、さらに電子部品の組み立てを行っている。

 ベトナム最終日の28日は、ホーチミン市の視察(統一会堂、サイゴン大教会など)を行い、23時50分にタンソンニャット国際空港から帰国の途についた。
 最後に、ベトナムの印象について、まだまだ貧しい国であるが、若い人が多くて活気があり、経済はこれからも伸びると感じた。今度は観光を主体にし、屋台で食べた強烈な臭いのあるドリアンをもう一度食べたいと思っている。


◆社団法人秋田県貿易促進協会

 県内企業の貿易ビジネスを支援するため、港湾・空港などの基盤強化、貿易相談、海外販路拡大に向けた商談会開催などの支援を行っています。

1.海外商談会
 平成20年度は、ロシアのウラジオストクで建材・食料品に重点を置いた現地商談会、中国の大連で全業種参加の現地商談会を実施。平成21年もロシア等での実施を予定しています。

2.県内商談会
 平成20年度は、ロシア中古車バイヤー、食品関係バイヤー等との商談会を実施。

3.県産農産物・食品輸出促進対策

4.ロシア語講座
 日常会話、ビジネス会話の講座を実施。

5.貿易相談
 中国、ロシア、アメリカ、東南アジアなどに駐在経験のある専門アドバイザーが貿易に関する相談に対応するほか、通関士が貿易書類の作成方法や輸送コストなど通関関連の相談に対応しています。
 海外コーディネーターが現地での情報収集、マッチング、軽易な翻訳サービスを行います。
 中国・長春市 ロシア・ウラジオストク市 台湾・台北市

6.情報発信
 会報、メールマガジン、各種セミナー、会員専用ホームページ、情報交換会等で貿易に関する情報を会員向けに発信しています。

7.会員制度
 正会員年会費 1口/25,000円
 会員相互の幅広い交流を通じて、様々な情報を入手できます。
 メール、ファックス、ホームページ等による各種情報を入手できます。
 海外ミッション、商談会等に優先的に参加できます。
 海外ミッション、商談会等での通訳、交通費等共通経費の各種便宜を享受できます。
 英語、ロシア語、中国語など外国語の翻訳サービスを利用できます。
 船社代理店・通関業者等の情報が入手できます。

お問い合わせ先
住所:秋田市旭北錦町1-47 秋田県商工会館5階
TEL:018-896-7366 FAX:018-896-7367
URL:http://www.a-trade.or.jp 電子メール:info@a-trade.or.jp
【中国・大連事務所】 住所:中国遼寧省大連市中山区七一街銀洲国際大厦1002 号室

◆ジェトロ秋田貿易情報センター

 ジェトロ(日本貿易振興機構)秋田貿易情報センターは、世界の経済主要国・地域の経済・貿易に関する情報収集能力を持ち、情報提供や実務相談、海外販路開拓や海外進出のサポートなどの支援を行うジェトロの秋田事務所として、県内企業の海外展開を情報と実務の両面から支援しています。

1.海外経済・貿易の情報収集をサポート
国・地域別情報:世界59カ国・地域の経済情報がジェトロホームページから得られます。
海外ブリーフィングサービス:約70のジェトロ海外事務所で、駐在員・アドバイザーのブリーフィングを受けられます。
海外ミニ調査サービス:ジェトロ海外事務所が、制度・統計・小売価格・個別企業情報などをお調べします。
ビジネスライブラリー:東京(赤坂)、大阪(中之島)のビジネスライブラリーで、統計・企業情報・制度情報など各種資料やデータ ベースをご覧いただけます。
世界のビジネスニュース:日刊通商弘報等を通じて、他メディアでは得にくい世界のビジネス情報をお届けします。
知的財産保護関連サービス:海外での知的財産侵害リスクの回避方法や、模倣品・海賊版問題の解決のための情報を提供します。

2.実務相談・人材育成サポート
貿易投資相談:実務経験豊富なアドバイザーが、貿易や投資に関する相談に応じます。
貿易実務オンライン講座:輸出入に必要な知識などの貿易実務の基礎・応用を、オンラインで学べます。

3.海外販路開拓サポート
引き合い案件データベース(TTPP):国内外のビジネス案件の情報がジェトロホームページから得られます。自社の案件紹介も可能です。
海外ミニ調査サービス(企業照会):ジェトロ海外事務所が、制度・統計・小売価格・個別企業情報などをお調べします。
見本市・展示会データベース(J-messe):業種・開催地・会期等で見本市の検索ができるほか、展示会場のデータや見本市動 向も閲覧できます。
ビジネスアポイントメント取得サービス:海外の指定企業とのアポイントをお取りします。指定がない場合、ジェトロが候補先を探 しアポイントをお取りします。
輸出有望案件支援サービス:各専門家が、製品や会社状況に合わせて戦略を策定し、情報収集や現地での商談立ち会い、契約 締結までお手伝いします。 ※右下図参照

4.海外進出サポート
海外ビジネス・サポートセンター(BSC):タイ、シンガポール、フィリピ  ン、インドのオフィスを、海外進出準備用に短期貸出します。アドバイ  ザーによるコンサルティングが常時受けられます。
海外進出企業の支援サービス:海外事務所で、現地情報を提供しま  す。個別相談により問題解決を支援します。
ジェトロメンバーズサービス:各種サービスの会員特典・料金割引、  「ジェトロセンサー」等資料送付、講演会などのサービスをご利用いた だけます。年会費:73,500円

5.秋田貿易情報センターならではの支援
 秋田貿易情報センターでは、県産業技術総合研究センターと連携し、ASCA(Aerospace Consortium of AKITA)を組織し、イギリスのエアバス社の航空機生産関連集積地に県内企業の製品や技術を売り込む支援を実施しています。

お問い合わせ先
住所:秋田市山王2丁目1-40 田口ビル1階
TEL:018-865-8062 FAX:018-888-1771
電子メール:aki@jetro.go.jp
URL:http://www.jetro.go.jp/indexj.html

◆秋田県産業経済労働部流通貿易課
 財団法人秋田県貿易促進協会、ジェトロ秋田貿易情報センターと連携しながら、海外展開へ向けた各種支援事業を実施しています。
お問い合わせ先
住所:秋田市山王3丁目1-1 秋田県庁第二庁舎3階
TEL:018-860-2219

 

(2009年3月 vol.332)

 
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財団法人秋田企業活性化センター