高いハードルを越え
新規事業法の認定を受ける

株式会社太洋製作所(角館町)

 
●北海道・東北で2社目の認定●

 省力化機器や自動検査装置の開発・製造を手がける(株)太洋製作所(代表取締役:菅原 雅史氏)は、去る3月末に通商産業省から「新規事業法」の認定を受けた。平成8年度に同法の認定を受けた企業は、約700社の応募があった中から僅か40社、という狭き門であった。ちなみに、平成8年度に東北・北海道で認定されたのは大洋製作所ただ1社で、同地区では2社目の認定である。
 新規事業法とは、画期的な技術やノウハウを持つベンチャー企業等が、商業ベースでの商品の生産・販売やサービスの提供を開始するスタートアップ段階で、その事業化資金を円滑に調達することなどを目的に制定された法律である。提供しようとする商品、サービスが確実に商業ベースに乗る、確固たる見通しが無ければ認定されない、という点に同法の厳しさがある。ただし、認定を受けると以下の様々な支援措置の恩恵があり、資金面や人材確保で悩んでいる企業にとっては、メリットが大きい制度である。
【主な支援措置】
◎ 産業基盤整備基金による債務保証
◎ 新規事業投資株式会社による出資
◎ 日本開発銀行等による超低利融資
◎ 欠損金の繰越し期間の延長
◎ ストックオプション制度 etc

●画期的な新製品●

 同社は、「半導体リードフレームの高精度外寸検査装置の製造・販売事業」について認定を受けた。半導体のリードフレームとは、シリコンチップのベースとなるもので、ミクロン(1ミリの1,000分の1)単位の精度が求められる。これだけ高い精度が求められるにもかかわらず、これまでは人間が目視検査をしたり、自動検査装置は既に大手メーカーが製品化していたものの検査精度、検査速度、価格等の面で課題を抱えていた。
 同社はメカトロ技術と超高解像度画像処理技術を駆使し、既存の製品と比較して検査精度は3倍以上、検査速度は2倍以上、価格は半分以下という、画期的な新製品を生み出した。この製品が大手リードフレームメーカー数社に認められ、今回の認定に至ったのである。

●研究開発型企業を目指して●

 今回の認定を見る限りでは、サクセスストーリーを地で行く観のある同社だが、ここに到るまでの道のりは、決して平坦ではなかった。同社は昭和59年1月に角館町で創業。大手メーカーの下請けとして、部品組み立て等の労働集約的な事業を主力とする傍ら、研究開発型の企業を目指して省力化機器、各種検査機器の開発に取り組んできた。しかし、発注企業が折りからの円高で生産拠点を海外へシフトし、受注はゼロまで落ち込み、大幅な人員削減を余儀なくされた。また、市場ニーズの把握が不十分だったため、多額の開発費を投じた省力化機器の売れ行きは芳しくなく、資金面で苦境に立たされた。
 このような企業存亡の危機的状況の中で、菅原社長は、過去の経験を教訓に徹底した市場調査を実施し、ターゲットを半導体の周辺機器に絞った。「半導体市場は『産業の米』として今後も拡大することと、その周辺市場であれば資本力にハンデがある中小企業でも十分参入チャンスはある」(菅原社長)と判断したからだ。そこで顧客のニーズを探るため、リードフレームメーカーへ日参の日々が始まった。最初は門前払いの状況であったが、菅原社長のひたむきな姿勢が相手に通じ、現場の担当者から直接声を聞けるまでになった。この努力が実を結び、起死回生の製品が生み出されたのである。
 菅原社長は、「これまで苦労を掛けた従業員の喜ぶ顔が見たかったから頑張れました。これからもお客様の役に立つ製品を作り、働き甲斐のある会社になるように努めていきます」と語っている。 
     株式会社太洋製作所
資本金:67百万円 従業員:37人
住 所:角館町雲然字荒屋敷79-1
電 話:0187-54-1888
FAX:0187-54-3195
Emailアドレス:taiyouse@bic-akita.or.jp

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