食肉加工業を営む(株)松田畜産(代表取締役:松田 朗氏 河辺郡大張野字道ノ下113-2 Tel:0188-82-2606)は、この度物流の効率化と生産性の向上による企業体質の強化を目的に大規模な設備投資を実施した。
社長の松田朗氏
同社は豚肉の卸売業としてスタートしたが、昭和63年に本社を現在地に移してからは豚肉、内臓物の加工処理を主力としている。初代社長である松田裕氏が(株)肉の若葉の社長も兼務していた関係から秋田県経済連、秋田県食肉流通公社、ハムメーカ各社との結びつきは強い。また、現社長の松田朗氏は豚の一大生産地である青森県の生産者との取り引きを開拓した。この結果、北東北の豚肉(頭、大貫)、内臓物は同社に集中するようになり、加工取扱高は毎年順調に伸びてきた。現在では全国でも業界トップクラスの地位を確保している。
しかしながら企業規模の拡大に伴い様々な経営上の課題も生まれてきた。この中で最も大きな問題が物流コストの増大であった。
同社では取扱量の増大に伴い自社の冷凍庫だけでは賄いきれず、東京と秋田に貸冷凍庫を確保した。賃貸コスト、搬送コスト等の費用負担に加えて、遠隔地にあるため在庫管理が厳密に出来ない、生産ラインの手待ち等の問題が発生した。この他にも既存の急速冷凍設備では処理量に限界があり、せっかくのビジネスチャンスを見送らなければならないような時もあった。
これらの問題を解決するため、平成7年に設備投資の検討を始めた。折りからの景気低迷で建築コストが安定していたことに加えて設備近代化資金等の公的制度資金を利用出来る目処が立った。設備投資の資金負担を企業体力に見合った水準へ抑制出来る見通しがついたものの、これらを検討する中で自社の弱みも見えてきた。それは経理等の内部管理面である。そこで松田社長は敢えて設備投資を1年延期して、緻密な管理体制の構築に取り掛かった。
国内トップレベルの生産性や販売力を目指している松田社長は、内部管理でも高いレベルを達成するために大手の監査法人へコンサルティングを依頼した。「本当に役立つ知識や情報は、タダで得られない。自分の会社や従業員を心から大事に思うなら、高い報酬を払ってもプロから教えを請うべきである」という信念が松田社長を突き動かし、同社は短期間で管理体制を整備した。
そして平成8年6月に満を持して冷凍・冷蔵庫建設に取り掛かり、昨年12月に竣工の運びとなった。新しい急速冷凍設備は、1日20トンの冷凍能力を有しているため、タイムリーな仕入れや加工が可能となった。また、320トンのキャパシティーをほこる電動式冷蔵庫は、各棚に番号が付いており、コンピュータによる厳正な在庫管理がなされている。
電動式移動ラック
これにより同社は業界でも最高水準の設備を持つまでになったが、松田社長は「私はこの設備で単に規模の拡大を図るつもりはありません。当初の目的である足腰の強い企業を目指します。それがお客様に対して安くて良質な食材を安定して提供することにつながるからです」と語る。
設備投資を通じて単に効率化の達成にとどまらず、社内組織のレベルアップも併せて成し遂げた松田畜産。同社の更なる挑戦に注目したい。
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